ブリっ子と兄 2
『妃教育から逃げたい私』コミックス一巻が2020年11月27日発売です!
漫画担当は菅田うり先生!
詳しくは活動報告をご確認ください。
※脇役メインの話ばかりですみません……。ブリっ子好きなんです……。
「兄様ってヘビっぽいの?」
「はあ?」
王城に用があったらしい兄は、たまにこうして私のところにも顔を出す。
わざわざ顔を出したというのに読書に勤しむ兄を見て、この間ブリっ子の言っていたことを思い出して口にすると、兄は怪訝な表情を浮かべた。
「ブリっ子がね、ヘビっぽいって」
「ヘビっぽいだと……? 俺が……?」
心外だと言わんばかりに眉根に皴を寄せる。
「やり返しかたがねちっこいらしいって聞いたんだけど、どんなやり返し方をしてるの?」
「ねちっこくない。しつこいからそれなりに返しただけだ!」
やっぱりやり返してはいるんだなあ……。
でもそれが兄らしいとも思ってしまう。
「くそ、最近何もしてこないと思ったら……」
「ねちねち男はいやだって」
「ねちねちしてない! ちゃんと反撃してるだけだ!」
「そのいちいち反撃するところがねちねち……いやなんでもないです」
ギロリと兄に睨まれ引き下がる。兄とやり合って勝てたことがないのだ。だってねちねちしてる。
「ヤッホーきちゃった――げっ」
ブリっ子が元気よく扉を開けた。ノックをするときもあるし、しない時もあるのだ、ブリっ子は。訪問する時間はあらかじめ知らされているし、礼儀がどうのこうの関係なく接してくれていいと許可したから問題ないのだが、ブリっ子は大きなトランクを抱えている。
商売する気で来たわね、これは。
「あんたいるとやりづらい、帰ってよ!」
「後から来たくせに先客に帰れだと⁉」
「私はきちんとこの時間にアポイント取ってますぅー!」
ベーっと舌を出して兄を挑発するブリっ子に、兄は青筋を立てた。
「俺は仕事で来てる。一緒にされたら困る」
「どうせ仕事のついでに妹とお茶してただけでしょ。つまり仕事終わっているじゃない。私の方が正式な仕事よ。レティシアの話し相手になるよう王太子殿下から頼まれているんだからね!」
ふん! っと胸を張るブリっ子に兄が歯ぎしりした。
おお、すごい! あの兄が押されてる! さすがブリっ子だわ!
「よっ、もう一声!」
「レティシア?」
「しまった声に出た!」
思わずブリっ子を応援してしまい、兄から咎める視線を受ける。
これ、後で長時間説教されるやつ。やだ、逃げよ。
「おほほほほ、あとはお若い二人でどうぞ」
「この中で一番若いのあんたでしょうが!」
「やめろこいつと二人っきりにするな!」
「それはこっちのセリフよ!」
ギャーギャー言い合っている二人を見ながら、後ろに控えていたマリアがにこやかに言った。
「痴話げんかですか?」
「「そんなわけあるか!」」
見事にかぶったセリフに笑いだしそうなこちらをよそに、二人は再び言い争いを始めた。
うん、息ぴったりでお似合いだと思うよ。