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馬車割りは完璧



「ひどい、約束破るなんて……」

「ごめんって……」


 衝撃的すぎる出来事のせいで、ブリっ子と一緒に寝るという約束を忘れた私に対して、恨みつらみを延々とぶつけてくるブリっ子。

 でも忘れても仕方ないと思うの。夫の浮気相手だと思った相手が女装美男子で、男色家でもなく、ただ自分を美しく見せるために女装しているっていう人物だった経験なんてそうそうあるもんじゃない。だからその前にあった約束が頭から抜け落ちることもあると思う。


「私も嬉々として結末を聞きに行って衝撃で忘れてたけど!」

「ブリっ子も忘れてたんじゃない」

「でもひどい!」


 ひどいひどいと言いながらブリっ子はマリアの用意してくれたお菓子を摘まんでいる。ちなみに私からの小さな慰謝料の一つだ。


「で、そっちは結局どうなったの?」


 せっせとお菓子を口に詰め込んでいるブリっ子に訊ねると、ブリっ子は不快そうに眉間に皺を寄せた。


「この通り、無事よ!」


 ふんっ、と鼻を鳴らし、マリアが馬車の中でも飲めるようにと用意してくれた水筒で喉を潤していた。


「リリーさんに助けてもらって、そのまま一緒に寝たわ!」


 えっ……なにそれ……。


「リリー……私とは一緒に寝てくれたことないのに……」

「人と状況によります」


 ひどい。幼い頃から一緒にいる私より、私のお友達を優先するってどういうことなの。

 私だって小さい頃はリリーと一緒にお昼寝したいと思っていたのに!


「無事ならいいじゃない」

「全然よくない。全然よくない」


 二回も繰り返さなくていい。

 ブリっ子はまた一つお菓子を口に含んだ。


「だから、謝罪として、温泉に連れてきてあげたじゃない」

「いや、結局全員連れてきてるから謝罪にならないでしょ」


 ブリっ子の言う通り、悩んだ結果、全員連れてきた。


「あとやっぱり一言言いたい」


 ブリっ子がお菓子から手を離した。


「なんで今回の馬車も、夫婦で乗らないのよ!」


 ブリっ子の叫びに耳を塞ぐ。声が響くので、馬車の中で大きな声を出さないでほしい。


「だって、ブリっ子に昨日の話聞きたかったし。ルイ王子にニール公爵の話聞きたかったし。世話役として侍女は一人いたほうがいいし」

「僕はマリアと一緒がよかった」

「うん、だからリリーにした」

「お前、性格悪いな」

「あんたよりマシよ」


 ルイ王子と睨み合うとブリっ子がため息を吐いた。

 昨日結局ブリっ子がどうしたのか知りたかったし、ニール公爵の話を本人のいる前でするわけにもいかないから、ルイ王子はこちらに乗ってもらった。知り合いがいない馬車に乗せるのは忍びないので、ニール公爵とクラーク様を同じ馬車に。余ったからライルと兄もクラーク様と同じ馬車だ。今回、ルイ王子への嫌がらせで、リリーを同乗させたため、マリアは王宮でお留守番である。

 完璧な馬車割りだ。


「で、ニール公爵の女装は、本当にただの趣味なの?」


 馬車を一緒にした目的通りに、ルイ王子に訊ねる。


「ああ、完全に趣味だ。別に女性になりたいわけでもないと言っていた。ただ、男性服より女性服の方が美しいという、それだけの理由らしい」

 美しさを突き詰めようと性別の違いすら厭わなくなったらしい。

 私はニール公爵にそっくりな少年をじっと見つめた。


「……ねえ女装しない?」

「しない! ふざけるな!」

「いや本気なんだけど。ニール公爵そっくりだし、似合うと思うんだよね」

「だから叔父上を紹介しなかったのに!」


 ルイ王子はこうなることを予想していたらしい。女装、似合うと思うんだけどな。まだ体も育ち切っていないし。


「ニール公爵、男性に好意を持っていないって言っていたけど本当?」

「ああ」


 ルイ王子が苦い顔をした。


「叔父上は自分以外愛せない人間なんだ……」


 すごい突き詰めている。

 ルイ王子は表情を和らげない。自分にそっくりの顔の人物が、自分は美しいと言っているのだ。ほぼ同じ顔をしていると複雑なのだろう。

 でも、ルイ王子も大概自分大好きな自信家だと思うんだけど。

 私はそれを口に出さず、黙々とお菓子を口に頬張るブリっ子を眺めて過ごすことにした。

 でも、一言だけ言いたい。


「リリー、私とも一緒に寝て」

「お断りします」


 振られた……。



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