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ピクニックに行ってくる



 二人きりピクニック。二人きりピクニック。二人きりピクニック。

 頭の中を延々その言葉がぐるぐると回る。考えすぎてもはやわけがわからなくなった。ピクニックってなんだっけ……。

 いやピクニックはピクニックだ。しっかりしろ私!

 気合を入れるために頬っぺたを叩く。隣にいたクラーク様が驚いたように肩を震わせた。


「ど、どうしたレティ?」

「いえ、なんでもないです」


 ちなみにもうすでに二人っきりだったりする。

 そうもうすでに二人っきりなのだ。

 しかも一つの馬に二人で乗りながら、護衛をやや遠くに配置しての遠乗りである。

 二人っきりっていつぶりだろうか。それより体の密着が気になって仕方ない。私汗をかいてないだろうか。汗臭い? もしかして私汗臭かったりする?

 意識しすぎてあれもこれも気になってしまう……ああ、クラーク様男性なのにいい匂い……って違う!

 私はブンブン頭を振り邪な考えを追い出す。


「レティ? もしかしてもう疲れたか?」

「いえ全然! まったく! 疲れてないです!」


 疲れてないからこそ色々考えてしまって大変なのだ。

 私は静まれ静まれと思いながら胸に手を当てる。ああ、それにしてもクラーク様のお腹固いから思ったより鍛えているのかしら……。


「レティ? レティ!」

「は!」


 物思いにふけっている間に、目的地に着いたらしい。クラーク様の手を借りて馬から降り、護衛に持ってもらっていたバスケットを受け取った。


「わー」


 着いた場所は一面の花畑だった。見たことない青い花だ。


「この花は、デルバラン王国の気候でしか育たないんだ。せっかく来たのだから見せてあげたいと思ってね」


 道理で見たことないはずだ。私は希少な花をよく見ようと顔を近づけた。


「うわぁ、すごい甘い匂いがします!」

「そうだろう。香水の原料にもなっているらしい」


 初めて感じる香りに感動していると、新たな情報を与えてくれる。さすが外交も行うだけある。物知りだ。

 ……私ももう少し勉強しよう。


「食事にしようか」


 クラーク様の言葉に頷いて、バスケットを開く。中身はサンドイッチだ。


「ん?」


 隅に紙がある。私はそれを開いた。


『レティシアは押しに弱いのでガンガンいくといいと思います。ブリアナより』


 握りつぶした。

 もう一枚入っていたのでそれも開く。


『子作りは早めのほうがよろしいですよ。ナディルより』


 握りつぶした。


「レティ? それはなんだい?」

「なんでもありません」


 私は握りつぶした手紙をポケットに仕舞った。

 余計なことをするやつらだ。


「さあ食べましょう」


 私はなにか言いたそうなクラーク様を制して、サンドイッチを手渡した。


「こうしてのんびりするのもいいものだな」


 クラーク様は暖かな陽気に誘われたのか、目がウトウトし始めている。


「昼寝でもしますか?」


 私も眠くなってきたのでそう提案するも、クラーク様は拒否した。

 目を擦り、そばに生えている花で、いつかのように、花冠を作ってくれた。


「うん、その花も似合う」


 照れくさくなって俯くと、甘い匂いが鼻孔をくすぐった。

 クラーク様はそんな私をしばらく眺めていたが、名残惜しそうに立ち上がった。


「じゃあ行こうか」

「え? もう?」


 正直もう少しここでゴロゴロしていたい。私のそんな気持ちを見透かしたようにクラーク様は馬の手綱を引いた。


「ここはいいところだけどそう長居できないんだ」

「なぜ?」

「ミルーが出る」


 ミルー、とは?

 さっぱりわからない私を抱き上げてクラーク様は馬に乗った。


「ミルーはこの辺りに生息している大きな肉食獣だよ」


 にくしょくじゅう。

 ……肉食獣⁉


「食べられたくはないだろう?」


 一気に顔を青ざめさせた私は何度も何度も頷いた。





◆     ◆     ◆





「なに? 甘っ! すごい甘い! え? 甘い雰囲気になるとそんな匂いまでするの?」


 ピクニックの雰囲気を盛大に壊していくブリっ子はさすがとしか言えなかった。

 ちなみに花はマリアがドライフラワーにしてくれた。



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アスタール王国に留学に来た、遠国の王女・アビゲイル。

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