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続初デート

ストックが完全になくなってしまったため、一度これで完結とさせていただきます。

今後も不定期に番外編など更新していくので、覗いていただけると幸いです。

子供レティが書きたいなあ。

ご拝読ありがとうございました!



「今日は年に一度の祭りなんだ」


 なるほど。だから屋台があるのか。

 クラーク様の言葉に納得して周りを見回す。次は何を食べよう。


「レティ」


 クラーク様が繋いでいる手に少しだけ力を入れた。


「実は俺は街に出たことがないんだが、何か買うときはどうしたらいいだろうか」


 嘘だろ。

 そう思って顔をまじまじと見るも、とても嘘を言っているようには見受けられない。

 でもそうか。この人は王族だ。お城で蝶よ花よと可愛がられる存在だ。自分で買い物などする必要はない。

 いや私だって本当は自分で買い物なんてしたの今日が初めてだけど。

 クラーク様が少しそわそわしている。視線を追うと絞りたての果物のジュースが飲める店にたどり着いた。


「飲みたいんですか?」

「ああいうのは飲んだ覚えがない」

「でしょうね」


 隣でそわそわされているのも困る。私はクラーク様にお店のシステムを説明した。


「わかりました?」

「わかった」

「じゃ、これで買ってきてください」

「こんな小さなコインで買えるのか……」


 お金を触るのも初めてだと言うクラーク様は、とても感動したように、手渡したコインを眺めている。しばらくそうしていると、コインを握りしめ、意を決したように、歩き始めた。

 クラーク様は店にたどり着くと、店主と話をしている。少しおろおろしている。ジュースの種類が多すぎるらしい。そういうときはおすすめを訊くんですよ、クラーク様!

 私は落ち着かない気持ちでその様子を見守る。子供が初めてのことに挑戦しているときの母親の気分。頑張って、我が子!

 何とか決め、店主から笑顔でジュースを手渡されてこちらに戻ってきた。満面の笑みで。


「買えた!」


 初めてのおつかい成功である。

 誇らしげな顔が少し可愛らしく感じてしまった。まだ我が子フィルターがかかっているのだろうか。今の私母性に溢れている。


「よかったですね」


 私の言葉に満足そうにしながら、ジュースを飲む。


「初めての味だ! なかなか美味しいな」


 お気に召したようである。


「買い方も覚えたから、これで今後は一緒に街に抜け出せるな」

「いやあなたはそんな頻繁に抜け出しちゃだめですよ」

「大丈夫、ばれなければ」

「ばれるでしょう。逆にわからなかったら一大事ですよ」


 もっとも守る存在をひょいひょい抜け出させていたら護衛はとんだ職務怠慢である。


「じゃあ堂々と出て行く」

「もっとやめて大混乱になるから!」

「でも今日も堂々と出てきてるぞ。一応護衛は少し離れたところにいる」

「へえー」


 兵士なんかいただろうか。わからない。


「変装してる。鎧姿がいるとデートが台無しだ」

「はあ」

「だからいつでもデートできるぞ」

「私は別にデートしたくはない」


 正直な気持ちを述べたのににこにこされている。何だ、何が言いたい!


「うん、また来よう」

「したくないって言ったんですけど」

「うん、大丈夫」

「したくないって言ってるんですけど!?」


 にこやかな笑顔で流された。絶対歪曲されている! デートしたくないって言ってるじゃない!

 デートという単語に赤くなった顔を冷まそうと手で仰ぐ。


「レティ、これどうぞ」


 そう言って差し出されたのはさっきのジュースだ。


「あ、どうも」


 ちょうど喉が渇いていたのでありがたく頂く。酸味と甘みがあるさっぱりした味だ。何の果物を使っているんだろう。

 ちゅーちゅー吸っているとクラーク様が顔を赤くしている。なぜ?

 赤みが引かない顔のまま、クラーク様はこちらを凝視している。


「間接キス……」

「ぶっ!」


 思わず吹き出してしまった。

「か、間接……何させるんですか!」

「いや、渡した時には気付かなかったんだ……」

「その顔やめてください!」

「すまない、自然とにやけるんだ」

「やめろ!」


 私が全力で訴えているのに、にやけ顔のままだ。


「このストローは記念に持って帰ろう」

「やめて!」


 大事にストローを抱えているクラーク様から取り返そうとするも、奪い返せない。


「俺だけ記念品があるのは悪いな」

「それを記念品にしないで!」


 抗議するも聞いてくれない。ストローを懐にしまうと、クラーク様は私の手を取って一つの店に入る。

 おおう、庶民の小物屋だ。初めて見る小物に胸がときめく。どれもキラキラしていて綺麗だ。しかも値段はお手頃。すごい。普通の店すごい。

 ブローチの並んでいるところを眺めていると、声をかけられた。


「レティ」


 クラーク様から袋を手渡される。いつの間に買ったの。早業。

 店から出て袋を開ける。


「……オルゴール」


 綺麗な細工がされているオルゴールだった。


「装飾品はここで買っても、身分上付けれないからな。レティシアはこういうのが好きだろう?」


 ええ、好きです。とても。

 何でもかんでも知られているようでむず痒い。


「ありがとうございます」


 微笑んで伝えると、クラーク様は少し顔を赤らめた。

 ちなみにストローはクラーク様の部屋にしっかり飾られていた。捨てて。



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あらすじ

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― 新着の感想 ―
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