第1話、初期設定
「ええっ!?陸上部が活動停止!?」
「そうなの。だからやることがなくなっちゃって……」
「じゃあさ……一緒にゲームしない?」
高校1年生の美歩は夏休みを目前にして所属していた陸上部が活動停止になった。
原因は先輩たちの問題行動らしい。
夏休みにやることがなくなったと同じ中学出身の真希に愚痴ったところ、とあるVRゲームに誘われた。
「なんて言うゲームなの?」
「skill×skill online、略してスキオン。
ジャンルはMMORPGで、明後日発売。
いろんなスキルを組み合わせて自分に合わせた構成を組めるんだよ」
「自分だけの構成か……スポーツ系はやったことあるけどRPGは初めてなんだよね。うまくできるかな」
「大丈夫!新作だからみんな初心者だし、何かあったらサポートするから。
美歩は陸上部でしょ?なら運動神経を活かしてスキルを組めば活躍できるよ!」
「それなら……ちょっと試してみようかな」
ゲーム発売日、美歩は自宅のVRヘッドセットを被り、スキオンの起動準備を進めていた。
真希とは今から3時間後にゲーム内の最初の町で集合することになっている。
初めてのRPGで真希に迷惑をかけないため、集合時間より早めにログインして少しプレイすることにしたのだ。
「MMORPGか……せっかく買ったんだし、楽しんでいこう」
美歩はスキオンを起動した。
スキオンにログインした美歩の前に、初期装備を選ぶパネルとともに様々な設備が現れた。
正面には案山子と陳列された武器防具。
周囲には遊具とよく分からない機械が生成される。
「武器を振って選べるみたい……でも最初は感覚の確認からだね」
美歩は周囲にある遊具へと歩き出した。
「よし、これくらいでいいかな。特に違和感もないし、次行ってみよう」
周囲の遊具を一通り使って動作の感覚を確認したあと、謎の機械を見る。
そこには『実装されているギミックをランダムで体験できます』と表示されていた。
パネルには体験ボタンと停止ボタンだけ。
美歩はなんとなく体験ボタンを押してみる。
その瞬間、体が急に軽くなった。
慣れない感覚に体がこわばり、尻もちをついてしまう。
しかし、地面に着くまでの時間が長い。
落ちるというよりもゆっくりと降ろされたような感覚だった。
「もしかして……重力が弱くなった?」
その場で全力でジャンプしてみる。
急に地面が何メートルも遠ざかった。
一瞬、自分の足で跳んだとは思えないほどの跳躍に美歩は思わず叫ぶ。
「初めての感覚!」
美歩は着地した瞬間、また跳ぶ。
「すごい……」
3回、4回、5回。
美歩は何度も跳びはね続けた。
「ヤッホー!」「イエーイ!」
『スキルを獲得しました』
「えっ?今の何?」
システムボイスと同時に正面に表示されたウィンドウを確認してみる。
アクティブスキル「ムーンジャンプ」
1度だけジャンプ力が大幅に増加する
クールタイム:30秒
取得条件:低重力下で100回以上全力ジャンプする
空きスロットにセットしますか?はい:いいえ
美歩は「はい」を押してスキルをセットする。
「大ジャンプができるようになるのか……
ちょうどいいし、最初はこのスキルをメインにしてみようかな」
文章を読んで冷静になった美歩は重力ギミックを止めて武器を見回す。
「高く飛べるなら、落下のエネルギーを活かせるよね。
じゃあ重い武器のほうが威力も出そうだから……ハンマーを使おう」
美歩は棚から両手持ちハンマーを取り、何度か案山子を叩いて最低限扱えるかを確認。
動作に違和感がなかったので、確定ボタンを押した。
次は名前決めだ。美歩は少し悩んだあと、ミミという名前にした。
由来は単純にみほのみを2回繋げただけ。
確定ボタンを押すと初期設定完了の文字とともに視界が真っ白になる。
そして次の瞬間、目の前には町の景色が広がっていた。




