序章
書かせていただきます。前作は失敗したようですが、渥美 も同じテーマで頑張ってみようと思います。字数的に長編に入る作品を目指しております。宜しくお読みになっていただけましたら幸いです。
一度思い切り目を瞑ってから見開いてみたら、入れ替わっていた。
中島芳郎は、在籍する会社の所有する雑居ビルの七階の窓から今まさに飛び降りようとしていたのだった。
遥か見下ろす下の道路には幸い人影はなかった。
━━それにしても高いなぁ。
芳郎は、遥か眼下に見える道路のアスファルトの素材感を見て、空恐ろしくなった。
中島芳郎は、今年で二十八歳になった。在籍する社員の平均年齢は高めなので、その中では、若い部類といえた。
中島芳郎は社内に居心地の悪さを感じていた。自分はこの会社で求められてないのではないかと 何度も 疑心暗鬼になった。
体重は75kgあり、動きは鈍重だった。何をするのにも他の社員より時間が掛かった。
だから、ウスノロという渾名をつけられた。いつクビになってもおかしくはない、と本人は覚悟を決めてはいた。
女子更衣室の中からはいつでもお喋りの声が聞こえてきた。会話はよく聞こえないのだが、「きもい」とか「でぶ」といった人を誹謗中傷するような言葉が聞こえると、必ず自分のことを罵倒しているのだと思い込んでいた。事実かどうかはわからないのだが。
さらに、彼は中学生来の級友から突然の電話を受けた。何でも企業を設立させるので共同代表取締役になってくれないかと、頼まれた。もともと彼は不穏な空気を感じてはいたのだ。彼は少しは喜んだが不吉な予感が当たってしまった。
実際には取締役などではなく、ただの連帯保証人にさせられただけだったのだ。さらにその本人は設立間もなく会社を潰し、逃亡してしまい、中島は二十五歳にして、1000万の負債を負ってしまったのだ。
精神的に追い詰められていた。もうどうなってもいい。そんな自棄も起こしていた。今朝も出社時に、彼は、それでも挨拶だけはと気合を入れて朝の挨拶をしたのだが、すべての社員からシカトされてしまったのだ。
まあ、それはいつものことだったが、中島芳郎からすれば、唯一好きだった女子の人事部社員、貝塚さゆりからも無視されたのがトドメとなるショックだったのである。
そう、いつもなら彼女だけからは無視されてこなかったのに。彼女まで?
━━きっとそうか。もう思い残すこともないな。
中島はそれで決行に踏み切ろうと決心していったのだ。会社の他のやつらは、中島がいなくなったとて、眉ひとつ動かさないだろうが、さゆりだけは少しは後悔させられるのではなかろうか?そんな、希望的観測もあったのだ。
兎に角、そういった経緯と理由で彼は七階から飛び降りようとしていたのである。
「下はアスファルトだ、この高さなら、ょもや生き残ることもあるまい」
人生最後の独り言を言ったつもりであった。それでも高く思えたので、怖さに目を瞑った。そして覚悟を決めてから再び目を見開いた。すると、なんと入れ替わっていた。なんだか脚にスウスウと生温かい空気が当たる感覚があった。あと、妙に息苦しいのだ。
お読みになっていただきまして誠にありがとうございました。書いてみようと思います よろしくお願い申し上げます。




