9・媒介
「うわぁぁぁぁぁああぁああ!?!」
「苦手だったかい?それは残念。」
こ、コイツ…俺がこういう反応するのわかっててやったな…
イタズラが成功した子供みたいにニコニコして!
ここにまともな大人はいないのかよ!!
(ちょっとじいちゃん!!)
助けを求めるように、じいちゃんへすがるような視線を向ける。じいちゃんはこうなることを分かっていたのか、腕を組んだまま目を閉じて眉を顰めている。
その様子を見て俺は察した。
この男、会う人間全員にやっている。
やばい人だ。変人だ、コイツ。
「いやぁー、悠人くんは面白いねぇ。もっと他の反応も見てみた」
「やめとけ」
「やめてください」
じいちゃんと俺の言葉が、見事なまでに重なった。
「それは残念」とつまらそうに口を尖らせるレイモンドを無視して、じいちゃんは重いため息を吐きだした。カチリ、とライターの音が響き、煙草に火が灯る。
「体内の溜まり続けるクウォンタムを流すために、媒介を用意するとか言っていただろう。」
(媒介…?)
レイモンドは蜘蛛たちをシルクハットの中に戻し、丁寧に被り直すと、俺たちとは向かい側にある椅子へ、音もなくスッと腰掛ける。
「もちろん持って来たさ。哲馬から電話をもらってから僕なりに解決策を考えてね。その結果、どこかに流すことが最善だ、という答えに行き着いただろう?そしたらキミは『用意を頼む』って言うだけ言って電話切っちゃうし。だから僕はーー」
「早くしろ」
「わかったよ」とレイモンドは無言で両手を上げる。
横に置いていた重厚なスーツケースを膝の上に乗せた。中から現れたのは、見覚えのある箱だった。
「俺のタロットデッキ?」
「そう、キミのカードさ。現世から拝借してきてね。これならちょうどいい媒介になるだろう。」
現世のモノってそんな簡単に持ってこれられるのか。
それに、タロットカードを媒介にするってどういうことだ?
当事者であるはずの俺だけが、完全にちんぷんかんぷんだった。
「すみません…俺全然わからなくて。どういうことですか?」
「ん?あぁ!キミは今、何かしらの理由で『真理の扉』から流され続ける膨大なクウォンタムーー分かりやすく『エネルギー』と言おうか。それが魂内に溜まり続けることで器に収まりきらず、破裂しそうになっている。」
レイモンドは、トントンと長い指でテーブルを叩く。
「なら、そのエネルギーをどこかへ流し続ければいいのさ」
「ガス抜きみたいな感じっすか」
レイモンドは指を重ね合わせてパチンと鳴らす。
「正にそうさ!」
なんか、この人掴めないな。
不穏だったり無邪気だったり、その都度違う顔を見せる彼に疲労感を感じたが、レイモンドは気付くわけもなく、そのまま話し続ける。
「媒介はエネルギーを逃すための道具みたいなものだね。媒介はなんでもいいわけじゃない、『相性』があるんだ。だからこそ、キミのタロットカードを持ってきたというわけさ。」
趣味でやっていたタロットカードが、まさかこんなところで命綱になるとは。
小さい頃からカードを教えてくれた、母さんに心の中で感謝した。
「この子達は以前からキミの持ち物で、キミ自身のエネルギーに馴染んでいる。何より『カード』いう点が特に良い。何ヶ所にも分散することができるからね!」
レイモンドは声を少し落とす。
「もっとも、分散させたところで、流れてくるものが止まるわけではない。根本的な原因解決にはならないけど、そのままだと数時間で死ぬし、とりあえずやってみようって感じで。どうする?」
そんな実験みたいなーーなんて文句は、言っていられる状況じゃない。
とにかく、やるしかないんだ。
「分かりました。」
「決めるのが早いね。…哲馬にそっくりだ」
そう呟いた彼の表情は、どこか感慨深いような、あるいは遠い過去を憂いているような、複雑な色を帯びていた。
その顔が、俺の心に少しだけ引っ掛かった。
次回更新予定:7月中旬〜下旬頃を予定しています。
[お詫び]
ソウルアセンション〜死んだはずの祖父とバディを組むことになりました。〜を閲覧いただきありがとうございます。この度、このままの状態で走り続けると全体的にブレが出てきてしまいそうだと感じ、一旦連載をストップさせて頂くこととなりました。
なんとなくで完成させるより、しっかりと考えて仕上げたいという私のわがままです。少しの間、内容整理、続き執筆のためにお休みさせて頂きます。休載は1〜2ヶ月ほどの予定です。
走り始めたばかりなのにストップとなってしまい、申し訳ありません。
休載中は過去に執筆、完結済みの作品を投稿予定です。
よろしくお願いいたします。 有香




