第一話 「役立たずの回復術師」
はじめまして、アユム高尾です。
傷は治せない。
でも寿命は治せる。
そんなちょっとズレた能力を持つ主人公が、
追放されたところから成り上がっていく話です。
「もし寿命を回復できる人間がいたら?」
という妄想から書き始めました。
たぶん偉い人たちが放っておかないです。
感想・評価・ブクマめちゃくちゃ励みになります。
よろしくお願いします。
「——お前、もうパーティ抜けろ」
静まり返った酒場で、リーダーのガルドがそう言い放った。
周囲の冒険者たちが一斉にこちらを見る。
俺――ルークは、ゆっくりと視線を上げた。
「……またか」
「またか、じゃねぇよ」
ガルドは舌打ちしながらテーブルを叩く。
「お前の回復、効いてねぇんだよ」
隣では魔法使いのミリアも露骨にため息をついていた。
「普通の回復術師なら傷を塞げるのに、ルークの魔法って全然治らないじゃない」
「今日だって死にかけたんだぞ!」
盾役のバルクが腕の包帯を見せつける。
確かに、彼の傷は完全には塞がっていない。
だが。
「……でも、疲労は消えてたはずだ」
「だからなんだよ?」
「身体能力も上がってた。お前、最後の一撃かなり動けて——」
「気のせいだろ」
言葉を遮られる。
酒場の空気が冷える。
俺は黙った。
昔からそうだった。
俺の治癒魔法は“普通じゃない”。
傷は塞がらない。
血も止まらない。
だが、対象の生命力そのものを活性化させる。
結果として、
疲労が消える
老化が遅くなる
身体能力が一時的に上がる
だがそんなもの、誰も理解しなかった。
分かりやすく傷を治せなければ、「ハズレ」なのだ。
「荷物置いてけ」
ガルドが吐き捨てる。
「今日からお前はクビだ」
酒場で笑い声が起きた。
「今どき回復できない回復術師とか草」
「Fランクらしい最後だな」
「追放系ってやつ?」
聞こえてくる嘲笑。
慣れている。
……慣れているはずだった。
「……わかった」
俺は静かに立ち上がった。
金もない。
装備もボロ。
残ったのは杖一本だけ。
それでも、もういいと思った。
こんな場所にいる必要はない。
「せいぜい野垂れ死ね」
背後からガルドの声。
振り返ることなく、酒場を出た。
夜風が冷たい。
王都の灯りがやけに遠く見えた。
「……これからどうするかな」
宿代すらない。
依頼を受けようにも、回復術師としての評判は最悪。
完全に詰みだ。
その時だった。
「——おい、そこの兄ちゃん」
低い声。
路地裏の奥。
そこには、黒いローブを羽織った老人が座っていた。
いや。
違う。
近づいた瞬間、分かった。
この老人——死にかけている。
生命の火が、消えかかっている。
「医者か……?」
老人がかすれた声を出す。
「違う。回復術師だ」
「ほう……」
老人は弱々しく笑った。
「なら試してみるか」
どうせ失うものはない。
俺は杖を向け、魔力を流した。
いつものように。
生命へ直接触れる感覚。
すると次の瞬間。
老人の身体から、黒い靄のようなものが吹き出した。
「なっ——!?」
しわだらけだった皮膚が、
みるみる張りを取り戻していく。
白髪に黒が混じる。
曲がっていた背筋が伸びる。
「は……?」
ありえない。
今までこんなことは一度も——
老人はゆっくり立ち上がった。
その目には、先ほどまでなかった力が宿っている。
「ふむ……寿命が十年ほど戻ったか」
「寿命……?」
老人は驚く俺を見て、ニヤリと笑った。
「気づいておらんかったのか?」
そして、こう言った。
「お前の魔法は“傷”を治しているのではない」
「“命そのもの”を回復しておるのだ」
その瞬間。
俺の世界が、変わり始めた。
第一話を読んでいただきありがとうございます。
追放された主人公が、
実は自分でも能力を理解していなかった――という導入でした。
普通の回復魔法ではなく、
「寿命」や「生命力」に干渉する力なので、
今後かなり危険な使い方も出てきます。
次回からは、
謎の老人の正体や、
主人公の能力がどれほど異常なのかが少しずつ明らかになります。
「続き読みたい」
「ここ好き」
などあれば、感想や評価もらえるとかなり励みになります。
では、次話で。




