33羽 「たのしかった!」②
【7:06追記】投稿が2分遅れたことを伏してお詫び申し上げます……
で、夜に。
「いてぇ…………」
「あー。まあ、そうなるよなあ」
警備上、タルクと同室。僕はベッドに突っ伏したまま、ぴくりとも動けなくなっていた。……最悪だ。
この6日間は、どうにかこうにか自分を騙せていたというか。ずっと野営で、夏だから天幕を張ることもなく本当に野ざらしのところにごろ寝の状態。もうそういうのも慣れたから文句はないんだけどさ。やっぱり体は休まってなくて、ずっと緊張している状態。それが、ひさしぶりにひとっ風呂浴びて、部屋に戻ったら。
全 身 筋 肉 痛。
それはそう。慣れないハルシーピ騎乗なんかしたんだから。
お湯をもらったのがかえって悪かったかな。自覚してなかった凝りみたいのも、体が温まったからいっぺんに来た。最悪だ。タルクはちょっと席を外して、警備の人たちとかに「明日の出発は、ムリだ」って伝えて来たみたい。いや、僕がこんなんだからそうなんだけど、でもただでさえ遅れている行程なのに、と申し訳なくなる。
按摩師さんみたいなおじいちゃんが呼ばれて来た。容赦なく揉んでくれて、叫びまくって涙目になった。それでも施術後は多少マシになったから、腕のいい方なんだと思う。たぶん。
「お加減はいかがですか、鑑別師殿」
夕食を摂るにも起き上がってひーこら言いながらテーブルに着く感じ。部屋を尋ねて来たドルテランさんが、丸メガネの向こうから心配そうな視線で僕を見た。本当に申し訳ありません……。
ブロムも来て、4人で食事をしながら今後の日程を話し合う。もう、腕の上げ下げすらしんどい。でもちゃんと食べないと回復も遅くなるだろうから、しっかり食べたよ。肉ライード炒めはおかわりもした。
「まあ、ヨータくんは若いですし、そんなに時間かからずに回復するのでは」
「前から思っていたけどブロムって僕のこといくつだと思っているの」
「27歳だと思いこんでいらっしゃるそうで」
「思い込みじゃねーし」
もう、否定するのもめんどい。ドルテランさんはちょっとびっくりした顔をしていたけれど、慎重な口調で「会話や口調のはしばしから、聡明な方だとは思っておりました」と言った。どうも。見た目年齢と中身が違うねって言葉を上手いことラッピングしてくれた。大人だね。
結局、一泊の予定を二泊した。それでも、オレファルはほとんど素通りのつもりだったのに、時間ができたから交代制で警備の方たちへ観光とかの時間を割けたみたい。そこらへんの采配はタルクと警備のリーダーさんがやってくれているんだけど、東部のカイラントへ行くのは僕の一存で我がままみたいなもんだし、そうやって息抜きの時間を取ってもらえるのはありがたかったな。いくらハルシーピが空を行き交う世の中だったとしても、ここまで他国の遠いところまで来るって、なかなかないみたいだし。
そして、三日目の朝。完全回復した僕は、腿とか腕周りとか、あと腰回りがかなりガッチリした。肩幅もちょっと大きくなったかも。そっかー、やっぱタルクのでっかい体って、ハルシーピを10代のときから乗り回しているからなんだなあ。いまさら僕がガッチリしても、さすがに背は伸びないよな……。
全体の行程からもう4日分くらい遅れている。なので急ぎたいねっていう話はしている。で、テルク=ファルの首都経由だとぜったいいろいろ時間が取られるから(偉い人たちに顔見せとか)、だったら直線距離で一番速い距離を突っ切ろうということで、テルク=ファルの北東部にあるブラズ=グリムという国の国境沿いギリギリをかすめて移動する方向性に舵を切った。それでかなり時間短縮できる見込みみたい。僕がまた倒れなきゃだけど。
「たぶん、もうだいじょうぶだろ」
「そうかなあ。じゃっかん不安だよ……」
「最初、ハルシーピに乗るときはみんなそうだ。それは空でも陸でも変わんねえってことだろう」
はー、やっぱタルクも全身筋肉痛を経て今のムキムキがあるのかー。……背は。やっぱ27では今から望めませんか。
オレファルは本当に休養だけで過ごして、また移動と野営へ。とりあえず気合いを入れて、僕を見て真っ先に走り寄って来てくれたハルシーピに乗り込んだ。
関係ないけど、この子、グラと気が合いそう。それとも、めっちゃ仲悪くなるかな。しらんけど。
で、移動再開して、2日後のことでした。
「ここから先は、通行証を提出してください」
女性の警官みたいな方に、そう言われた。あー、なにこれ。どうしよ。
まあ、僕が悪いんだけどね! すみません!






