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飛ばない僕と、空を行く君と  作者: つこさん。
第三章 ヴェルク=ライナ

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57羽 「がんばってきてね」①

 マレベさんとは密に連絡をとって行くことになりそうだった。彼女は対政治犯の審議官で、おそらくルムスの一件を扱うことになるとのことだから。

 日本で生まれ育った僕には肌なじみのないことで、本当にそれでいいのか不安になってしまうのだけれど、被疑者は審議の場以外で審議官とコンタクトを取っていいらしい。もちろん賂とかはダメだけど、積極的に自分の考えをアピールするのはOKっぽかった。むしろそれって自分の立場や意思をしっかりと持っていることの表れとみなされるようだった。まじかよ。

 ルムスへは、もう一度面会申請をしたけれど、拒否された。手紙すら受け取ってもらえなかった。看守さんによると、言葉を発することもなくなったそうだ。でもそれって、僕がマレベさんへ告げたことを考えたら、心神喪失者に付添人として僕がつく絶好の口実にもなったんだ。僕って小狡いし小賢しいよね。


 ヴェルンシーヴァの家へ、戻ることになった。ルムスが僕に面会の機会をくれることはもうなさそうだし、実際の審議はヴェルンシーヴァで行われるから。

 そして、霜翼卿と話した内容を、形にするため。

 僕は、正式に弟子をとることになった。初生雛鑑別師として。


「よろしくお願いいたします!」


 設けられた面会会場で、ひとりひとり面接をする。ガッチガチに緊張した人もいれば、余裕の表情でやってくる人もいる。

 人選はキャラヤたちに任せた。いちおう、僕が初生雛鑑別師としての技術を磨いた訓練校の指針に従って、こんな人がいいというのは伝えた上で。

 25歳以下。健康。目がいい。手先が器用。そして、命への敬意。

 その中から最初は3人を選んで技術伝授していくことになる。もしそれが上手くいけば、五月雨式に。やってみなければわからないけれど、少しでも状況が良くなるなら、それでいい。


「はい、じゃあ名前と年齢、現住所言ってー」


 面接も、イムロが仕切ってくれるから楽だった。なんか「ヨータさんの弟子なら、俺が見極めなくちゃダメでしょう」って張り切ってた。なんで。

 みんな、若い。10代後半の子が多くて、ちょっと20代って感じ。実家が太そうな背景の子が多かったけれど、身元のしっかりした人を選んだらそうなったんだろう。なんだか塾講のときの生徒たちを思い出して懐かしい。


「はい、じゃあなんか一発芸してー」


 任せきってたらイムロが暴走してきたのでとめた。ちなみにその子がした一発芸はキャラヤが人前に出るときのお手振りのモノマネだった。


 そうやって決めた3名。


「オイ・ラブルです!」

「ティキー・ガルンです!」

「ネクト・パースです。よろしくお願いいたします」


 三人とも若々しくてみなぎるやる気で輝いていた。まぶしい。若さ、まぶしい。最初から鑑別技術を教えるわけではなくて、まずはヴェルミトゥラの各養鶏場へ働きに出てもらうことになった。研修期間みたいな感じだね。全員をハッラさんのお宅へホームステイ、というのは難しいから、ひとりはハッラさん、ふたりはそのご近所へばらばらに。鑑別師見習いだとは告げていないけれど、人手はいくらあってもいいっていうことで、喜んでもらえた。

 ひよこもそうだけど、鶏のこともわかってほしくて。向き合う命の全体像が見えなかったら、敬意を抱くのも難しいからさ。あと、鑑別の仕事って、決してキレイなものではない。ひよこのふんとのおつきあいだよ。だから、そういう環境に慣れてもらわなきゃね。


 面接の時点で「まずは鶏の世話とか、そういう仕事をしばらくしてもらうことになる。いいかな?」っていうことは伝えていた。露骨に嫌な顔をする人はいなかったけれど、鑑別技術をハルシーピに関わるなんかものすごい呪いだって思っていそうな人や、名誉欲で志願している人は、それではぶけたかな。たまたま、この世界では雌雄鑑別が珍しいから僕が持ち上げられちゃっただけで、本来なら泥臭い仕事だからね。働く気持ちのない人に、伝える気はないよ。


「じゃあ、みんなあちらでがんばってきてね」


 みんな声を合わせて「はい!」とお返事。まぶしい……。希望にあふれていて、それは、ヴェルク=シーヴィを、この世界を少し良くするための希望だと思った。


 で、見送った次の日、なんだかもう昔懐かしい、ブロムが来た。


「ヨータくん、おひさしぶりです! 水くさいじゃないですかあ!」

「おひさしぶりですー。相変わらずお元気そうでよかった」


 なんで僕の家知ってるんだろうとか、そういうのはまあ、いいや。めちゃくちゃたくさんテルク=ファルのお土産を持ってきてくれて、なんなら試験的に作ってみたっていう、わかめの商品も何点か。ご意見聞かせてくださいって。ちゃっかりしてるよね。


「弟子を取られるとか? 我が国にもね、若くていい子がたくさんいてですね!」

「そこは、キャラヤを通してもらわなきゃなあ。僕が選んで面接したわけじゃないので」


 ブロムは「もちろん、キャラヤ・ヴェイクにもお話は通します。でもヨータくんの意思がなきゃ」と言う。それはそう。

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