匂わせと感心
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「よお、嬢ちゃ…うわっ!」
サツキの背後に立った人物、それはAランク冒険者にして「竜殺し」の異名を持つバルドルだった。
しかし…
「おい!嬢ちゃん!俺だ!俺だって!」
サツキの背後に立ち声をかけたことによって、暗殺者…はたまた戦闘狂か、とにかくサツキに刷り込まれた習性が反応し抜き放った短剣での後方に向けた刺突をくらっていた。
「え?ああ、おじさんね」
自分を止める声によってやっとバルドルに気づいたサツキは、剣を抜いたわけでもないのに短剣での攻撃で傷の一つもないバルドルを訝しげに眺めていた。
(当たった…よね?)
確かにサツキの感覚には短剣を当てた感覚がありそれが余計に困惑を強めていた。
「ハアハア…2度とお前の後ろには立たない」
一方サツキの心情なんていざ知らず、バルドルはそんな決意を固めていた。
「まあいっか、どうせ本気じゃなかったしね。まあ気づかなかった私も大分気が抜けてるし、ここはどっちも悪いと言うことで」
確かにバルドルもマナーがなっていなかったかもしれないが…それでもサツキよりはマシだろう。
「それで何のよう?」
サツキはめんどくさそうに聞いた。
「何の用というか、ホラ、あれだ。戦う前に言っただろ?」
「ああ〜、あれね」
サツキは今回の件について未だ残っていることを思い出した。
「で、どうするの?実際あの魔力は私だけど」
そしていきなり核心をついた。
しかしそれに驚くことなくバルドル言った。
「ああ。実際もう今回の戦いの最中によくわかった。そして嬢ちゃんだけが悪いわけでないのもあのいけすかない、モリノケンジャとか言う魔獣に聞いたからよく分かってる」
バルドルはそう言うと言葉を一度切り、続けた。
「だけどな、「はいそうですか」とはならないんだ」
「?」
バルドルは何言ってんだ?と言う顔をしたサツキに説明し出した。
……
「つまり簡単に言うと、ギルドマスターとかも多分気付いてて、ギルドは各国と提携してるからそう言う災害の情報は国のトップに伝えなきゃいけなくて、程の良い犯人にされる可能性が高く、反論するための証人?証獣?であるモリノケンジャはどっか行ってるし魔獣だから信用がなくて、領主は知らないけれどここの騎士団の団長とやらは私を捕まえる気満々だと…そういうこと?」
「その内容で間違いはないが…簡単に言ってるか?それ」
どうやらサツキに国語力はあまり無いようである。
「え?つまり敵だらけ?」
バルドルは少し言いづらそうに躊躇ったあと静かに頷いた。
「ていうか何で私を捕まえる必要があるの?」
サツキにとってそこが1番の疑問だった。死の黒波のほとんどは自然発生のもので、滅多に無いものの、特別なものではないのだが…
「まず一つ、竜が今回出てきた事。竜は同族意識が強く竜同士のつながりが濃い。成竜は知らないが子竜や竜の卵を盗んだ国が過去にあったんだがその国は竜の群れによって滅ぼされている。だから成竜だろうが卵だろうが竜には国は手を出さないし手を出したものは国民としてその国にいることはできなくなる。まあ俺やカイナは問題なかったがスカイ殿などはどうするつもりだったのだろうな」
バルドルはそこで切り息を吸うと再び話しだした。
「二つ、死の黒波が例えいずれ起こった事だとしても、それを引き起こすように魔力が感知されてしまった事。……。そんなところだ」
「へー…」
2個目に理由の後の少しの間…それに違和感を覚えたサツキだったがそれを一切顔には出さなかった。
(そっか、きっとまだ理由があるね。それはおそらく私のことに関して。おじさんは使い走りかな?いや依頼を受けただけか…この匂わせも依頼主の指示かな?…まあそれは置いといて、今私が話すべき相手は…ギルマス、領主の2人。その2人ならば…)
考えがまとまったサツキはバルドルに向き合うと言った。
「明日、ギルマスに会いに行く」
バルドルは…サツキに…又は別の何かに…感心した表情を浮かべていた。
さあ世界が広がっていく
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次回も本編です




