カイナ「炎」とデクノボウ
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カイナと殺人兎の殺し合いは、ガイとメリリャの二人が去った瞬間…唐突に、殺人兎が仕掛ける形で始まった。
殺人兎は二本の肉切り包丁を構えると「身体強化」を行いカイナの首めがけて飛びかかった。
(まずは小手調べってとこかな?)
カイナはそれを躱すのではなく、あえて前に飛び出すと左手に装備した籠手でそれを受け止め、右手に魔力を集中させそれをねじ込むように殺人兎の腹に向けて打った。
ガキンッ!!
「うわっと…」
しかしその一撃は殺人兎の装備する二本目の肉切り包丁の腹で受けられ、その勢いを利用し殺人兎は距離を取った。
(うわー熟練って感じだな。受けられた感じ衝撃も逃がせただろうにわざと受けることで距離を取る…本当にコイツCランク下位かな?)
魔物も成長する…それが進化か変化か変異か技術なのかそれは個体や種族によって変わるが、確かに魔物も成長するのだ。
その点でいえば…この殺人兎もまた成長した魔物なのだろう。
そんな事を考えていると殺人兎の纏う魔力に緑色が混ざり始め、殺人兎の「身体強化」が風の属性となった。
魔物の使う魔法はよっぽど高位の魔物でない限り、基本一種類か二種類でそれは、人種の使う神から伝授された又はそう勘違いしている…魔法とは違う形であり、同じものではない。しかし殺人兎が発現したその魔法…種族魔法ともいうものは風魔法level 7「風装」に酷似していた。
「神に授かった魔法じゃなくとも属性の色は変わらない…まあ神様達から授かった私たち人類の力の漏れたものを使ってるっていうんだからそれも当然だね。まあ分かりやすいっていう一点だけが僕にとってのメリットかな…。じゃあ僕もやろうか」
カイナのこの考え方もまた…
カイナは「身体強化」を維持したまま殺人兎を牽制しつつ詠唱を始めた。
「『炎よ我が武装と成りて我を補助し我が前に立つ一切を燃やす力を我に与えん』<炎装>」
この若さで特攻隊長を任せられる実力…それはカイナが下位魔法である「火」の進化属性、中位属性の「炎」の<炎装>を使える点にあった。
生物は皆、火を恐れる。それは野生にあるものなら尚更で、殺人兎は一歩後退りをした。
「君、言葉がわかるか知らないけれど…」
カイナは目を爛々と輝かせながら言った。
「君の風、相性悪いよ?」
もうそれに勝ち目は無かった。
<サツキ>
(サク、サクサク、サクサクサク、サク…)
サツキは隻眼のおじさんと別れてすぐに水溜りとぬかるみを探すと、森の中に入り服を全部脱いだのちに、それを全て泥に浸し、しっかりと絞り体にも泥を塗り…自分の匂いを消した。
(あー本当は、死飼家特製の洗剤が欲しい…あれ最高、マジ有能、作れないかな〜)
そんな事を考えながらサクサク、サクサクと少し群れから離れた魔物を狩って暇を潰していた。
(ん〜?これは大きい魔力だな〜。三か所でぶつかってるなあ…なんか一つは知ってる魔力って感じで残り二つは…誰だ?)
ライバルの魔力を覚えていないため(ライバルと認識しているかも怪しい)、某おじさんの魔力しかわからなかったサツキはその三つの魔力の方に魔物達が釣られていくのを感知していた。
(あともう1匹大きい魔力の個体がいるけれどもコイツがどこかに行ったら面倒臭そうだな。様子だけ見に行こうか)
サツキは今まで感じた個体と負けず劣らず大きな魔力の持ち主の元へ歩き出した。
しばらくすると…
(うおー大きいなー)
そこにいたのは、棍棒を片手に持ち堂々とあぐらを描いたいわゆる単眼ノ人と呼ばれ、成長すると単眼ノ巨人というBランク中位にもなる、Cランク上位の魔物であった。
とてつもない膂力と凄まじい魔力量、そしてそれに物を言わせて単眼から放つビームと上乗せされる「身体強化」…又個体によっては土属性の「身体強化」を行う強靭な魔物であるが…サツキには、
(デクノボウ…大きいだけで弱点だらけじゃんね)
ただの大きな的にしか見えなかった。
伊達じゃないんですよ、特攻隊長ちゅうもんは…
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