89.騎士団長との戦い①
ローディスは、アラーグと対峙していた。
相手は、町の駐在。騎士団長である自分との間には、圧倒的な差がある。心のどこかで、ローディスにはそのような考えがあった。いくら否定しようとも、そう考えていたのは紛れもない事実なのである。
そのように考えていた彼は、自身の認識の甘さを痛感させられることになった。ローディスは未だアラーグに一太刀も浴びせられていない。圧倒的な差があるならば、そうはならないはずなのだ。
「近づけないか……」
そもそも、ローディスはアラーグに近づけていなかった。彼の槍が、近づくことを拒んでくるのだ。
無理やり踏み込むことが、できない訳ではなかった。だが、ローディスはそれを避けていた。そうすれば、自らもただでは済まないかもしれないと思っているからだ。
「一つ聞いてもいいか?」
「なんでしょうか?」
「お前とあの二人は、どういう関係なのだ?」
「妹のように思っています」
「そうか……」
ローディスにはわかっていた。どうして、これ程までに攻めあぐねているのか。その理由は間違いなく覚悟の差なのだと。
アラーグは、不退転の覚悟を決めている。自らの命をかけて、ローディスを倒そうとしているのだ。
一方、ローディスはそんな覚悟を決めていない。この後に竜との戦いが控えていることもあって、彼の中でアラーグは通過点としか思っていなかったのである。
その甘さに、ローディスは思わず笑っていた。戦士として、自分がまだまだ未熟であったと思い知ったからだ。
「……この俺も、覚悟を決めよう。竜との戦いに余力を残すなどという考えは捨てる。ここでお前を倒すことに全力をかけるとしよう」
「あれは……」
ローディスの構えに、アラーグの顔が変わった。恐らく、彼もわかっているのだろう。ローディスの心構えが大きく変わったことが。
そして、もう一つ理解しているはずだ。フェリナから聞いているならば、その構えがローディスの奥義であることも。
「まさか、騎士相手にこの技を使うことになるとは思っていなかった。さて、お前はこの技に耐えきれるか!」
「くっ!」
ローディスは、大きく大地を蹴ってアラーグの元に迫っていく。彼の中に、既に手加減するという考え方はない。全身全霊の一撃で、アラーグを叩き潰すつもりだ。
「はあっ!」
「ぬうっ!」
アラーグの槍を、ローディスはぎりぎりで躱す。その鎧を、槍が掠めていくがそれは気にしない。
ローディスはそのまま一歩踏み込んだ。そして、アラーグの体に十字の斬撃を叩き込む。




