↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。  作者: 木山楽斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
88/100

88.騎士団襲来⑩

「ナルジャー……残念だけど、あなたは私には勝てない」

「……何?」


 鍔迫り合いの最中、私はナルジャーに話しかけていた。これ以上、戦っても無駄。そう思ったからである。

 私は、この戦いをやめたいと思っていた。それは、別に私のためだけという訳ではない。目の前にいる騎士のためにも、この戦いをやめたいと思ったのだ。


「ふん……強がりだな」

「そうじゃない……今のあなたでは、私には勝てないんだ」

「何を根拠に、そんなことが言える?」

「わからないのか? ローディスは……騎士団長は、どうしてあなたを私にぶつけたのか、その意味が、あなたにはわからないのか!」

「何……?」


 私は、とある男のことを思い出していた。騎士団長ローディス、彼は私の敵ではあるが、誇りを持つ騎士だったはずである。

 そんな彼が、部下に毒を使って、私に勝てと指示するだろうか。毒が得意な部下を、私にぶつけるだろうか。

 それを考えた時、私は結論に辿り着いた。ローディスはきっと、ナルジャーの剣の腕を見込んで、私にぶつけたのだと。


「ローディスは、あなたに毒やドーピングを使って欲しかったんじゃない。増してや、人質を取って欲しかった訳もない。彼はきっと、あなたに正々堂々と戦って欲しかったはずだ」

「そ、それは……」

「もしかしたら……あなたは絶対に勝たなければならないと思っていたのかもしれない。だけど、ローディスはこんな勝利は望んでいなかったはずだ」

「あ、うっ……」


 私の言葉に、ナルジャーはゆっくりと後退した。その目は、丸く見開かれている。きっと、自らの間違いを悟ったのだろう。

 彼の腕から、剣がゆっくりと落ちていく。自らが最も信頼していたその剣が、ローディスに認められたその剣が、彼の腕から零れ落ちたのだ。


「そうか……騎士団長は、俺にそれを願って……」


 その直後、ナルジャーは膝をついた。誰がどう見てもわかる。彼は、戦意を喪失したのだ。

 きっと、彼は騎士団長の目的遂行のために、自らが禁じていた薬を使ったのだろう。だが、それをローディスが望んでいなかったと理解して、最早この戦いに意味をもたせられなくなってしまったのだ。


「なんということだ……敵に、そんなことを教えられてしまうなんて……」

「ナルジャー……」

「結局の所、俺は俺自身を信頼できていなかった……ローディス騎士団長は信頼してくれたというのに……何故、俺は何故……」


 ナルジャーは、地面に拳を叩きつけながら、涙を流していた。

 騎士というものは、誇り高きものだと聞いている。その誇りを自ら捨ててしまった彼の苦しみは、どれ程のものなのだろうか。


「完敗だ……俺はもうこれ以上、お前達と戦わない。今の俺には、戦う意味がない………」

「……ああ、私達は行かせてもらうよ」

「精々気を付けるんだな……副団長は、俺よりも遥かに強い。騎士団長は、それ以上だ。簡単に勝てると思うなよ」

「もちろん、わかっているよ」


 私は、リルフとともに頷き合って、その場を後にする。この場に留まっておく意味が、私達にはないからだ。

 結局、副団長は現れなかった。彼は一体、どこにいるのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。