78.狙われる竜⑩
リルフの姿は、変化していた。それは、先程までの姿とも、以前見た姿とも違う。
リルフの体は、以前とは違い青色になっている。これは、いつかお風呂場で見た色と同じだ。
それに、足も少し違う。小さな姿の頃のように、ひれのようになっているのだ。
よく見てみると、翼も生えていない。まるで、海に住む生物のような姿になっているのだ。
「アクア……ドラゴン」
「うん……」
その姿の名前を、私もリルフも自然と理解していた。アクアドラゴン、それがこの姿の名前なのだ。
さらに、その姿の力も理解できた。今のリルフは、水の魔法を操ることができるのだ。
「馬鹿な……なんだ、その姿は! それは、世界を滅ぼす姿ではない!」
「ジャザーン……」
「お前達、すぐに攻撃を開始するのだ。あの娘を苦しめれば、あの竜も変化するだろう!」
ジャザーンは、リルフのこの変化に激怒していた。世界の崩壊を望む彼にとっては、先程の姿の方が好ましかったようだ。
しかし、もうリルフをあんな姿にするつもりはない。今度こそ、私の決意は固まった。私の心に、迷いはない。
「リルフ!」
「うん、お母さん」
「バブルブレス!」
私の指示に、リルフは大きく口を開いた。そして、そこから巨大な泡が吐き出されていく。
「ぬわあっ!」
「こ、これはっ……!」
リルフの吐き出した泡は、ジャザーンとその部下達に当たった。すると、その泡はそのままその者達を包み込んでいく。
ジャザーン達は、泡に閉じ込められた。少し宙に浮かびながら、泡はその場に留まっている。
「馬鹿な! これは一体……」
「や、破れん!」
ジャザーン達がもがくが、泡はまったく破れない。リルフの魔力が込められた強力な泡は、終末を望む会の面々の力では、びくともしないのだ。
これで、あの人達は動くことはできない。抵抗できないし、逃げられないし、これなら色々と丁度いいのではないだろうか。
「……はっ! 忘れたのですか? こちらは宿屋を人質に取っているのですよ? 私の合図で、すぐにでも燃やし尽くせます」
「残念ながら、それはできないな」
「何?」
ジャザーンの言葉に答えたのは、私ではなかった。声の方向を向くと、そこには兄貴と見たことがない人達がいる。
「お前の部下とやらは、全員捕えさせてもらった。俺のいない間に、随分と好き勝手してくれたみたいだな……」
「な、なんだと……」
どうやら、兄貴によって宿屋は解放されたようである。流石は兄貴だ。宿屋に戻っただけで異変に気付くなんて、中々できることではないはずである。
これで、ジャザーンが抵抗できる要素は何もなくなった。本当に、私達の勝利である。
「どうやら、我々が出る幕はなかったようですね」
「え?」
そんな私の耳に、さらなる声が聞こえてきた。その方向を向いてみると、今度は意外な者達の姿が見えてくる。
「王国騎士団……副団長、ウェルデイン」
「お久し振りですね、フェリナさん」
そこには、ウェルデイン率いる王国騎士団がいたのだ。




