47.迷える心③
玄関で皆と別れてから、私は町の中を走り回っていた。リルフがいる場所がわからない以上、町中を探していくしかないのだ。
だが、どこを探してもリルフは見つからない。もしかしたら他の誰かの元で見つかっているのだろうか。そんな期待もあったが、やはり不安が拭えず、私は足を止めることはできなかった。
「……そうだ!」
当てもなく走っていた私だったが、そこで足を止めることになった。そういえば、リルフがこの町でもう一つ知っている場所があったのだ。
それは、リルフが生まれた森である。あの場所は、あの子にとっても印象に残っているはずだ。そこに行く可能性はあるのではないだろうか。
「行ってみる価値はあるか……」
とりあえず、私は森に向かうことにした。確信があった訳ではない。だが、なんとなくそこにリルフがいる気がしたのだ。
という訳で、私は走るのを再開する。一応、周りの様子は窺いながら走るが、目指すのはあの森だ。
「はあ、はあ……」
幸いなことに、私は丁度町の端の方まで来ていた。目的の森は、すぐに見えてくる。
私は、そこで少し深呼吸をした。息を整えるのと、心を落ち着けるためのものである。
「よし……!」
それが終わってから、私はすぐに走るのを再開した。墓地から離れて、木々を避けながら森の中に入っていく。
「……リルフ!」
「お、お母さん……」
私の思っていた通り、リルフは生まれた場所にいた。卵が割れた切り株の上で、三角座りをしていたのだ。
その顔は、とても不安そうである。きっと、心細かったのだろう。
「良かった……ここにいたんだね?」
「う、うん……」
「はあ、急にいなくなるんだから、心配したよ……」
「……ごめんなさい」
私は、とりあえず明るくリルフに話しかけてみた。だが、リルフの方はまったく明るくなってくれない。
それは罪悪感からなのだろうか。それとも、別の理由からなのだろうか。
私には、それがわからなかった。情けない話だ。私はこの子の母親であるはずなのに。
でも、わからないのだから仕方ない。自分の不出来を考えるのは後だ。今は、この子からその答えを教えてもらうための努力をするべきだろう。
「リルフ……どうしたの?」
「……」
私は、リルフの隣に腰掛けて、話を聞いてみることにした。ただ、この子は何も言ってくれない。話しにくいことなのだろうか。
いや、考えるまでもないことだ。黙って出て行ったのだから、話しにくいことに決まっている。それを聞き出すには、どうすればいいのだろうか。




