100.ずっと傍に②
私は、リルフとともに部屋に戻って来ていた。
「リルフ、おいで」
「……うん」
私がベッドに寝転がって腕を広げると、リルフはそこに飛び込んできてくれる。そんなリルフを抱きしめながら、私はその頭をゆっくりと撫でていく。
「やっぱり、お母さんとこうしているのが、一番幸せだな……」
「私もだよ。リルフと一緒に、こうやって平和な日常を送れるのが、嬉しくて仕方ないよ」
私もリルフも、この日常にとても幸せを感じていた。こうやって平和に暮らせることが、こんなにも幸せなことだったなんて、今まではあまり理解していなかったことである。
あの非日常的な戦いを経て、私達はそれを実感できるようになったのだろう。それは、とても尊いことなのではないだろうか。
「お母さん……ボク、思うんだ。お母さんの元にいれば、きっとボクは優しい大人になれるって……」
「優しい大人?」
「繁栄とか、滅亡とか、ボクにはよくわからないけど……転生竜の親が、転生竜に影響を与えるというのなら、ボクは優しい大人になれると思う。だって、お母さんはこんなにも温かくて優しいんだもん。そうならないと、おかしいよ」
「リルフ……」
リルフの言葉を聞いて、私は自然と抱きしめえる力を強くしていた。
私が、この子にそこまで言ってもらえるような人間なのかどうかはわからない。でも、その期待は裏切りたくないと思う。
この子が、そういう大人になれるように、私はその背中で見せていかなければならないだろう。私は、この子の母親なのだから。
「まあ、未来のことだから、まだ色々とよくわからないけど……」
「……でも、一つだけわかっていることはあるよ?」
「そうなの?」
「うん、私とリルフが、ずっと一緒だってこと。それだけは、間違いないでしょう?」
「……うん、そうだね。それだけは、間違いないよ」
私の言葉に、リルフは笑みを浮かべてくれた。それが、嬉しくて仕方ない。この子が笑顔でいてくれることが、私にとって何よりの幸せなのだろう。
この子に母親と思われていると知って、正直最初は不安でいっぱいだった。自分なんかに、母親が務まるのだろうかと。
だけど、今はそんなことは思っていない。不安がない訳ではないけれど、この子の母親でいたいと、そう思っている。
もしかしたら、これからも様々な困難が待ち受けているのかもしれない。だけど、きっと大丈夫だ。この子が傍にいる限り、私は無敵なのだから。