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第八十六話 商会からのデブモフ

すみません。

少し遅くなりました。

 王位継承問題の結論としては、第二王子に決まりそうだから片づくと思われているらしい。

 船問題の功績を覆す力が勇者召喚にはあるらしく、成功させれば本決まりらしい。


 ただ、現国王のときは仕方がなかったとしても、獣人の王は武力に優れた者がなるべきという風潮はなくなっていない。

 そのため、現国王のように最強の戦士がかしずくような国王になり、最強の戦士を獲得する必要がある。


 その第一候補は、第三王子の補佐官であるピュールロンヒ伯爵の長男だ。

 第三王子が消えれば手に入ると思ったのだろうが、不測の事態が起きたせいで、彼はもうすぐ死んでしまうだろう。……この国、大丈夫かな?


 まぁ仮にも世界五大国の一つだからなんとかするだろう。


 そんなことよりも、話が終わった後の「これなら良心も痛まないわねー!」というタマさんの言葉が気になる。

 俺にできることはないだろうけど、回り回って俺に被害が来るのは回避しなければ……。


 それにしても鬼畜天使に良心があったのは驚きだ。てっきり転生したときにゴミ箱に放り込んできたから、転生後は持っていないと思っていた。


「アーク……何してるの?」


 話が一段落した後、商会のおっちゃんが呼ばれていった。

 暇になったからラビナイト商会のための準備を始めることにしたのだが、ラビくんが話を聞きにすっ飛んできた。


「ぬいぐるみを作ったから、この子の衣装を作ってるんだ! 可愛いでしょ!」


 やっぱり《ストアハウス》から取り出した巨大なぬいぐるみが気になるようで、質問しているのに視線はぬいぐるみに釘付けになっている。


「……ぼく? 違うよね? ぼくはこんなに太ってないもん!」


 ぬいぐるみのお腹をぽふぽふ叩いてデブ加減を伝えてくるが、ラビくんを大きくした後、お腹も身長に合わせて大きくしたのだ。違うはずはない。

 むしろ、ラビくんの未来予想図を参考にしたわけだから本狼である。


「名前もあるんだよ」


「……なに?」


 ……機嫌悪いな。


「ラブくん」


「……ぶーちゃんにいじめられたって言う!」


「ちょっと待ったーー! 『愛』っていう意味だよ!? 愛しているし愛されるようにという意味で、我が商会のマスコットに相応しいと思わない!?」


「思わない! どうせラビとデブを掛けたんでしょ!?」


「……違うよ」


「嘘つけーー! それにこの体型じゃ鎧を着れないじゃん!」


 鎧……? なんで? 用意しているのは王冠とマントに王笏なんだけど。ついでに言うなら豪奢な玉座くらいだよ。


「この子は王様だから鎧は着ないよ?」


「……え? なんで王様なの? 商会のマスコットなら騎士でしょ!? ナイトなんだから!」


「そっち? 俺は日中は冒険者をするから店をやるなら夜に少しかなと思ってたから、ナイトって聞いたときに夜の町に君臨する店にしようという意味かと思った」


「迂遠だよ! もっと分かりやすく考えよう!? 元々アクナイトから取ったんだよ? 騎士っていう意味もあるって調べたら書いてあったよ! 普通はナイトでしょ!?」


「ごめん。でももう作っちゃったから、騎士は諦めて王様で我慢して! 王様を守る騎士は今度用意するからさ!」


「……約束だよ?」


「もちろん! 約束!」


「せめて名前を……」


「……キングかラブだったんだけど」


「キングラブでいいんじゃない? レディなんとかみたいなー」


 いきなり介入してきて適当なことを言い出すタマさん。しっくりきてしまったが、変わらずラブくんと呼びそう。

 名前をつけといてなんだけど、懸念事項が一つある。ラブくんを見たお客さんが、街中でラビくんをラブくんと呼んでしまうことだ。


 ……言わないで置こう。みんな気づいているはずだから。


「間違われない対策をしてね。ぼくの最強の召喚獣を呼ぶことになるからね!」


 親分に会いたいけど、説教と折檻は御免被る。……付け髭とかしとこうかな。


「ラビくん、騎士関係の名前の商会を創るのはどうかしらー?」


 カイゼル髭みたいな特徴的な付け髭を用意しようかと考えていると、タマさんがラビくんの周囲を飛び回りながら怪しい提案をし始める。


「……誰が経営するの?」


「奴隷たちよー!」


 呆然。この一言に尽きる。


 奴隷たちは俺の店の人員にするんじゃなかったか? 人材不足は困るんだが?


「あんたは夜だけなんでしょー? 【霊王】を捜す旅がメインだからでしょうけど、商売は甘くないわよ!」


「そのための人材をくださいよ。というか農奴はあげたんだから、他はこっちに回してくださいよ」


「チッチッチッ! あたしの話を聞いたら『神様、タマ様。心より感謝申し上げます』と言いたくなるわよ!」


「神様、タマ様。心より感謝申し上げます!」


「ぶっ飛ばすわよ!? まだ何も言ってないわ!」


 少しふざけただけなのに……。


「あんたはお金があるんだから投資事業をやればいいのよ。それとあんたが考えている飲食店を兼ねたおもちゃ屋は、世界に一つだけの店として経営すればいいわ。ただ、絶対に圧力がかかるから、あんたの店の商品の専売権を奴隷たちの商会に渡して売りさばいてもらえばいいのよ。資金提供はラビナイト商会が行うから子会社とかグループ会社みたいにして、面倒事の窓口にしてしまうのよ! あんたは好きなことをやれる! 誰も不幸にならない!」


 確かに二万近くいる奴隷の中に、商会からかっ攫ってきた人員や、その家族や使用人が多くいる。

 さらに、商会の護衛役として多くの戦闘員がいるから、商品があればすぐにでも商会を創って活動できるかもしれない。


 その他の商品も扱うだろうから、ラビナイト商会よりも大きくなりそうだ。


 ……怪しい。


 他の人が考えたことなら素晴らしいと言えるが、考えた者はタマさんだ。

 鬼畜天使がすることで不幸にならない人がいるわけがない。最低でも俺が不幸になるはず。……確実に何かある。


「どう? 商会の名前もあるのよ!」


「なんていう名前なんですか?」


「――え? なんて?」


「……神様、タマ様。心より感謝申し上げます! どうかわたくしめに素晴らしい商会名をお教え願いませんでしょうか!」


 覚えてろよぉぉぉ……!


「うむうむ、よろしい! 『アーサー商会』であるぞ!」


「もしかして『円卓の騎士』から?」


「その通り!」


 名前からすると本当に立場逆転じゃん。


「アーサー王の墓がある場所は『幸福の島』って呼ばれてるんでしょ? それに島自体も見つかっていない。アーサー商会の本拠地も同じく見つからない場所にあるじゃない。ほら、ピッタリじゃない!」


 確かにすごいけど、いつから考えてたんだ? 何かを見落としているような気がする。


「店舗はどこに置くんですか?」


「余計な横槍が入りにくい【学園都市】ねー! 世界各地から人が来るから宣伝しなくてもいいし、金持ちも多いし、世界規模で人質大作戦をしてるから問題も起きにくいのよねー! ラビナイト商会を設置する【迷宮都市】と同じ都市国家群だから、比較的近いのもいいわよねー!」


「そこまで決まってるなら人員を連れて来ればよかったじゃないですか。お金渡して行ってきて! で済むのに!」


「まだダメなのよねー! 必要なものが欠けてるのよ!」


「もしかして……船ですか?」


 この腹案があったなら船への執着も理解できる。でもその場合は矛盾が発生するんだよな。


「それもあるわねー。商会の顔にもなる高級馬車や輸送用の大型幌馬車なども購入しないといけないしー!」


「でも【学園都市】と奴隷村がある島を行き来したら、そこに本拠地がありますよって公言することになりますよ?」


「ならないわよー! おっちゃんが島に支店を置いていた理由を思い出してみなさい」


「……魔境素材と迷宮品ですか」


「その通り! 魔境や迷宮は、場所や深度によって採取できるものが違うのは知ってるわよね? 同じオークジャーキーでも、素材自体で味も激変するほどなのよ? 奴隷村周辺の素材を定期的に仕入れていますって主張すればいいのよ。言い訳づくりの手伝いとして、【迷宮都市】周辺の素材はラビナイト商会が卸せばいいんだしー!」


 辺境伯がいなくなれば王領に編入されるだろうから、確かに利益になりそうではある。……船があれば。


「船は他の場所で購入するんですか? お金の心配はいりませんが、売ってくれますかね?」


「船は……大丈夫よー。なんとかなるはず!」


「――え? どうやって!?」


「まぁいいからいいから! それからアーサー商会は、あんたの店を設置してからじゃなきゃダメよ。ラビナイト商会がアーサー商会に投資したという功績を公的に残さないと、世間から小判鮫って言われるわよ! ラビナイト商会が上ということを示さないといけないのよ! あんたのためなのよ!」


 よくないよ! いったい何をする気だ!? 最後の言葉で誤魔化せると思うなよ!?


「マスコットは?」


 ラビくんはタマさんの計画よりもマスコットが気になるらしい。


「パンダなんてどうかしら? 商売をする上でこれ以上ないマスコットだと思うけど! もちろん、デブモフ好きのアークが作るから、お腹は少し出てしまうかもしれないけどー! ふふふっ!」


「デブモフって何?」


「デブいモフモフのことよー! ――え!? なんでここに!? 助け――」


「アークは太ったモフモフが好きなの?」


「そうだね。デブが許せるのはモフモフとドラゴンだけかな。この二つは太ってる方が可愛いと思うな!」


「ふーん」


 自分のお腹をモチモチしだすラビくん。


「心配しなくても世界一のフワフワモチモチのお腹だよ! ラビくん以上のモフモフは存在しないよ!」


「……デブじゃないけど、いいの?」


「いいんだよ!」


「やった! いちばーん!」


 ……可愛い。心が洗われるー!


「ガウ!」


 ラビくんをモフモフモチモチしていると、リムくんから抗議の声が上がる。


「もちろん、リムくんのモフモフも素晴らしい! ボリューム感もすごいからね! ネーさんのモフモフもあるから何事もなければモフモフ天国なんだけどね!」


「何にもないと思うよ!」


「本当!? もう地獄の刑務官にならないって約束してくれる!?」


「ぼくはずっとモフモフ天使だよ!」


「そうじゃなくて、地獄の刑務官にならないって明言してよ!」


「……天使なんだからなりようがないよ! ねっ!」


「……」


「ねっ!」


 毎度毎度、この「ねっ!」で誤魔化そうとしてくるけど、逆らえない魔力が宿っているせいで頷いてしまう。


「そうだね!」


「うん!」


 ……可愛すぎるーー!!!


「おい! 外が騒がしくないか? そろそろメシかもしれないぞ!」


 アイコンタクトでもされたのか、絶好のタイミングで話を逸らしてきた。

 タマさんもデブモフの辺りから静かになり、いつのまにか光る板も消えている。


「じゃあ俺たちも行こうか」


「賛成ーー!」「ガウ!」「楽しみだな」


 ラビくん、リムくん、カーさんたちも船上の晩ご飯が楽しみなようで、すぐに起き上がって準備している。


「あっ! ラビくんは俺が組合に登録するまでは念話でお願いね!」


「はーい!」



お読みいただき、ありがとうございます!

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