Canzonier du vampire Épilogue
【Épilogue】
偶然は神がサイコロを振って決めるもの。
必然は神が手引きをするもの。
最良な結果が得られるのであれば、そのどちらでもシモーネにはどうでもよい事だった。シモーネは礼拝堂の前にいるラウラを見つけたのだ。
「姉さま!」
ラウラは自分がシモーネに呼ばれたような気がして振り返った。錯覚だと半分疑いながら振り返った視線の先にシモーネがいた。ラウラの視線がシモーネを捉えて放さない。シモーネはじっと自分を見つめるラウラが自分の愛した女性と重なった。ラウラが駆け出す。シモーネはその姿を見て、あの女性が生き返ったような錯覚を覚えた。
「シモーネ」
ラウラがシモーネの腕を掴んだ。
「……姉さま」
シモーネはラウラをじっと見つめた。ラウラの口許がほころんだ。あの女性はいない。だけど姉は生きている。良く見ると、笑顔を見せるラウラの口許に犬歯の先端が覗いていた。
「あっ………」
いつまでこのままいられるか判らない。もしかしたら、そんなに時間は残されていないのかもしれない。そして吸血鬼の毒に犯され、混血が吸血鬼に転化するのを阻止する手立てはない。自分の愛した女性は世界を敵にまわす前に死んでしまった。いずれ、この世界が姉の敵となるのだろう。「だけど今は……」シモーネは精一杯の笑みをつくり、ラウラの手を取った。
「姉さま、いきましょう」
シモーネの言葉にラウラは嬉しそうに頷いた。
「例え、この先に道はなくとも……」
了