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硝子の森と霧の夢  作者: LED
Ending Phase
42/43

05 硝子の記憶は蘇る(ティス)

Scene Character:ミオソティス(ティス)

Scene Player:貴様 二太郎 様


 ミオソティスは「迷いの森」を彷徨っていた。

 いつも通りの、いつもの場所。あてどなく歩いても、必ず元来た道に戻される。


「…………あれ…………?」


 ミオソティスはふと、(もや)がかかったような違和感を覚えた。

 先ほどまで、何かとても重要な体験をしていた筈なのに――思い出せない。


 忘却の加護を持つ黒玉(ジェット)の力で、出会う人全てに忘れ去られる「隠れ姫」が……森の中の記憶を忘れてしまうなど、滑稽極まりない話だ。


「気のせいよね、きっと」


 ミオソティスはそう自分に言い聞かせると、再び森の中を歩き出す。

 彼女はまだ知らない。いつもと変わり映えのない、今日という日が――その後の運命を激変させる転機となる事を。


**********


 ミオソティスが忘却した記憶の中で。

 火の精霊ヴェスタは、得意げに胸を張って言った。


「ヴェスタに任せて! 一旦は忘れても、必ず記憶が蘇るようにしたげるワ!」

「本当? そんな事……できるの?」


 目を丸くするミオソティスに対し、炎の小人は自信満々だった。


「要はアレでしょ? 過去の世界を体験した、なんて周りに知れたら最悪、狂人扱いなワケだし。

 だったら、記憶が蘇っても問題のない頃を見計らって、きっかけ作りをすればいいのよォ」


 ヴェスタはクルクル飛び跳ねつつ、ミオソティスと香梅(シャンメイ)の間を行ったり来たりした。


「そうねェ。どうせ関連づけるなら、彼女の瞳を連想させるようなモノがいいワ!

 ……例えばそう、苦礬柘榴石(パイロープガーネット)なんてどうかしらァ?」


 パイロープガーネット。その美しき紅色は「燃える瞳」と呼ばれ、古来より珍重された。

 なるほど確かに、活力に溢れる香梅(シャンメイ)を想起させるのに相応しい石だろう。


「ミオソティス。これからアナタに暗示をかけ、記憶を引き戻す『鍵』をかけるわよ。

 いつの日か、苦礬柘榴石(パイロープガーネット)をその目にした時――薄れかけた今の記憶も、徐々に取り戻せるように」


 暗示をかける儀式は、思いの他あっさりと終わった。

 ヴェスタが言うには元の時代に戻った時に、混乱を避けるための処置でもあるという。

 ミオソティス自身、半信半疑だったが……これで香梅(シャンメイ)たちとの出会いを忘れる事なく思い出せるというなら、乗らない手はなかった。


**********


 かくして、ミオソティスは元来た「(せかい)」へと戻った。

 他の「外来者」たちと異なり、時間は違えど全く同じ「迷いの森」への揺り戻し。記憶の混乱を避けるべく――ミオソティスの体験は心の奥へとしまい込まれた。

 記憶復活の鍵となる宝石は――後にとある魔法使いが遣わした「使い魔」によって、もたらされる事になる。


 しかし今は、ミオソティスにとって最も重要な「出逢い」の時間だった。


 彼女はついに見つけたのだ。己の守護石を見ても自分を忘却する事のない石人を。

 黒衣の老人グリソゴノと同じ、黒色金剛石(ブラックダイヤモンド)の加護を宿すオルロフを。

 ミオソティスは喜びの余り、感極まって叫んだ。


「見つけた! 私の運命の人!!」



( To be continued in 貴石奇譚 黒玉の章 ~ジェット~ )

貴様 二太郎様、舞台の世界観や設定に関する助言など、多謝です!

最後までお付き合い下さり、ありがとうございました!

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