02 暴虐の王の帰還(ゲツトマ)
Scene Character:ゲツエイ&トーマス(ゲツトマ)
Scene Player:あっきコタロウ 様
『ゲツエイ! そろそろ始まるさ!』
影なる刃・ゲツエイの耳元へ「蜘蛛」が語りかけてくる。
過去幾度となく体験した前兆。自分たちと異なる世界から、本来の世界への「揺り戻し」が始まる。
『変なところだったな! ネットワークが使えないのにはびっくりしたさ! 人間の持ち物は面白いな!』
「蜘蛛」の口から、奇妙な輝きが覗く。どうやら盗賊から盗んだ宝石の類のようだ。
グリソゴノ達が「外来者」を森に招き入れるために用意した渡航状は全部で「4つ」。
だが石人たるミオソティスは、己の持つ黒玉の守護石で事足りる。では最後の1つはどこに――?
その答えがこれだった。トーマスが灰簾石の指輪を手に入れたように、ゲツエイもまた「蜘蛛」を通じて異界へ渡る術を得ていたのである。
『ぐらぐらしはじめた! くるぞ、くるぞ!』
「蜘蛛」が呑気な声を上げている内に――周囲に風が渦巻き、視界が、世界が――めぐるましく変貌していく。
ゲツエイはトーマスと共に、元来た「道」へと転移していた。
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くだらない「お別れ会」を経て、幾度目か数えるのも物憂い、不快な疲労感と頭痛がトーマスを襲った。
気がつけば夜明け前。襲ってきたゴミどもを処分した山の中だ。
試しに念じてみる。が――何も起こらない。
あの世界で得た、物質を創造する力は消失した。間違いなく「戻って来た」という事だ。
「……………………フン。ゲツエイ!」
呼べば出て来る、便利な道具。音もなく黒い影が、白き貴公子の下に馳せ参じる。
ゲツエイに運ばれて山を下りながら、トーマスは思考する。
(あの世界も、実に下らん――俺様が支配するに相応しくない場所だった)
終わってみれば、いつもの結論。
求める場所は、あそこではなかった。それだけのこと。
無駄に消費した時間が腹立たしく、ひとつだけ舌打ちをした。
これからも彼は進むだろう。
「王」への長い道。トーマスは再びその道程に戻り、歩み続ける。
前も後も屍で染め彩って――。
(Fin.)
あっきコタロウ様、最後までお付き合い下さりありがとうございました!