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硝子の森と霧の夢  作者: LED
Middle Phase 01
10/43

03 トーマス、フルコース料理を出す(ゲツトマ)

Scene Character:ゲツエイ&トーマス(ゲツトマ)

Scene Player:カミユ 様

 トーマスは苛立った。


 周囲には、さっきまで無かった霧がうっすらと立ち込めている。見上げれば、上空は一層濃くなっている。明らかに、一寸前と違う場所にいる。

 『また』だ。

 あの疲労感と頭痛が襲ってくるたびに、全く見知らぬ土地へと「転移」する。


 霧深き森の中で、トーマスは声を張り上げる。


「ゲツエイ!」


 トーマスの呼びかけに応え、ゲツエイは森の木の上から逆さ吊りになって顔を見せた。


 不気味な赤毛の忍者。一般人が出会えば恐怖に息も止まる姿であるが、トーマスにとっては懐に隠した最強の刃である。


 トーマスはゲツエイも一緒に転移したことを確認し、辺りを見回した。

 そこにあるのは、霧を透過した月光を反射し、キラキラと輝く樹木たち。


(何だこの森は……植物に硝子のような物質がまとわりついている?

 いや、違うな。植物の細胞壁そのものが硝子に――変化している)


 物質の硝子化。通常であれば凄まじい高熱に晒された時にのみ起こる現象だ。

 しかし目の前に広がる森は熱を感じるどころか、青白く光って肌寒さすら感じる。


 どんなに首をまわしても、視界に映る全ての植物が硝子化している森。地に落ちている小枝を踏みつけてみれば、硝子が小さく音を立てて砕け散る。破片を観察してみると、まだ普通の植物の体裁を保っている部分もあった。この現象は植物のみに起こるのだろうか? ここに長く居ることで人体になんらかの悪影響が起こりはしないか?


「どうして俺様がこんなことに!」


 少し前までは、こんなわけの分からない旅で身の心配をする必要など無かったのに。食事も、寝具も、最高級のものが揃っていたのに。

 そう考えていると――トーマスの眼前でにわかに霧が濃くなり、晴れた後には豪奢なテーブルと椅子が出現した。テーブルの上には銀食器が並び、同じく銀色の皿には贅を尽くした宮廷料理めいたご馳走が並んでいる。


「なっ……に……!?」


 トーマスが思い浮かべ欲した光景が眼前に出現した。しかし常識的に考えて有り得ない。


「ゲツエイ、食ってみろ」


 とりあえず命令すると、赤毛の忍者は隣に降り立ち、皿に盛られた果物をひとつ手づかみで口に放り込んだ。咀嚼し飲み込んで、首をかしげる。


 しばし様子を見るが、苦しむ様子はない。毒は無いようだ。料理のほうも、銀器は濁り無い。

 匂いも特におかしなところは無く、さらにはまるでできたてのように温かい。


 口にすべきかどうか。


(…………妙だな。やはり)


 確かに触れることもできるし、フルコース料理自体は幻覚でもないようだ。だが、やはり怪しすぎる。幸いにも、今はさして空腹ではない。

 トーマスは結局料理は口にせず、この現象について思考をめぐらせる。


(念じたものが出現する……?)


 いろいろと試してみる必要があるだろう。

 トーマスは次々と念じた。寝心地の良いベッドは出現したが、巨大な王城は無反応。大きすぎるモノは生み出せないらしい。

 己に忠実なる部下、二十万人の出現も思い浮かべたものの――こちらも無反応。生き物も対象外のようだ。


「チッ」


 とりあえず出現させたベッドに腰をおろし、トーマスは思案した。

 理解の範疇を超える現象に苛立ちが募る。

 とにもかくにも、夜間の行動は危険である。夜が明けるのを待つしかないだろう。あわよくば、霧も晴れれば良いのだが。

 山賊から入手した水と保存食が切れる前に。こんな得体の知れない場所からは一刻も早く抜け出したい。


**********


 一方ゲツエイは、トーマスが腰を下ろしたベッドの側の樹上にて、周囲の様子を探っていた。

 彼と共に森に転移した「蜘蛛」が、獣の言葉でゲツエイに語りかける。


『ん~。この森には多分人間はいない……と思う。でもよくわかんないな! 妖精? 人間によく似たかたちのなにか。わかるか、ゲツエイ?』


 蜘蛛の問いかけに、ゲツエイは首を横に振った。


 ゲツエイの身体のどこかにいつも潜んでいる蜘蛛。

 彼は蜘蛛独自のネット()ワークによって、蜘蛛(どうぞく)が存在する世界であればいかなる距離であろうとも瞬時に連絡を取り合うことができるという。

 ゲツエイが理解できぬ人間の言葉も、この蜘蛛によって通訳が果たされている。しかも、あらゆる世界、国のあらゆる言語を網羅するというのだから、たかが虫一匹とあなどってはいけない。


 今回も、森の中に住む蜘蛛(どうぞく)がいれば、彼らと連携して森の構造や出口の場所を割り出せる――筈だった。


 しかし残念ながら、彼の仲間たちはどうやらこの森の中にはいないらしい。

 さらには、

『この森は、人間は近づかない場所なんだってさ! 不思議なことが、いっぱ~いな! 入っても無駄だから、誰も来ない!』

 という事実が発覚しただけだった。


(つづく)

《 選択肢 》


待てど暮らせど状況の変化は乏しい。ここから先どうすべきか?


A 集めた情報を頼りに、移動して他勢力と接触をはかる

B 木々を破壊する等して、騒ぎを起こし人目を引いてみる


深く考えずとも大丈夫。「自分のキャラならこうする」という直感が大切です!

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