入国
『随分若い人が多いんですね。』
A国は人的交流をほとんど行っていない国だ。
僕の住むB国はA国からたくさんの外科、内科、整形技術まで多くをこの国から輸入してきたが、
実際に足を踏み入れたのは初めてだ。
A国から輸入される技術は驚きに満ちている。
もちろん、B国の医師も導入された技術や薬品の分析を検証はしているのだが、
その効果と安全性を動物実験を経て長く研究し、
その後何百枚と重なる論文と気が遠くなるほどの回数の国家への申請を経て、
ようやく現場に技術は導入される。
一方でA国には、先端医療技術国外流出禁止法により、
新しい技術は国内で10年実施後に輸入解禁となる。
つまりは、A国とその他の国にはおよそ20年の医療技術の進歩の差があるのだ。
多くの国民が医療従事者と聞くが、
その他にも健康食品を開発する会社や、ウイルス除去のためのシステム会社など、
国家支援の下で技術は海外へ広がり、利潤を得、若くして裕福な身なりの人が多い。
僕が今日見学したのは研究機関の技術コンペの様子で、
そこにも若い人たちが溌剌と成果発表をしていた。
街を行く国民は笑顔に満ちている。
『この国の若いパワーが、新たな技術を生んでいるのですね。』
僕は研究所長にそう告げると、
彼は、くっくっくと笑う。
『ドクター、あの女性をいくつだと思うかね?』
僕はカフェの窓際で本を読む女性を顔をむける。
『20・・30台前半ですか?』
所長は、笑いながら
『彼女は今年で60歳だよ。』
僕は言葉が出なかった。肌の質、表情の作り方、髪の艶や姿勢。
どれをとっても若々しいそれにしか見えない。
『見た目だけではない。内臓や、消化器まで隅々クリーニングするのがこの国では行われていることだからね。抗鬱対策もしっかり実施しているから寿命が来るまではこの国では一生17歳のままの精神状況で過ごそうと思えば過ごせるんだ。・・私はまっぴらだけれどね。大人としての時間の方が意味があると思っているから。ちなみに僕は今年で72だよ。』
どう考えても40台の所長が笑う。
整形技術、延命技術、効果的なサプリ。
『アメイジングです・・』
僕はこうして興奮の入国1日目を過ごした。




