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「あーっ!」
迷宮都市の門番を首になった男と。
「? ……うわーぃ」
その原因となった男。
「……」
「……」
「どうした、兄上?」
そんな二人がぁ、であったぁ(森○レオ風に)。
「ッ! 行くぞ、タタラ」
一瞬の判断。出会うと同時に跳ねる様に駆動する筋肉。足元のタタラを引っ掴み――
ソウジ が にげだした!
「逃がすかボケェ!」
しかし まわりこまれてしまった!
「正面突破だッ! 伊達や酔狂でこんな頭をしているのではないのでなっ!」
ソウジ は きりふだ を きった
「接近戦で遅れはとらないッ! ――ドリルっ、ニィィィィイッ!」
もともんばん の ドリルニー
「――――」
こうかはばつぐんだ!
「兄上のおなかからへんなおとがしたっ! ぼふっ! ってした! だいじょうぶ、兄上?」
「……た、タタラ。伝言を、頼めるか?」
「あ、兄上、どうしてそんなこという? だいじょうぶ、きっとだいじょうぶだよ、兄上!」
「いや、俺はもう駄目だ。だから、タタラ、頼む。伝えてくれ――」
――バーバラ。君を、愛しているよ、と
「あ、あにうえぇぇぇぇぇぇっ!」
うにゃー。バーバラってだれー? とタタラが泣き出した。
「……二度目が通用すると思ってんじゃねーよ、立てコルァ! つーかオレには一回目も通用してねぇからな?」
「……」
そういやそですねー。
諦めて立ち上がる。倒れた結果、汚れてしまった一張羅の土を掃い――
「……えーと。そこでお茶でもどーですかね、ジェントルマン?」
生まれて初めて男をナンパしてみた。
□■□■□
小林ゲンゾー。オープンテラスで向き合う男は不機嫌そうだった。
奔るトライバルチックなタトゥーは、呪印と呼ばれるもので、彼が獣種でえあると言う証だろう。茶が強い髪と、瞳。眉毛が太いので、何だか真面目そうに見えるし、実際、彼はまじめだった。俺はソレを身をもって体験している。
彼はヒトの、市民の為に働くことが出来るナイスなガイだ。そんな彼を失業させてしまった事は申し訳ないと思う。申し訳ないとは思うが……
「――」
ぐるるーと、喉鳴り。威嚇しないで欲しい。そんなに怒らないで欲しい。
まぁまぁまぁ、と両手で落ち着く様にハンドシグナル。相手方の注意を引いたそのまま――
「ちゃうねん」
言い訳してみたり。
「あぁん!?」
威嚇された。激おこですね。わかります。
「いえね、落ち着いたらお詫びに伺おうと思ってたんですよ? 本当ですよ? いや、本当に本当ですって。ただ、ほら、僕らは余所者じゃないですか? 生活の基盤を作るのにもそれなりに時間が掛かってたんですよ? 忙しかったんですよ。な、タタラ?」
「うん、いそがしかった!」
タタラが、ばんざーい。
「……そうか。それで、前の休みは何してた?」
「あー……それはで――むぐっ!」
答えようとした所、口をふさがれた。何すんねやー、われぇ。そんな思いを込めて睨む。お前に聞いてない。と睨み返される。そうして、ゲンゾーさんの視線が向かう先には――タタラ。成程。純粋無垢な幼子から証言を得る事で、虚偽が混じる可能性を除去すると言う分けですね? わかります。
「……」
だが甘い。
タタラは賢いお子様だ。目くばせをすれば――ほら、気が付き、力強い頷きを返してくれる。実に頼もしい。子供が純粋無垢だなどと、笑わせる。赤ん坊は二ヶ月で嘘泣きを覚えるのだ。
「兄上はまえのきゅうじつにオウレンジャーショーにつれてってくれんかった。
ダルイってねてた。われはしかたないからコトリちゃんとこであそんでた」
ふんすーと、得意気にタタラ。
「……」
じとーとゲンゾー。
「……」
必死に視線を逸らす俺。
やだ、タタラくんってば、正直者。
ラノベのタイトル風に言うなら『弟が正直すぎて俺の寿命がマッハでやばい』。略して俺マッハ。やべぇ、俺まっぱに聞こえる。
天よ、地よ! 全よ裸よッ! 我に力を与えたまえっ! ダイッ! ゼンっ! ラァァァアァ!
――純粋ロボ ダイゼンラー 始まりますッ!
「って、痛い痛い痛いっ! マウスクローが痛い! 気軽にタタラのお仕置きに使用してたけど、思ったよりコレ痛い! ごめん! ゲンさん! 許して! さっき頼んだケーキセット、俺のおごりで良いので許してくだ――あだだだだだだだだだだだ、いだぃ!」
あごから、こきょ、と言う奇妙な音が鳴った所で介抱して貰えた。酷い。