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28

「あーっ!」


 迷宮都市の門番を首になった男と。


「? ……うわーぃ」


 その原因となった男。


「……」

「……」

「どうした、兄上?」


 そんな二人がぁ、であったぁ(森○レオ風に)。


「ッ! 行くぞ、タタラ」


 一瞬の判断。出会うと同時に跳ねる様に駆動する筋肉。足元のタタラを引っ掴み――

 ソウジ が にげだした!


「逃がすかボケェ!」


 しかし まわりこまれてしまった!


「正面突破だッ! 伊達や酔狂でこんな頭をしているのではないのでなっ!」


 ソウジ は きりふだ を きった


「接近戦で遅れはとらないッ! ――ドリルっ、ニィィィィイッ!」


 もともんばん の ドリルニー


「――――」


 こうかはばつぐんだ!


「兄上のおなかからへんなおとがしたっ! ぼふっ! ってした! だいじょうぶ、兄上?」

「……た、タタラ。伝言を、頼めるか?」

「あ、兄上、どうしてそんなこという? だいじょうぶ、きっとだいじょうぶだよ、兄上!」

「いや、俺はもう駄目だ。だから、タタラ、頼む。伝えてくれ――」


 ――バーバラ。君を、愛しているよ、と


「あ、あにうえぇぇぇぇぇぇっ!」


 うにゃー。バーバラってだれー? とタタラが泣き出した。


「……二度目が通用すると思ってんじゃねーよ、立てコルァ! つーかオレには一回目も通用してねぇからな?」

「……」


 そういやそですねー。

 諦めて立ち上がる。倒れた結果、汚れてしまった一張羅の土を掃い――


「……えーと。そこでお茶でもどーですかね、ジェントルマン?」


 生まれて初めて男をナンパしてみた。


□■□■□


 小林ゲンゾー。オープンテラスで向き合う男は不機嫌そうだった。

 奔るトライバルチックなタトゥーは、呪印と呼ばれるもので、彼が獣種でえあると言う証だろう。茶が強い髪と、瞳。眉毛が太いので、何だか真面目そうに見えるし、実際、彼はまじめだった。俺はソレを身をもって体験している。

 彼はヒトの、市民の為に働くことが出来るナイスなガイだ。そんな彼を失業させてしまった事は申し訳ないと思う。申し訳ないとは思うが……


「――」


 ぐるるーと、喉鳴り。威嚇しないで欲しい。そんなに怒らないで欲しい。

 まぁまぁまぁ、と両手で落ち着く様にハンドシグナル。相手方の注意を引いたそのまま――


「ちゃうねん」


 言い訳してみたり。


「あぁん!?」


 威嚇された。激おこですね。わかります。


「いえね、落ち着いたらお詫びに伺おうと思ってたんですよ? 本当ですよ? いや、本当に本当ですって。ただ、ほら、僕らは余所者じゃないですか? 生活の基盤を作るのにもそれなりに時間が掛かってたんですよ? 忙しかったんですよ。な、タタラ?」

「うん、いそがしかった!」


 タタラが、ばんざーい。


「……そうか。それで、前の休みは何してた?」

「あー……それはで――むぐっ!」


 答えようとした所、口をふさがれた。何すんねやー、われぇ。そんな思いを込めて睨む。お前に聞いてない。と睨み返される。そうして、ゲンゾーさんの視線が向かう先には――タタラ。成程。純粋無垢な幼子から証言を得る事で、虚偽が混じる可能性を除去すると言う分けですね? わかります。


「……」


 だが甘い。

 タタラは賢いお子様だ。目くばせをすれば――ほら、気が付き、力強い頷きを返してくれる。実に頼もしい。子供が純粋無垢だなどと、笑わせる。赤ん坊は二ヶ月で嘘泣きを覚えるのだ。


「兄上はまえのきゅうじつにオウレンジャーショーにつれてってくれんかった。

ダルイってねてた。われはしかたないからコトリちゃんとこであそんでた」


 ふんすーと、得意気にタタラ。


「……」


 じとーとゲンゾー。


「……」


 必死に視線を逸らす俺。

 やだ、タタラくんってば、正直者。

 ラノベのタイトル風に言うなら『弟が正直すぎて俺の寿命がマッハでやばい』。略して俺マッハ。やべぇ、俺まっぱに聞こえる。

 天よ、地よ! 全よ裸よッ! 我に力を与えたまえっ! ダイッ! ゼンっ! ラァァァアァ!

 ――純粋ロボ ダイゼンラー 始まりますッ!


「って、痛い痛い痛いっ! マウスクローが痛い! 気軽にタタラのお仕置きに使用してたけど、思ったよりコレ痛い! ごめん! ゲンさん! 許して! さっき頼んだケーキセット、俺のおごりで良いので許してくだ――あだだだだだだだだだだだ、いだぃ!」


 あごから、こきょ、と言う奇妙な音が鳴った所で介抱して貰えた。酷い。



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