ご苦労様の恐怖
恐怖。
それが形として現れたとしたら、私の目の前で長い足を組み優雅に座っているお方だと思う。
何百という数の魔族のエリート達が視界を冷たい床に向け、片膝をつき、低く重く美しい声を聞き逃すまいとピクリとも動かず集中している。
その異様な空気は長く長く感じられ、いつも私の心を乱す。
これから起こるであろう出来事を思い、喉が潰れるくらい叫び散らしてしまいたくなるのだ。
もちろんこの静寂な空間を壊す勇気などないので心の中にとどめておくが。
そんな永遠に続くかと錯覚するような静かな時間もあのお方の一言で終わりを迎えた。
「ご苦労様」
そう言って精巧に作られたドールのように白い手を私の横の者に向けると、先ほどまであった生命の気配は音を立てることなく消えた。
それに私はホッと胸を撫で下ろした。
それが例え私に親切にしてくれた同僚だとしても。
自分ではなかったという事実に安心するのだ。
ああ、なんて私は汚い女なのだろうか。
「マリー」
自分を責め、罪悪感から逃れようと必死だった私は、急によばれた自分の名にビクッと肩が揺れた。
そんな私を見て口角をあげる。
「……なんでしょう、我が君」
「ふふ、お前はいつだって怯えているね。私はそれが楽しくて楽しくて堪らないよ」
なんと言ったらいいのかわからず黙ってしまう。
そんな私を見てまた笑うのだった。
読んでいただきとても嬉しいです。
初めての小説頑張ります!
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