第2話:第3ゲームか、それともデッキブラシか
「ナンバー4 新藤 しんどう 梨花りか 脱落 生存時間31時間23分52秒」
部屋というとよりただの白い空間に無機質なアナウンスが響いてしまった。
(14回目…か)
秋吾は、人の死を無情にも告げるこのアナウンスを聞く
『最後の扉』の上部にある分厚い小窓に張り付き、視界を滲ませる涙を手の甲で乱暴に拭いながら、なおも向こう側を見つめようとする。
しかし、視界を遮るのは涙だけではない。部屋の天井のスプリンクラーから容赦なく噴き出す液体によって、空間は白煙によって視界はひどく閉ざされていた――それは、ついさっきまで隣で笑い、自分を先に送り出してくれた新藤梨花という人間の、文字通りの「残り滓」が霧散したものだった。
「くそ…!なんで梨花が死ななければならなかったんだ・・・」
(そして俺はいつまでこんなバカげた殺人ゲームをやらされ続けるんだ…!)
秋吾は梨花の死をいつまでも悼んではいられないことを知っていた。前回のゲームでも同じような部屋の中央からデスク———細長い円柱に白い陶器の円盤が載ったような台座がせりあがってきたのだ。その台座には黒い封筒が載せられており
その封筒を開けると
【おめでとう♪第2ゲームにご招待するよ!!!】
と、訳の分からない文面が書かれており、そのまま部屋にガスが充満して秋吾は眠ってしまったのだ
起きた先は、またデスゲームだった。そして秋吾はそこで出会った梨花を失ったのだ。
(今回はどうなるんだ…?)
秋吾は周りを警戒する。
秋吾は待った。周辺を警戒しながらずっと。待つ。待つ。
(少し…眠いな…)
最後、梨花が死ぬまでの31時間余り、秋吾は常に文字通り命がけで戦い抜いてきた。それがすべて終わり、今白い何もない空間で座り込んでいる秋吾が集中の線が切れ、眠り込んでしまうのもおかしくない。
◆ ◆ ◆
ウィィーーンという音で秋吾は目を覚ます
音のするほうを見ると前回と同じように空間の中央の床から何かが出てくるようだ
(また、あの台座がでてくるのか?!)
秋吾の予想とは反して下から出てきたのは3人の人間だった。中央にいる死んだ目をした青年、おそらくこの3人の中のリーダー格だろう。両脇にいるのは、1人は茶色の髪をしてカーディガンを羽織っている女性、そしてもう一方の脇にいるのは防護服に身を包み、ウサギの仮面をつけている子供だった。
(初めて見た…おそらくデスゲーム側の人間だろう…つまり梨花やその他の人たちの仇でもある)
秋吾は身構える。
(何をしにきたんだ…?!まさか俺を殺しに…)
秋吾が3人を観察するとどうやら何かを話しているようだ
「な・ん・で!私まで掃除にこなくちゃいけないんですかーチーフ!これってぇー仮面先輩の仕事じゃないんですか?!」
茶髪の女はチーフと呼ばれた青年に文句を言っていた
『アンダケ汚シタ…ノハユラノ責任…少シハテツダエ』
防護服をきた子供から電子音声が流れる。あの女はユラと呼ぶらしい、と秋吾は分析する
「先輩の掃除を手伝う目的もあるが、いちばんの目的はあいつだ」
青年は秋吾を指差す
「それはわかるけど!!いやだーー掃除めんどくさいよーお肉しばらく食べられないじゃん!」
ユラは青年に泣きついている
(いちばんの目的が…俺?!)
秋吾は出てきた3人を警戒し、大声で叫ぶ
「急に出てきてなんだよお前ら!この馬鹿げたゲーム側の人間か?!目的が俺って…どういうことだよ説明しろ!」
秋吾は3人に向かって思っていたことをぶつける
チーフと呼ばれた青年は秋吾の方を向き直し
「浅井 秋吾くん。まずは、第2ゲーム突破おめでとうと言うべきかな?」
青年は賛辞を秋吾に送る。続けて
「おめでとー♪しかも無傷!!」
『スゴイスゴイ』
2人の少女からも賛辞が秋吾に贈られた。
そこで秋吾は気づく。ユラと呼ばれた女の左目は義眼だ。防護服を着ている少女ももしかすると…と秋吾は邪推する
しかし、今そんなことを考えている暇はなく秋吾は青年に対して言わなければならないことがある
「お前たちが、このゲームを開催したのか?そして…」
秋吾は息を吸いなおして言う
「お前たちが、梨花やほかのみんなも殺したのか?!」
青年は表情を変えずに言う
「お察しの通りそうだ」
「そうだよー!楽しんでくれたー?」
ユラも続く
「ふざけるな!!!」
秋吾は殴りかかるが、青年が一切表情を変えずに秋吾の手首をひょいっと掴んで制止し秋吾の顔に自分の顔を近づけて言う
「まぁ落ち着け。ここで俺たちに歯向かってもいいことは何もないってお前自身もわかってるはずだ」
「梨花の仇くらいは取れるさ!」
秋吾は青年の制止を振り払おうとするが青年の制止を振り払うことはできない
「よく聞け。お前があの少女の仇を取りたいのはよくわかる。俺もお前と同じだった。でもな、俺たちはこの委員会の末端の一つなんだ。これまで生き残ってきたお前ならばわかるはずだ。もし、仇を取りたいと願うならばこの仕組みそのものに敵意を向けろ。まぁ、この監視の多さだと絶対に無理だとは思うがな」
言い終えると同時に、青年は秋吾の手首をひねるようにして前に押し出した。
「ぐっ……!?」
勢い余った秋吾は、白いタイルの床へ派手に尻餅をつく。
そして青年は秋吾に対して胸元から黒い封筒と白いゴム手袋を出しながら言う
「君には2つ選択肢がある」




