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8:鐘の音
〇前回のあらすじです。
『冒険者ギルドをさがしてユノが広場にくる』
からーん。
からーん。
からーん。
からーん……。
近くの教会の鐘が鳴った。
時報かな。とユノは思ったが、それはかんちがいだった。
あっちこっちから人が集まってくる。
鐘楼に十字を立てたりっぱな建物から、【教典】をもった法衣の男があらわれた。
全身白ずくめで、まるい帽子をかぶっている。七十代ほどの老爺だ。
ほそくてよぼよぼで、手や顔には枯れ木のように深いしわがいくつも刻まれていた。だが銀色の眼はけわしく見ひらかれて、なにものをも圧倒するぎらぎらとした眼光を放っている。
彼のそばにはふたりの付き人がいる。どちらも三十代ほどと若く、白い僧服を着ていた。
僧服の三人は、広場に常設してある演説台に歩いていった。
老人が台に立つ。
彼のもとへ、町人たちは集まってきていた。
「司祭さま」
「今日もよろしくおねがいします」
「私たちに、神の御言葉を」
人々(ひとびと)が口々にざわめきたつ。
(神?)
町の人たちにまぎれて、司祭の男をユノは覗き込んだ。