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【異世界転移】をやってみた《3》 ―パンドラの箱―  作者: とり
 本編の説明不足をおぎなうショートストーリー
71/71

s4:おにいちゃん。って、よんでほしい。




   ※注意ちゅういです。


   〇このものがたりは、『とり』の書いた長編小説ちょうへんしょうせつ『【異世界転移】をやってみた《4》 ―パンドラのはこ―』の番外ばんがい編です。

   〇ショート・ストーリーです。内容ないようは、ミースというむらがグールにおそわれたあと、剣士のアドニスにうながされて、ユノたちが森にはいった時のはなしです。(コメディです)

   〇メタな表現ひょうげんがふくまれます。

   〇以上いじょうの点に抵抗のあるかたは、まないことをおすすめします。

    また、読んでくださる場合ばあいでも、ご不快になられたさいにはすぐに閲覧えつらん中止ちゅうしすることをおすすめします。











 怪物かいぶつの声がとおい。

 ミースのむらから森にもどったユノは、まえを行くパンドラにしたがって、樹冠じゅかんにさえぎられた月光のなかを、深く、深く、もぐっていった。

 めらめらと。あかえるそら徐々(じょじょ)背後はいごに遠くなる。村人むらびとの声も、もはや聞こえない。

 ここならもう、誰かがやってくることもないだろう――。

 というところで。ユノはぺたりと地面じめんしりをついた。

 十七じゅうなな才の、黒髪くろかみ黒目くろめ少年しょうねんである。

 元は地球ちきゅう日本にほんという国にいたが、陰鬱いんうつな高校生活をおくっていたある時、この異世界いせかい【メルクリウス】に召喚しょうかんされ、勇者ゆうしゃとして魔王まおうつこととなった。

 魔王の討伐とうばつは、一年いちねんまえ晩夏ばんかたし、現在は冒険者ぼうけんしゃとして、依頼いらいをこなしつつなかば気ままな旅をつづけている。

 いま現在この場所ばしょにいるのも、その一環いっかんと言ってよかった。

 少年しょうねん――ユノがすわり込んだのにパンドラは気づく。振りかえる。

「なにやってるの。ユノさん……」


 パンドラはあかをあきれたものにした。じゅう才ほどの少女しょうじょだが、亜麻色あまいろながが、すこ彼女かのじょ大人おとなびてみせる。

 白い長衣トーガ旅用たびようくつをつけているが、そのしろかたよった色素の風采ふうさいは、夜暗やあんのなかで、ぼやりと幽玄ゆうげんの存在のように浮かんでいた。

 ユノがゴロゴロ。地べたにっころがって言う。

「パンドラあ。おねがいがあるんだけど」

「フツーにいやだ」

「なんでまだなにってないのにことわるの」

「セレンから聞いてるの。ユノさんって、本編ほんぺんではそこそこまじめだけど、短編たんぺんになった途端にフザけたことしかぬかさないって。どれくらいフザけてるかっていうと……。あの冷徹れいてつ大魔神だいまじんのセレンがためらいなくヒクくらいフザけてるって聞いてるけど」

「あの妖精ようせい~。よけいなことばあっか言いやがって……」

「と。言うわけで。だめです」


 パンドラはユノに背をけてあるきだした。なお、セレンというのは妖精ようせい族長ぞくちょうで、若いむすめのすがたをした、グリーンの長髪ちょうはつながみみを持つ美女びじょである。性格のほうは、先ほどパンドラの言ったとおりだ。

「ちょっとってよー。パンドラあ」

「ぶっ!!!」

 むしみたいにガサガサと地をってきたユノが、歩いていたパンドラの足首あしくびをつかんだ。物理的な摂理せつりにより、パンドラの体は前方ぜんぽうたおれる。あまりの不意打ふいうちであったため、反射はんしゃ神経がに合わず、パンドラはそのまま受けもとれずにかわいいはな地面じめんに打ちつけた。おもいっきり。

「ユノさん……。私になにか恨みでもあるの?」

「ないよ」

「んじゃあ、こんなケガさせることしないでよ……」

「えへへー。でもさあ。知ってる? パンドラ。ボクのいた世界ってゆーか国では、殺意さついがあって人を殺したらつみに問われるけど、殺意がなくって人を殺したときは罪には問われないんだよ」

(……。怖いことってる)


 パンドラはササーッとつんいでユノからはなれた。ユノは「よっこいしょ」と湿しめった大地にすわりなおす。

「それはともかく。おねがいってのは、カンタンなことなんだ」

「聞かないっ。てったばっかりなんだけどおー?」

「ボクにね、『おにいちゃん』って言ってほしいんだ。ってゆーか、ボクのことお兄ちゃんってんでほしいんだ」

「じゃあそこに気前きまえよくっかの形になったつるが木に引っかかってるんで。それに首を突っこんで次のせいていよく私のあにとして生まれ変わってください。そのあかつきに、どうするか考えるんで」

「きみも残酷ざんこくなこと言うよなあ」

「そうかなあ。ストレートに『死ね』って言われるよりかはやさしいとおもうけど」

 パンドラもまた近くの木にりかかる格好かっこうすわった。服がどろだらけになってしまったが、まあ短編たんぺんなので問題ない。ここでの描写びょうしゃは、本編ほんぺんのほうには基本きほん反映はんえいされないのだ。多分。


「ボクには、異世界にきたらやりたいことがあってさ……」

 ヒザをかかえてゆめを語る口調くちょうになって、ユノは星空ほしぞら見上みあげた。木々の邪魔じゃましてほとんどえないが。

「そうなんだ。それじゃあゆめとか希望きぼうとかはハンカチやティッシュといっしょに、なくさないようポケットにめたままにして。さっさと出発しゅっぱつしましょーか」

 どっこいしょ。とパンドラは立ちあがった。

 本当ほんとうすこやすんでいきたかったが、とおをして語りだすユノに、ものすごくめんどうくさいにおいを感じたのだ。具体的にどんな臭いかというと。……アンモニアしゅう

「えー。ちょっとってよパンドラあっ。ボクが一世いっせい一代いちだいの決心をして言おうとして……。あー、ねえってまって。あのね。異世界でボク、ハーレムをつくりたかったんだ。現実(日本)たされなかった承認しょうにん欲求よっきゅう称賛しょうさんへの渇望かつぼうを、ここでおも存分ぞんぶんたされたいんだよ!」


「そんなつまんないことに、私たちの世界をまきこまれても……」

「きみにはほめられたことのない人の気持ちがわかんないんだいっ!」

中身なかみのない称賛しょうさんほどむなしいものはないとおもうけど……」

 ぽつりと。しかしギリギリ聞こえるボリュームで、パンドラは言った。

「それでもいいのっ。おねがあいパンドラッ。ボクのことお兄ちゃんってんでっ。心を込めて、尊敬そんけいねんもちゃんと込めて、『おにいちゃん♡』って、呼んでよおおお!」

「……な。なんて図々(ずうずう)しい……」

 足首あしくびをつかんで引きずりたおさんばかりに引っぱってくるユノに、パンドラは顔中かおじゅうをひきつらせてうめいた。なんとかユノの手をんづけてもぎはなし、距離きょりをとる。

「ほら。馬鹿ばかなことばっか言ってないで、そろそろ先に行こうよ。……。……お。おにいちゃん」


 かぼそはなたれたパンドラの言葉ことばに、ユノはかおかがやかせた。飛びあがって、立ちあがって、パンドラについていく。

「わあーいっ。ありがとうパンドラっ。信じてたよ!!」

「はいはい……」

 うしろから抱きつこうとするユノのあご裏拳うらけんを入れて、パンドラはよるの森を再びあるはじめた。

 もう二度にどと、こんな人間の相手あいてはするまいと。心にかたちかいながら……。






                          (おわり)
























       んでいただいて、ありがとうございました。












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