98話 超家族会議、開幕!
少しシリアスのような、そうでもないような
「むー、頭がガンガンする」
いつもならアリサに起こしてもらうんだけど、ひどい頭痛で先に目が覚めたわ。今まで経験したことがない強い痛みでかなりきつい。
まぁ起きたことで自己治癒が機能したのか、痛みが徐々に和らいできてるから、鎮痛剤を飲まなくても大丈夫そうだけど。
数分後、痛みがだいぶ引いたので現状を確認しましょー。まずはー、うん、体が動かないね。
それもそのはず、左側ではアリサが抱きついてて、右側にはエレンが抱きついてるサンドイッチ状態。
というか、二人ともがっちり抱きついてるから、抜け出すのも難しい感じなんですけどー。
まぁいいや、二人が起きるまでその寝顔をニヤニヤしながら見ていましょう。寝顔もホント可愛いなぁ、何年見ても見飽きないよね! ……何年見ても?
アリサの寝顔は2年くらい見てるけど、エレンは今日が初めてだったはず。でも何年見てもって、あれ?
それになんだろ、二人を見てたら安心感? 安堵? よくわからない変な感情が沸いてくるんだけど、どゆこと? まぁ確かに一回死んだようなものだけどさぁ、って死んだ? だれが?
頭の中を整理しよう。
えっと、わたしの名前はユキ、うん、大丈夫。前世もあったけど今は狐族の女の子、ここまではいい。
今は6歳? 14歳? あれ? わたしの歳って……。
そもそも何で今の時代にいるんだっけ? いやいや、それじゃまるで別の時代から来たみた……い?
あぁそっか、魂が融合するとこうなるのね。
レイジもなかなか大胆なことをしたなぁ。勇者能力の一つに魔力の融合があるのは聞いてたけど、それを使って〝今のわたし〟と〝未来のわたし〟の魂を融合させるとはね。
わたしって半精霊だからか、魂は魔力と精霊力の塊に近いものになる。力の塊に近いということは、勇者能力による融合が可能かもしれない、と。
事実、わたしの魂は見事に融合した。まぁ失敗しても未来のわたしがそのまま消えるだけだったから、この結果には大満足。
しかも未来で得た知識や経験などが記憶としていくつか残ってる。全部じゃないのは、おそらく〝今のわたし〟が拒絶したんだろうね。未来のことを知りすぎても面白くないし。
「あれ? おはようございます、お嬢様」
「おはよー」
「私より早くに起きられるとは、珍しいですね」
頭の中で整理していたらアリサが起きたけど、まぁそうだよね。
すべては頭痛のせいです! わたしも頭痛で目が覚めるなんて初めてだったし……。頭痛は融合の過程で発生した力の余波が原因っぽいなぁ。
まぁアリサが起きたということは、おそらく
「あ、あの、その、お、おはよう、ですわ」
「おはよー」
予想通りエレンも起きた。だけど顔が真っ赤になってますねぇ。これは慣れてないから恥ずかしいとかですかね。
なーにそのうちアリサみたいに慣れるよ! まぁアリサも口調は普通だけど、内心はすごい恥ずかしがってるのをわたしは知ってるけどね!
二人とも起きたので、わたしもベッドから起き……上がれない!?
あれ~? 昨日術装出したりしてないんだけど、どうしてだろ? というかこの状態って術装を一番初めに顕現させたときに似てるなぁ。全身が全く動かない状態で、ほんとどうしようもないとことかそっくり。
とりあえず二人には現状を説明。うん、ショックのあまりこの世の終わりみたいな顔をするね。そこまで大げさにならなくてもいいと思うけどなぁ、おそらく魂が融合した影響だろうし。
でもどうしたものか……。時間が経てば治るとは思うけど、念のためお母様に相談してみようかな。
「とりあえずアリサ、わたしの魔道具とってちょうだい。お母様に連絡を……」
しようとしたら、目の前に転移門が形成される。あーこれ、お母様の術だよね。というか転移門を使うとか、緊急事態なのかな?
しかも転移門から現れるやいなや
「ユキちゃん大丈夫!? 怪我はない? 痛いところはない? お母さんのこと分かる?」
「あぅ、だ、大丈夫ですお母様。ちょっと今体が動かないけど、でもどうしたんですか?」
「だってユキちゃんが、私のユキちゃんがぁぁぁぁぁぁ」
そう言いながらお母様が思いっきり抱きしめてくる。ちょ、ちょっと苦しい。
でもなんでこうな……あっ! そういえばわたしというか〝未来のわたし〟がお母様の枕元で謝っちゃったんだっけ。いやぁしっぱいしっぱい。
「あの、その、えっと、いろいろありまして」
「全部お母さんに話して」
「はーい。えっと、実は未来で失敗しちゃいまして。きっかけは――」
抱きしめられたままで格好がつかないけど、事の発端は今日の対決だったこと、未来で負けて封印されたことや敵の情報、封印された後に世界がどうなったかなどを順に話していく。
お母様はわたしの目をじっと見たまま、わたしの告げる内容を聞いている。
時折わたしの頭をなでてくれるからかな、すごく落ち着いて話すことができる。
「とゆーわけで、なんかあっさり負けちゃいました……ごめんなさい」
「あらあら、どうして謝るのかしら?」
「だって、お母様の娘なのにあんな奴らに負けちゃってのが情けなくて。それに……」
正直、負けたことは自分が弱かっただけなので割り切ってる。だけど納得できず、すごく後悔していることがある。
「アリサたちを守れなかった、封印されたのでみんなにも会えなくなった、それにお母様が暴走するほど追い込んでしまったことが……」
「後悔しているのね?」
「はい……」
前世のように、親しい人が居なければここまで後悔しない。
でも今世は違い、わたしには大好きな人たちがいっぱいいる。それにわたしからの一方的じゃない、みんなもわたしのことを大好きでいてくれる。
大好きな人たちにもう会えないということがすごく悔しくて、同時に残される側のことを考えると、とても申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
そういうのを全部思い出しちゃったからか、それともお母様に撫でられてたせいか、どんどん感情があふれてくる。
自分でも気が付かないうちに涙を流し、それをお母様がやさしく拭いてくれる。
「大丈夫よ、未来は残念だけど、ユキちゃんは今こうしてここに居るのだから。だから安心していいのよ」
「おかあさま……、わたし、わたし! すごくがんばったんです! でも全然だめで、そのせいでみんなに会えなくなって、お母様にも会えなくなって、だから、だから! ごめんなさい、ごめん、なさ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁん」
感情があふれすぎてもう限界、むりだもん。
前世も含めて一番泣いたかもしれないわ。1時間くらいかなぁ、ずっと謝りながら泣いてた気がする。
人との永遠の別れは前世でも経験した。その時も悲しくはなったけど、ここまで泣くことはなかった。
これは今の自分の性格からなのか、それとも自分が負けたからなのか、正直わからない。ただ言えるのは、自分でもびっくりするくらい泣いたってことだけだわ。
泣き止んだ後、お母様と一緒にお風呂に入った。ここまではいいんだけど、お母様がわたしを絶対に放さない勢いで抱き続ける状態になるとはね。うれしいんだけど、ちょっと恥ずかしい。
それはさておき、同じ未来にしないためには対策が必要。
まずは家族会議をして策を練ろうとなったけど、これって完全に家族会議の域を超えてるよね? 最初にお母様が『みんなを招集する』って言ったから予想はしてたけど、こうなるとはね……。
お父様とシズクさんが呼ばれたのはわかる。でもパパ様にママ様、お姉様にお兄様、珍しいことに王子であるリオンお兄様まで参加するとか。さらにギルドマスターであるフローラさんまでいるよ。
うん、ここまで重鎮が揃うとかちょっと予想外。しかも未来のわたしがどうなったかを説明したとたん、一気に殺気立って戦争起こしそうな雰囲気だし。
「さて、ユキちゃんたちにふざけた真似をしでかす輩に対してなんだけど」
「サユリ殿、レグラスの国王としてこの発言はいささか問題なのだが、根源である神聖王国を滅ぼすのはどうだろうか。許可をいただければすぐにでも宣戦布告し、数日中に結果を出すことができるぞ」
最初からとんでもないこと言ってるよ!? 国王様がそれ言っちゃうとか、もしも密偵が居たらすっごいやばいんじゃないかな?
「そうね、あの国はそろそろ滅ぼした方が良いかもしれないわね。なによりあの土地はあんなゴミ虫が住んでいい土地じゃないし」
「サユリさんの言う通りね。あの土地はエルフが管理していた資源庫だったのに、いつの間にか只人族の王が勝手に建国しちゃったのよね。そのことに気が付いた時には既に国として出来上がっていたからどうすることもできず、残念だけど手放した土地なのよね」
「あの土地には精霊も住んでいました。ですがあの国のせいで住処を奪われた事実もあります。追い出された精霊は存在が消える前にレグラス、というよりサユリ様と精霊神様の傍に移住できたのは不幸中の幸いでしたが」
お母様が意味深なことを言ったと思ったら、ママ様とフローラさんがさらっと爆弾発言したんですが!? しかも王城の図書室にも無かった内容なんだけど……。
神聖王国では魔吸石が豊富に採れることから、特別な何かあるとは思ってたけど、エルフの資源庫なら納得。貴重な資源もいっぱいありそうだけど、エルフでないと採れない可能性が高そうね。
そう考えれば〝エルフが管理していた資源庫〟という真実を隠しているのも納得かな。もしも神聖王国の奴らが知ったら、エルフを拉致して資源を採掘しようとするかもしれないし。
しかも精霊まで追い出すとかありえない。精霊ってこの世界そのものってくらい重要な存在なのに。
そういえばお母様が言ってたけど、精霊は昔と違って仲良くなる人を極端に厳選しているんだっけ。そうなった原因って住処から追い出されたことの影響ってことだよね? ほんと厄介事しかないな、あの国。
それにしてもこの状況、ちょっとまずいなぁ。どうにかしないと、冗談抜きに開戦しそうだわ。
少し触れていますが
前世:親しい人が居ない、天涯孤独に近い状態
今世:家族や身内の愛がスゴイ(ただし友は少ない)
大体こんな感じになってます




