94話 お風呂は最高です
夕飯はアリサとノエルが作ったビーフカレーだった。
お肉いっぱいでとろけるような柔らかさ、味のバランスも最高でほんと幸せでした。うちのメイドのレベルはホント高いね!
まぁそのせいで、ちょっとエレンが愚痴りだしちゃったけど。
やはりエレンの家だと料理が微妙なようで、結構不満を抱えているみたいね。この国特有なのか、出される料理がどうしてもコース形式になるとか。毎日それだとさすがにかったるいし、愚痴りたくもなるわ。
でもそっかぁ、食事も不満なのかぁ。ん~、あとでちょっと提案してみようかな。
「さてと、それじゃお風呂入ろうか」
「いいですわね。では誰から入りますの?」
「いやいや、全員一緒に決まってるじゃん」
「はい?」
おやまぁ、何言ってるのこの人はって顔されちゃったよ。唐突すぎたかなぁ、しっぱいしっぱい。
だけどアリサとノエルは特に疑問持ってないね。レイジは、あら、どうしたらいいのかわからないって顔してるわ。
「だってお風呂にある魔道具の説明を一回で済ませたいし? なにより、お風呂でキャッキャしたいの!」
友達とお風呂に一緒に入るのをやりたいんです!
というか、いい加減一緒に入ってくれてもいいと思うんだよなぁ。1年以上うちのお屋敷に居たのに、一緒に入ってくれないんだもん。
「で、でも一緒というのは……。そ、それに裸になるのは恥ずかしすぎますわ!」
もっともな意見です。
しかーし、そう言われるのはすでに予想済みなのだ! こんなこともあろうかと、チャンスがあったら無駄にしないように事前準備は完璧だよ!
「アリサ、アレを出して」
「こちらですね。エレン様はお嬢様と同じくらい、ノエルは私と同じくらいの体型ですのでサイズは大丈夫かと」
アリサがポーチから出すのは水着。そう、こんな日が来るのを予想していたわたしはこっそりと全員分の水着を作っていたのだ! まぁもともとはアリサに水着を着てもらおうとした下心から始まったものだけど。
女性用はリボンとホルターネックのビキニタイプ2種類から選べる。男性用はトランクスタイプのみ。もっと種類を増やしたいけど、なかなか作る機会がない。
そういえば授業で海に行くとかあるのかな? あるならその時に作ろうかな。
「というわけで、ちゃっちゃと水着に着替えてお風呂行くよー。あ、レイジは向こうで着替えてね」
「え? 僕まで着替えるの?」
「まぁせっかくだし? さすがに混浴はしないけどね!」
みんなで海水浴とかも行きたいから、履き心地とか改善点とかを聞いておきたいからね。
市販品を買った方が早いけど、なんとなーく自作したい。そして無駄に防御力高い水着にしたい! まぁ水着で戦う場面はなさそうな気はするけど。
「つまり感想を言えばいいんだね、わかったよ」
「おねがいねー。でも着替えは向こうの部屋でやるんだぞ」
「ちょっ!? なんかその言い方だと、僕が見せたがりのようになるんだけど……」
「かもしれないね~」
「そこは否定してもらいたいな!」
まぁ実際のとこ、わたしが男だったらちょっと自慢しちゃいそうな体つきではある。お父様やお兄様に近いかな? ちゃんと鍛えてる証拠でもあるね。
さてと、さっくり着替えましょうかね。と言ってもアリサの手によって着替えることになるんだけど。
エレンは……うん、ノエルがやるのね。抵抗しようとしたみたいだけど、うちのメイドの着せ替え術の前じゃどうにもならない。経験者は語るのだ。
おや? どうやらエレンは着替えさせてもらうのが恥ずかしいみたいね、顔が真っ赤になってるよ。でもそのうち慣れるから大丈夫だよ~。
というかそこまで恥ずかしがらなくても、え? 違う? わたしが見てることが恥ずかしいと、なるほど。まぁこれもそのうち慣れるよ!
「それじゃお風呂の使い方を教えていくよー、って、何もじもじしてるの?」
「恥ずかしいからに決まってますわ! こ、このような、下着のような格好で」
まぁ、うん、確かに下着のような格好だよね。でもみんな似たようなものだよ?
わたしが着てるのはリボンタイプで薄ピンク色をした水着。本当はフリルタイプにしたいんだけど、まだ作ってないから今回はこれで妥協。
エレンが着ているのはホルターネックの黒い水着。少し大人っぽくてちょっとエロい。
アリサはわたしと同じ水着を、ノエルはエレンと同じものを着ているね。主人と同じものを着れば恥ずかしさも軽減するっていう発想からだけど、エレンには効果がなかったみたい。
でもねエレンさん、あなたの普段つけている下着のほうが布面積少ないと思いますよ? それ考えれば余裕でしょうに。
「というか、どうして僕まで一緒に説明を受けることになったのかな……」
「繰り返しになるけど、一回で説明しちゃった方が早いし?」
「だけどこの状況は……」
あー、まぁレイジの戸惑いもわかる。わたしとエレンはまだまだお子様な体系だけど、アリサとノエルは結構育ってるからねぇ。ちょっと刺激が強いかも。
あとはアレかな、まじめな性格だから『じろじろ見たら女性に失礼』とか考えてそうだわ。
「まぁ今回は説明のためだから特別ってことで。それじゃ説明していくねー。まずシャワーだけど――」
使い方を順番に説明。といっても、シャワーなどのよくある魔道具は簡単な説明で済む。珍しいのはサウナと、露天風呂の切り替えくらいかな。
おそらく説明をしなくても使えたとは思うけど、何かがあったら嫌だからねぇ。こういうことには念には念を入れるのです。
説明が一通り済むと、レイジは逃げるようにして出て行った。ちょっとからかいすぎたかなぁ、申し訳ない。
さてさて、せっかく一緒に入るので、わたしはエレンと、アリサはノエルと洗いっこをする。
ほぅほぅ、アリサとはまた違う感じで、これも良いですなぁ。
あれ? なんかエレンの手付きがって、ちょ、洗うのをそっちのけでわたしの尻尾をモフモフするとかどうなのよ。絶対にこの子、アリサ以上にわたしの尻尾の虜になってるわ……。
隣ではノエルがアリサに対して大胆なセクハラしてるね。……うん、見事な返り討ちにあってるけど。相変わらずというか予想を裏切らないというか。
洗い終わったので湯船につかる、ふぃ~。
10人くらいは入れる大きさなので、全員が一緒に入っても余裕だね。
実際にやってわかったけど、みんなで入るだけでなんか楽しいわ。アリサと二人の時はのんびりだけど、みんなだと遊び感覚になるかな。
まぁ目の前でノエルが泳ごうとして、アリサに怒られてる光景があるからそう感じるだけかもしれないけど……。ほんとノエルってわたしの期待を裏切らないわ。
「それにしても、ユキさんの尻尾はお風呂の中だとこうなるのですか」
「そだよ~。モフモフな尻尾ほどこうなっちゃうみたい」
エレンが気になったように、わたしの尻尾って沈むのではなく浮かんじゃうんだよね。さすがに体が浮くほどじゃないけど。
そういえば猿族の尻尾はモフモフじゃないから浮かないとか聞いたことあるけど、ほんとなのかな? 猿族の獣人さん、どこかに居ないかなぁ。
「なによりお湯の中でもモフモフでふわふわですし、最高ですわぁ」
ちょ、エレンさん!? ここでもわたしの尻尾に抱きつくとか、夢中になりすぎじゃないですかね?
しかも水着ですよ? ほとんど裸ですよ? 前世のせいなのか今世の性格のせいなのかはわからないけど、ちょっと意識しちゃうわ。
「はぁ、このお風呂を味わってしまうと、もう屋敷に帰るのが嫌になりますわぁ」
「そういえばエレンの家ってこういうお風呂じゃないの?」
「もっと狭いですの。がんばっても二人入るのがやっとという広さですわ」
どうやらエレンの家のお風呂はこういう大浴場形式でなく、貴族によくある一人向けの高級なバスタブを使用してるのね。
なんとなくお花が浮かんでるイメージがあったけど、さすがにそれはないだろうって聞いたら、浮かんでるというまさかの返事。これは間違いなくどこかの転生者の仕業な気がするわ。
それに、こういったヒノキのお風呂が珍しいみたい。やっぱりこの物件は掘り出し物のレア物件だったわ。
そういえばあの物件屋さんの系列、お庭関係の店舗もあるんだっけ。そっちも当たりな気がするから今度行ってみよう。
しっかし屋敷に帰るのが嫌になる、ねぇ。
「だったらさ、エレンたちも一緒に住まない? わたしは大歓迎だよー」
「一緒に、ですか。……少し考えるお時間をくださいな」
「ほーい」
あら、てっきり即断すると思ったけど、違ったわ。
ん~? アリサを見てるようだけど、あぁ、なるほどね。アリサと話し合って決めるってことね。しかもちょっと心配? 不安? 何とも言えない顔つきになってるわ。
でもアリサの様子見る限り歓迎ですって感じだから、心配無用ですよ?
水着の状態でも混浴にはしません




