68話 ギルドは複数あったみたい
少し長いです
小腹をクレープで満たしたし、次はどうしようか。
「行きたいとことかある? あるならそこを案内するよー」
「そうですわねぇ、わたくしはすべてが珍しいのでどこでも楽しいのですが、レイジ、あなたはどうです?」
「僕は冒険者ギルドが気になるかな。アルネイアよりも強い人が多いって噂だし」
エレンは見るものすべてが珍しいって感じ、他国だからさらに珍しいのかも。
対するレイジは、やっぱり男の子って感じだねぇ。ワクワクしてるのがすごいわかるわ。
さてさて候補に挙がったことだし、冒険者ギルドに行ってみましょーか。
二人を冒険者ギルドまで案内してきたけど、人が多いなぁ。行列が無い受付がひとつもないよ。
他国の人も多く居るのと、見たことが無い素材を換金してるね。新しい魔物でも生まれたのかな?
「人が多いんだね。建物も僕たちの国にあるギルドよりも大きいみたいだし」
「それに色々な人がいますわ。女性も多いですし、わたくしと同じくらいの子供までいますわ」
「たーしかアルネイアのギルドの3倍くらいの大きさだったかな? 王都はここのさらに倍だけどね~」
二人とも興味津々って顔してるね。機会があったら王都のギルドも案内したいけど、王都って冗談抜きに広すぎて迷子になるんだよね……。
それにうちの立場上、王都の方はむやみやたらと出歩けないから窮屈でもあるんだよなぁ。しょうがないとはいえ必ず護衛の兵士さんを同伴しなきゃいけないとか、ちょっと嫌なんだよね。
まぁいいや、とりあえずはフローラさんを探してっと。
あれま、フローラさんのカウンターの行列が一番長いや。ほんと人気だよねぇ。
「お嬢様、フローラ様の所に並びますか?」
「そうだねぇ、ちょっと時間がかかりそうだけど」
「ですね。1時間もかからないとは思いますが」
でもほんと人が多いなぁ。わたしたちの後ろにも行列ができちゃったし。
二人は大丈夫……、あぁ、周りの珍しさが気になってしょうがないみたいだね。たしかに種族もいろいろ、装備もいろいろだからねぇ。
そもそもギルドって町、もしくは国の縮図って言われるくらい多種多様な人が所属している。当然二人が初めて見る種族の人も居たりするだろうし、これなら案外退屈しないで待てそうね。
待つこと30分くらい、ついにわたしたちの番。二人にあれよこれよと説明とかしてたから、あっという間だった気もするけど。
「こんにはユキさん、アリサさん。あら、今日はお友達を連れてきたのですか?」
「こんにちはフローラさん。二人は来年のわたしの留学までうちで預かるアルネイア王国の貴族さんだよ」
「初めまして、エレンですわ」
「僕はレイジといいます。エレン様の従者です」
エレンはスカートをつまんでのお辞儀、さすが生粋のお嬢様って感じだねぇ。
レイジは従者というか執事みたいな感じでお辞儀ですか。こっちもこっちでしっかりしてるね。
「私はフローラと申します。よろしくおねがいしますね」
そう挨拶をするフローラさん。案の定、二人ともちょっと見惚れてるね。やっぱエルフは存在感が違うからねぇ。しかもフローラさんの場合はお姉さん的な色気まであるし。
「ということは、本日はお二人の登録ですか?」
「そうだよ~。そういえばレイジの方はアルネイアで冒険者登録してないの?」
「してるけど、ここでも使えるのかな? これなんだけど」
そう言ってギルドカードを出したけど、あれ? わたしの持っているカードとなんか全然違う。
まずランクが〝B〟ってなってるけど、どういうこと? 鉄とか銅じゃないの?
次に〝Lv81〟だそうだけど、いやいやLvって何よ。たしかに〝レベル〟という単語はこの世界にもあるけど、それだけだよ? 『レベルが1上がりました』とかはゲームや漫画といった架空の世界だけなんだけど。
「あら、これは。失礼ですがレイジさん、所属していた冒険者ギルドにはこのような紋章がありませんでしたか?」
フローラさんはレイジの渡したカードに書かれている紋章を指でトントン叩いてる。紋章は三本の剣が地面に刺さり、その後ろに城のような物が描かれているね。見たことないなぁ。
「確かにありました。何か問題が?」
レイジが少々不安な顔になる。
そりゃそうだよねぇ。何となくフローラさん、この紋章のことで怒ってるような感じがするし。
「問題と言いますか、こちらはこの国では使えません。もちろんこの国で使えるものに変えますのでご安心ください」
「ねーねーフローラさん、レイジのギルドカードって何か特殊なの? わたしのカードと全然違うんだけど」
「そうですね、ご説明します。こちらの紋章を使っているのは私たち冒険者ギルドとは異なる組織です。これはセイリアス帝国で創設された組織に属するギルドが発行したものになります。向こうは『元祖・冒険者ギルド』とか『真・冒険者ギルド』などと名乗っていますが」
セイリアス帝国って南方にある大きな国だっけ、皇帝は世襲制だった記憶。
レグラス、アルネイア、セイリアスはこの世界で有名な大国。
その三国は同盟国ではあるけど、セイリアスはアークルス、あの神様至上主義の神聖王国とも同盟なんだよね。よく言えば中立、悪く言えばどっちつかずな国。
あとはレグラスもアルネイアも国王は不老だけど、セイリアスの皇帝は長寿なだけで不老じゃない。
そのせいか不老な種族に興味を持ちすぎてて、ちょっと黒い噂も多い。
さらに異世界からの勇者召喚をしょっちゅう行っていて、傭兵帝国メルセンとも交易をしている国。ここまでくると、自分たちのためなら何でもやるっていう印象が強くなるね。
でも幅広く交易しているからか、経済力は三国の中で一番らしい。そして三国で一番犯罪率も高い国。夜遅くに子供が一人で歩いたら、次の日には死体となって帰ってくるのが当たり前とか、おっそろしいねぇ。
「もしかして転生者の知識で作ったとかそんな感じなの?」
「その通りです。このランクに使われる文字も、以前から転生者の方が広めようとしていたものだそうです。たしか下から〝F、E、D、C、B、A、S〟という順らしく、白金級がS級となるそうです。正直この文字自体、どういう意味なのかさっぱり分からないのですが」
アルファベットはこの世界に無いからね。
というかこの並び順、考えたのは日本人だよね。Aの上がSっていうの、日本だけの考えだったはず。
……なんでこういう前世のどうでもいいことはすぐに思い出せるのかなぁ。もっと重要そうなことを思い出したいわ。
「この国では私たちの冒険者ギルドのみですが、他国ではセイリアス創設の冒険者ギルドも増えているのです。仕事の内容はほぼ同じなのですが、冒険者に支払われる報酬は向こうの方が多いです。そのため登録者は常に右肩上がりで増えていると聞いています」
「あれ? 同じ仕事なのに向こうの方が高いの? なんかそれって広めるための撒き餌のような」
「ですね。報酬もそうですが、ランクも比較的上がりやすいそうです。ただ、彼らの言う〝S〟ランクの冒険者を見たことがありますが、一般的な〝銀級〟の実力とほぼ同じです。〝S〟より上のランクも用意されているそうですが」
SSランクとかSSSランクになるわけだね。
しっかし撒き餌まで使って広めようとするとはねぇ。必死すぎるというかなんというか、そこまでして広めたいものなのかなぁ。
「この〝Lv〟表示も彼らが考えた独自の計算式で表すものだそうです。魔物1体ごとに経験値というものが決められているようで、それを稼ぐとここに記載されている数値が上がるそうです。彼らはそれを〝レベルアップ〟と言っているようです」
「経験値を決めるとか、なんかすごい面倒な事してるねぇ。ちなみにその〝レベル〟が上がるとどうなるの?」
「本人が〝強くなった気がする〟だけのようです。特典とかはないのですが、ランクアップの基準にはなるそうですよ」
レベルアップで身体能力の上昇とか無いんかーい!
いやほんと、そのシステム考えた人馬鹿でしょ。ランク決めに使えるって言っても、同じ経験値でも雑魚を大量に倒すのと強敵を1体倒すのじゃ差がありすぎると思うんだけどなぁ。
別のギルドのお話が終わった後、二人はフローラさんに説明を聞きながら書類に名前とかを書いている。二人はフローラさんに任せておけば大丈夫だね。
ならその間、わたしとアリサはどんな依頼があるのか見てようかな。
さてさてどんな依頼が~、あれ? なんか高額な依頼が多い感じだね。それにどれも似たようなって、あぁなるほどなるほど、そういうことか。
「混んでいる原因は迷宮のダンジョンね」
「新しくできたダンジョンだそうですね。その名の通りダンジョンは迷宮になっていて構造が複雑、新種の魔物まで湧くみたいです」
「ちょっとしたお祭り並みに人が増えるのもわかるわ。依頼もそれに関するものがほとんどだね」
依頼は迷宮ダンジョンの魔物調査や素材の収集、採掘者の護衛依頼なんかが多い。それと目新しいからか、他のダンジョンなら報酬が安い簡単な依頼まで高くなってる。
でも正直、あんまり興味わかないんだよなぁ。
「おや? お嬢様は興味がないみたいですね。顔に出ていますよ?」
「んー、珍しい敵なのはわかるんだけど、食べられない魔物ばかりだから」
「あぁ、確かに。出現するのはアンデッドとエレメント、それに機械仕掛けのゴーレムとの情報ですからね」
加工用の素材にはなりそうだけど、急いで手に入れるほどじゃないんだよね。
機械仕掛けのゴーレムは少し気になるけど、今すぐ手に入れたいってほどじゃないし。
それにどちらかというと、新しい食材の方を期待しちゃうからなぁ。食べることが大好きだし!
まぁ気が向いたらだね。わたし一人で行くなら何があっても問題ないけど、情報不足ゆえに知らない罠とかでアリサがピンチになるのは嫌だしね。
「こちらがお二人のギルドカードになります。レイジさんは向こうのギルドの経験から鉄級にしてあります」
「もしかして向こうのギルドの質が低いから鉄級なの?」
「申し訳ないのですがその通りです。といってもユキさんのお友達なので、お二人も13歳になる前に銅級より上の級になられてそうですが」
フローラさんが笑顔でそう言うけど、うん、わたしもそれは思うわ。
本来13歳未満は鉄級までだけど、想定外の大物と遭遇、そして軽く撃破とかしそうだしね。わたしより上の級になっても良いんだよ?
さてと、ギルド案内終わったし、次はどこを案内しようかな~。
補足のような駄文:
転生者A「おいおい、ランクの表示がおかしいぞ」
転生者B「AとかSじゃないのかよ。なに基本から外れてんだよ」
転生者C「ということは、Fランクなのに実力はSランクってのもできないのか」
転生者A「そういえばレベルもないよな」
転生者B「はぁ? つまりここは基本が無いハズレ世界ってことかよ」
転生者A「知識チートもほとんどできなかったが、ギルドもこれじゃな」
転生差C「なぁ、いっそのこと俺らが基礎を構築すればいいんじゃないか?」
転生者B「それは良い案だ。正しい世界にするべきだよな」
転生者A「だが、そんなに簡単にいくものか? 既にギルドは存在してるんだぞ」
転生者B「大丈夫だろ、なんたって俺達は勇者、主人公なんだぜ!」
というやり取りがはるか昔にあって、ギルドが複数存在することになったとかならなかったとか。




