67話 クレープがもたらす真実
今日はどのクレープにしようかな~。新作も出たって聞いたからすっごい楽しみなんだよね~。
「見えてきたけど、う~ん、結構並んでない?」
「ですね。この時間であれば空いていたと思うのですが」
クレープ屋さんの前には長蛇の列。ざっとみて20人くらいかな? でもどうしよっかなぁ。
「後回しにするか並んでおくか、だねぇ」
「待つとすれば30分くらいでしょうか。どうなさいます?」
「ん~、エレンはどうしたい? わたしは待つのも平気なんだけど」
「そうですわね、わたくしも大丈夫ですわ。折角なので並びましょう!」
なんというか、この行列に並ぶということが楽しみに見えているのは気のせいかな? 経験ないからってことかしら。まぁいいんだけど。
「んじゃ最後尾についてっと。でもどうしてこんなに居るんだろ?」
「なら僕がちょっと聞いてくるよ」
「何そのイケメンな性格は! まぁお願いねー」
レイジが聞きに行ってくれたから今のうちに聞いておこうかな。そう、わたしが聞きたくてしょうがなかったあの事を!
「で、エレンに質問。レイジとはどの程度進んだ仲なの?」
「はい? おっしゃる意味がよくわかりませんわ」
むむ、はぐらかしてきたね。しかもまったく意味が分からないというような顔をしちゃって。その仕草とかちょっとかわいいけど……。
「だってほら、二人って将来を誓ったーとかのアレなんでしょ?」
「はあ!? わたくしとレイジがですの? ありえませんわ!」
「な、そこまで強く否定するほどなの?」
ほんとすっごい否定してるんだけど。照れてる……わけじゃないねこれ、完全否定だよ。
おかしい、てっきりこの二人はラブラブ一歩手前とかだと思ってたのに。
「レイジはなんと言うか、手のかかる弟みたいな感じですわ」
「兄じゃなくて?」
「弟ですわ! それにレイジには好きな子が別に居ますのよ。それにわたくしも少し気になる方が……」
「そうなのね。う~ん、それはそれで気になるなぁ」
レイジはあの時の女勇者のことが好きだったのかな?
でも前の世界、レイジは一人旅してたんだよね。告白して失恋したのか、それともただの片思いだったのか気になるなぁ。
それとエレンの気になる人って誰なんだろね。わたしの知ってる人かな?
「(あの、エレン様、もしかしてそのお相手は)」
「(アリサさんの思っている通りですわ。これがどういう感情なのかはまだハッキリとはしませんが、気になるのは事実ですわ)」
「(お気持ちはわかります。仲良くなればなるほど惹かれますし)」
「ん? 二人とも何話してるの~?」
「「なんでもないです!」」
はぅ、思いっきり隠された感がするんだけど。余計気になるんだけどなぁ。
あー、わかった、気になる相手ってのはカイルだね。二人がコソコソ話すってことは、あまりわたしと関わってほしくないからだね。なっとくなっとく。
「ユキさん、たぶんそのお考えは間違ってますわ」
「なぬ!? というかエレンまで心読めるの?」
「ほんと、心の内がお顔に出る方ですわねぇ」
むぅ、エレンまでそう言うなんて。そんなに出るかなぁ、ふにふに
「あのお嬢様、私をふにふにされましても」
「安心して、これは確信犯だから!」
ちょっとしたいたずら心って、うひゃ
「……お嬢様? すこ~しお話ししましょうか?」
「はぅ、ア、アリサ、謝るから、そんな、頬っぺたつねらないでぇぇぇぇぇぇぇ」
「うー、アリサの愛が激しい」
「ち、ち、ち、違いますから!」
「……たしかにすごかったですわね」
……そこで慌てられるとわたしもすっごい反応に困るんだけど。しかもエレン、追い打ちはやめなさいよ、余計困るから。
おっとレイジが戻ってきたよ。すごい苦笑い、あぁ、今のやり取り見てたのね。
「えっとただいま。どうやら有名な雑誌に『王族も虜になった有名店』みたいなうたい文句付きで掲載されたらしく、他国の観光客が大勢きているみたいだよ」
「なーるほど。確かにここのクレープは美味しくて有名だからねぇ」
わたしだけでなくお姉様もここのクレープ大好きだからね。
お姉様と二人でちょくちょく食べに来てるからか、いつの間にやら王室御用達みたいな噂が広まったけど。きっとその噂を記者さんが雑誌に載せちゃったんだろうなぁ。
でも雑誌に載って国外まで広まるとか、ほんとすごいなぁ。
待つことだいたい30分、ついにわたしたちの番!
さてさて
「お姉さんこんにちわー」
「あらユキちゃん、いらっしゃい。今日はアリサちゃん以外のお友達もいるんだね」
いつも明るい店主のお姉さん。
でもその言い方はやめて! わたしが友達少ない子だっての、再認識しちゃうから。
「あの、もしかしてユキさんって街の方に覚えられているのです?」
「そうだよ。この街でユキちゃん達を知らない人は居ないかな」
「有名なのですねぇ、さすがですわ!」
エレンがすごい納得気な顔してるけど、わたしとしては何が流石なのかひっじょーにツッコミたいんだけど。いったいエレンの中でわたしはどういう人物像になってるのよ。
「まぁいいや、それじゃ何にしようかな~。お姉さん、新作ってまだある?」
「もちろんあるよ。今回は生地に栗を練りこんだ〝栗三昧クレープ〟と、イチゴを生地に練りこんだ〝イチゴ三昧クレープ〟、それと以前のミックスに新種のスイカを追加した〝超ミックスクレープ〟の3種類が新作だよ」
3種類かぁ、悩むなぁ。どれもおいしそうだから余計に悩んじゃう。
「僕は定番のチョコバナナクレープにしようかな」
「わたくしはその超ミックスクレープを」
ま、迷いがない、だと!? その潔さ、ちょっと見習いたいわ。
「んじゃアリサはイチゴ、わたしは栗で半分こにしよっか?」
「ですね!」
「はいよー。ほんとユキちゃんはアリサちゃんと仲いいねぇ。ちょっと前まではシエラ様以外とは」
「わーわーわーわー。お姉さん! そんなことはいいから、早く!」
やめて、二人ともそんな優しい目でわたしを見ないで! アリサは赤くなって照れてるし、誰かこの状況をどうにかしてー!
「はいおまちどおさま。クリームをこぼさないようにね」
「ありがとー。んじゃお金はいつも通りコレでお願いね」
そう言って端末にカードをかざす。ほんとこれ便利だよね~、銅貨とか取り出さなくていいんだもん。
「あれ? それってもしかしてクレジットカード? 驚いたな、この世界にもあるんだ」
「レイジは知ってますの?」
「うん、地球にもあったやつだね。僕は学生だったからクレジットカードは持ってなかったけど、別のカードは持っていたよ」
そういえばあったね。電車用のやつとか、コンビニ用のやつとか、いろいろだね。スマホでの支払いもあったなぁ、ちょっと懐かしいわ。
「これは冒険者ギルドで発行しているギルドカードだよ。この国だとギルドカードに口座情報も組み込めるから、こうやって専用端末があればコレで支払いができるんだ」
「便利ですわね。それがあれば細かい硬貨を持たなくて済むのでしょ?」
「そうだよ~。でも金貨や銀貨で支払った方がいい時もあるけどね。〝しちゅえーしょん〟は大事なのだよレイジ君」
「ちょ、なんで僕!? まぁ言いたいことはわかるよ。女の子をデートに誘っての支払いにあえて金貨で払って『釣りはいらないぜ』とかキザっぽく言うような場面だよね?」
「せいかーい!」
何となくレイジってそういうの疎そうだから、ついお節介したくなるわ。
いやまぁ前世のわたしもそうだけどさ。というか地球に居たときなんて……うん、悲しくなる気がするから忘れよう!
景色のいい噴水の見える席に座ってと。ほんとこの街、景色が良い所にこういう席があるからいいよね~。今日は少し混んでるけど。
「それじゃいっただきま~す、あむっ」
もぐもぐ
「おー、栗の生地は少し渋め、中の栗クリームは甘めになってる。甘すぎず渋すぎず、絶妙なバランスだわ」
「こっちのイチゴは逆に生地が甘めで、クリームの酸味を強くすることでバランスをとっていますよ」
「考えられてますのね。わたくし、このような食べ物初めてですわ」
「確かに絶妙だね、有名なのもわかるなぁ。っと、エレン様、はしゃいでるのは良いんだけど、クリームが鼻についてるよ」
うむうむ、どうやら二人にも好評みたい。やっぱりここのクレープは絶品だからねぇ、並んだ甲斐があったわ!
「はいお嬢様、どうぞ」
「ありがとー、んじゃはむっ。もぐもぐ、おーイチゴもおいしい! はいアリサもどーぞ」
「では失礼して、あむっ。もぐもぐ、なるほど、栗はちょっと大人向けですね」
「「……」」
あれ? なんか二人がじっと見てるんだけど、何だろ? ははーん、わかった。
「しょうがないなぁ、そんなに食べたいなら少し分け」
「違いますわ!」「違うから!」
おっと、二人して違うコールされたわ。おっかしいなぁ、てっきりそうだと思ったんだけど。
「でもじっと見てくるし?」
「そ、その、お二人とも、恥ずかしくないのですか? だ、だって、その、食べかけを互いにとか」
「子供とは言え、その、それっていわゆる、恋人同士がやるやつじゃないかな……」
「「……」」
言われてアリサとじっと見つめあったけど、そうなの? あら、アリサが赤くなったわ。相変わらず可愛いやつめ。
「ん~、特に考えないでいつもやってるからなぁ」
「い、いつもということは、何度もですの!?」
「これはもう、確定だね。レグラス王国のお姫様は進んでいるなぁ」
どうやら他人から見るとそう見えるわけね。子供だから気にしないでいたけど、まずかったかなぁ。
まぁいいや、仲が良いことは事実だからね! なので気にしない!




