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51話 貴族の屋敷にお邪魔します

 むー、ついにきてしまった。

 昨日はエレンとレイジとお食事したり、みんなとお風呂入ったりで充実してたんだけどなぁ。

 やだなー、ほんとやだなー。


「お嬢様、諦めてください」

「なんでわたしの心境が分かった!? さてはアリサ、ついに読心術が」

「思いっきり顔に出てますよ。大丈夫です、今日のお嬢様もすっごい可愛いですから」


 むぅ、感情が顔に出やすくて困るわ。これじゃポーカーフェイスでの駆け引きとか無理そう。


 それにしても、さすがにコレはやりすぎじゃないかなぁ。光り輝く高純度の精霊石を使ったイヤリングにネックレス、それにブレスレットとティアラってさぁ……。

 もちろんわたしだけでなく、お母様とお姉様も同じようなアクセサリーを身に着けるらしい。

 まぁ国力や財力、あとは精霊との親密さをアピールするためなのはわかる。その結果、他国じゃ絶対に真似できないとんでもない代物になってるけど。容赦ないというかなんというか……。


「あれ? ねぇアリサ、この精霊石って」

「先日サユリ様が六大精霊神様を召喚され、その場で生み出した物だそうですよ」

「やっぱりそうかぁ……。妙にわたしの魔石との相性がいいから、おかしいと思ったんだよね」


 半精霊の存在だからか、わたしの中にある魔石は精霊石との相性が非常に良い。精霊石があるだけで気が楽になったりもする。

 そんな精霊石の中でも特に相性がいいのは精霊神が作った精霊石なんだよね。


 しかもこれって火水風土光闇の精霊神、その全ての力を注ぎ込んで作ってるよねぇ。わたしが頼んでも作ってくれるけど、これは普段の何千倍もの精霊力を込めて作ってる。どんだけ気合入れたのよ……。

 それにこの純度だと、術装に近い強さを持ったアーティファクトが簡単に作れちゃうとんでもない精霊石になってる。うん、深く考えないで流されておこう。


「おや? アリサも同じイヤリング着けているんだね」

「はい。今回は私とシズク様もサユリ様から着けるよう指示がありまして」

「なーるほど、おそろいだね~」

「そ、そうですね」


 おー照れてる照れてる、可愛い奴め。

 やっぱいいなぁアリサのこういう反応、楽しくなっちゃう。





 お母様たちと合流し、そのまま馬車でお披露目のある屋敷に向かう。

 せっかくだし、今後を聞いておこうか。


「ねーねーお母様、着いたらわたしって何をすればいいんですか?」

「そうねぇ、向こうは挨拶回りが済んでからユキちゃんに決闘を申し込むはずだから、それまでは自由にしていて大丈夫よ」


 決闘は確実なのね。面倒だけどしょうがない、諦めて覚悟を決めよう。


「ただ、私とシエラちゃん、それに付き添うリョウ君とシズクはこの国の偉い人たちとお話するから、しばらくはアリサちゃんと二人きりかしら」

「危なくなったらお姉ちゃんが絶対に助けるからね!」


 そう言ってお姉様に抱かれるわたし。うれしいんだけど、ちょっと照れます。

 でもそっかぁ、お母様とお姉様は武器を使わない戦場に向かうわけだね。偉い人ってほんと大変だねぇ。


「ユキちゃん、今お姉ちゃんたちが大変だなぁって思ったでしょ?」

「な、なぜわかったのです!? まさかお姉様、読心術が」

「それはお姉ちゃんだからです! お姉ちゃんは妹の事なんて全部お見通しなのです!」

「な、なんだってー」


 割と冗談抜きで全部見抜かれてるから、本当にそういう能力があるんじゃないかと思ってきてる。エルフには神秘の力があるとかそんな感じに。


「話を戻すけどね、ユキちゃんもいつかはこうなる可能性があるの」

「いつか、ですか?」

「そうだよ~。ユキちゃんの周りにいる人たちみんなが居なくなる、もしくは引退したらユキちゃんの番だよ」


 居なくなるって、それって、つまりは……


「……ヤダ、絶対にヤダ」

「そ、そんな泣きそうな顔しないで。そうなる可能性はすっごい低い、ううん、絶対に無いから安心して、ね?」

「……うん」


 落ち込み過ぎて、お姉様だけでなくみんなに慰めてもらう状態になっちゃった。

 ……はぁ、なんですかこの豆腐メンタルの情けないわたしは。みんな居なくなるのをちょっと想像しただけですごく不安になり、今にも泣きそうになるとか。ありえないくらい弱すぎでしょ、異常すぎでしょ。


 ほんと異常だし、やっぱり前世の自分を再構築して問いただした方がいいかなぁ。前世の何かを引きずっている可能性が高そうだし。

 だけど覚えている限り、前世のわたしってここまで脆くなかった。キャラを作ってちょっと痛い人になってたという黒歴史はあるけど……。

 となるとこの脆さは前世の性格ではない、何か別の要因になる。わたしの知らない、いや、覚えていないトラウマでもあったのかもしれないね、


 まぁ再構築する方法も手段も皆目見当がつかない状態だけど、もし原因が前世ならしっかりケジメをつけないと。





 そんな豆腐メンタルのわたしがみんなに思いっきり甘えていたら、ついに目的の屋敷に到着してしまった。


「大丈夫? まだ不安だったりしない?」

「えっと、うん、大丈夫みたいです。ありがとうございま~す」


 さっきまで自分でもわかるくらい酷かったからなぁ、お母様が心配するのも無理ないね。

 でも大丈夫、情けないけどいっぱい甘えたので、今はだいぶ落ち着いたから。それにいつまでもウジウジしてるとか、わたしらしくないもんね!


「う~ん、ちょっと無理してるかしら? でもそうね、ユキちゃんの頑張りを無駄にしたくないし、それじゃ行きましょうか」


 心配かけ過ぎててちょっと申し訳ない気分。いつかはこんなヨワヨワ状態にならない日が来るのかなぁ、一生このままな気もするけど……。





 お母様とお姉様に手を繋いでもらいながら、屋敷の入口にある受付へ向かう。

 ふむふむ、どうやら受付で出席者のチェックをした後、案内係の人が先導してくれるみたいだね。

 確かにこの貴族さんの屋敷、うちほどじゃないけど結構広そうだもんね。案内無しだと迷いそうだわ。


 案内されて今度は会場に入る。

 トラブルが発生する可能性もあったけど、何もなくて一安心。まぁ視線がめっちゃ多くてなんか嫌だったけど。


 会場にはすでに多くの人が居た。貴族っぽい感じの人とか騎士っぽい人とか、ほんといろいろだね。

 それにいろんな国から来ているみたい。見たことのない民族衣装を着てる人もいて、ちょっと楽しい。


 おかげでちょっとわかったけど、お披露目って国内外問わず多くの人を集めて大々的にやるんだね。わたしはお披露目とかしなくて良いらしいからよかったなぁ。だって知らない人いっぱいとか嫌だもん。


「それじゃユキちゃん、お姉ちゃんたちはこの国の偉い人たちと少しお話してくるから、しばらくアリサちゃんと二人でいてね~」

「は~い。二人でご飯とか食べて待っていますね」

「おねがいね~。ではサユリ様、リョウ様、シズクさん、行きましょうか」


 そう言ってみんなは貴族とかが居る方に行っちゃった。むぅ、ちょっとだけ寂しい。

 でも大丈夫、わたしにはアリサがいるから! だけどちょっと寂しいのは事実なので、とりあえず抱き着いておこう。ぎゅーっと。


「あ、あの、お嬢様!?」

「ちょっとだけお願い、ね」

「えっと、私は構わないのですけど、その、もうちょっと向こうに行きましょうか。ここだと人が多いですし」

「うん、ありがと」


 情けないけど、ほんと情けないけど、しょうがないよね。みんなの優しさにほんと感謝だよ。





「ほんと貴族様が多いですねぇ。あらお嬢様、口の周りに少しソースが付いていますよ。ちょっとそのままで……はい、綺麗になりました」

「ありがと~。ねーねー、わたしって食べるの下手なのかな? いっつもアリサに拭いてもらってる気がするよ」

「そんなことはありませんよ。ただ、どうしてもお嬢様を綺麗なお姿のままにしたくなって、つい過剰に」


 落ち着いたのでアリサと一緒に食べまわっていたけど、なるほどね。まぁ綺麗なままでいるのは良い事だし、アリサも好きでやってるからいいかな? ちょっとだけ恥ずかしいけど。


「それにしてもここのご飯、すっごい美味しいって物じゃないね。不味くはないけど、いろいろと微妙」

「確かにそうですね。普段お屋敷で食べている物と比較すると、こちらの料理は何か物足りないというか」

「だねぇ。でも街の屋台のご飯はすっごく美味しかったよ。もしかしたら貴族用がイマイチなだけかもしれないね」


 まぁここにある料理より、屋台にあるようなジャンクフードの方が美味しいのがなんともいえないけど。


 そもそもこの料理たち、見た目は綺麗なんだけどなんとなく冷たい感じがする。美味しさよりも見た目を重視した影響なのかな?

 でも立食形式でバイキングみたいな感じなのは良かった。色々食べてまわれるから、当たりを探す旅に出れるし。


「そういえばさっきからチラチラ見てる人が多いけど、なんでかわかる?」

「その方たちはレグラス以外の貴族様ですね。しかも子を持つ当主と、家督を継ぐ予定の息子や娘たちになりますね」

「へ? それってつまり?」

「簡単に言うなら、お嬢様をお嫁様として迎えたい連中です」


 身も蓋もないことをズバッというね。しかもアリサ、こっちを見てくる貴族を思いっきり睨んでるし。

 う~ん、このままだとちょっと危ないかなぁ……そうだ!


「お、お嬢様、急に抱きついてどうしたのですか?」

「問題が起きそうな気がしたからその対策だよー。それにこうすれば、何となくわたしはアリサの物だって思われないかな?」

「あ、あの、えっと、その、はい……」


 照れちゃって、ほんと可愛いなぁ。

 しっかしこんな席でもそういう輩って結構いるんだねぇ、こういう席だからこそかな? まだ5歳なのにこんなだと、先がほんと思いやられるわ。

もしも黒歴史な前世と今世が共闘したら


今世「ゴブリンはっけーん。サクッと術で倒そうか」

前世「いいだろう、私の魔法により終焉を与えようではないか」

今世「はい?」

前世「刮目せよ!我に秘められし大いなる闇の力を! 覚悟するがいい冥府より来たり鬼の眷属よ!」

今世「そんな意気込まなくても。というか敵はただのゴブリンなんですけど……」

前世「深淵より生まれし破壊の炎よ、我に仇なす敵を焼き尽くせ! 喰らうがいい、深淵爆炎弾ファイアーボール!!」

今世「まって、そんな詠唱なくても発動できるよね? しかもその魔法に深淵は要らないよね?」

前世「だがカッコいいだろ?」

今世「恥ずかしいだけだから!」


だいたいこんな感じです(前世は役のため中二全開、今世はその反動がすごい)

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