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50話 本心を聞き出してみましょー

少し長いです(4000文字をちょっとだけ超えてます)

それと今回はちょっとだけシリアスというか真面目っぽい内容になります

 まさか学生勇者君、もといレイジと一緒にたこ焼き食べることになるとはね。

 どうしても前世の最後がよみがえってきて、ちょっと警戒しちゃうけど。


 ほんと情けないなぁ。勇者に対してざーこざーことか言ってたのに、過去に関わってるだけでこんなになるとか。

 このままじゃだめだね、気持ちを切り替えないと。


「へぇ、日本のたこ焼きとほとんど同じだね。こっちのほうが美味しいかも」

「あらレイジ、その〝ニホン〟というところにも同じ物があったのです?」

「そうだよ。というよりもこれ、たぶん転生者がこの世界で広めたね」


 おや? レイジってジョイスが居なければエレンと気軽に話すんだね。

 ひょっとして、はは~ん、なるほどなるほど。それでジョイスはしつこいわけだね、納得だよ。


「ねーねー、エレンとレイジっていつからの付き合いなの? 何となくエレンはわたしと同い年くらいに見えるから、そこまで長い付き合いとは思えないけど」

「わたくしは今年で6歳ですわ。レイジは8歳ですわね」

「そうだね。どういう訳か僕、この世界に召喚されたときに若返っちゃってね」

「へー、エレンは私の1歳上なんだね。というかレイジって転生者なの?」


 あくまでも知らない人の振りだよわたし。

 というか8歳ってアリサと同じかぁ。でもアリサよりも年上に見えるね、男の人だと成長が早いのかな?


「そうだよ。2年前かな、そこで召喚されてね。僕は〝地球の日本〟という所から召喚されたんだけど、ちょっと複雑なんだ」

「複雑って? エレンは知ってるの?」

「もちろん何でも知っていますわ!」


 これはただならぬ関係っぽいね! これじゃわたしはお邪魔虫かもですね~。


「実はこの世界に来る前、別の世界でも召喚されてね。何の因果かそこで勇者として戦っていたんだ」

「へ、へぇ、そうなんだ」


 おっと、急展開な発言で動揺するなわたし。

 わたしが前世のアレだって知られたら、何となくまずい気がするようなしないような、って、しっかりするんだよ。


「あの世界では色々あってね。馬鹿な事していたなって思うことが多いんだ」

「どういうこと? ちょっと話してみて」

「えっと、僕が召喚された世界は〝完全人間主義〟って言って、只人以外は認めないって世界だったんだよ。完全人間は只人の事、獣人とかは獣の特徴があるから不完全人間という、ほんと胸糞悪い言葉を使った主義なんだ」


 ……うん、よく知っているわ。

 でもなんだろ、レイジの顔を見るとすごく後悔しているように見える。真剣な顔だし、これは茶化したりできない雰囲気。


「人として見ないどころか、君たちのような獣人やエルフとかは魔物扱いでね。僕も実際に何度も戦った、それが正しい事だと思っていた。だけど」

「だけど?」

「ある砦でね、僕と同じ日本人の青年と戦うことになったんだ。驚いたことに彼は人間じゃなく、獣人やエルフたちを守る側だったんだ。当然混乱したよ。だってあの時の僕からしたら、魔物を守る側に立っているように見えたからね」


 ……それって思いっきり前世のわたしじゃん! 戦闘の細かい内容とかはボンヤリとしか思い出せないけど、勇者4人と戦ったのはハッキリ覚えてるわ。


「戦ってる時に彼が僕たちの事を〝人間のみ守る戦闘兵器〟って言ってきてね。その時はよくわからなかったけど、あとになってわかった。僕たちは正義の味方なんかじゃなく、ただの殺戮者だったって」


 言ったっけ? 覚えてないのか思い出せないのか、わかんないなぁ。


「その戦いの後、気になって色々と調べたんだ。〝戦闘兵器〟って言われた意味と、彼が獣人やエルフたちを守るきっかけをね。そしたら元は争いもなく平和な世界だったのに、人間の王が全てを破壊したという真相にたどり着いてね」


 うん、それは何となく覚えてるわ。

 わたしも召喚されたとき、エルフの長老から昔話として聞いた。その結果、わたしは只人と戦うことを選んだわけだけど。

 おそらくレイジも只人側の資料でなく、エルフが残した文献を見たんだろうね。


「欲望のために他種族を生贄にし、用が済んだら駆逐とか、吐き気がする内容だった。でも知るのが遅すぎた。あの世界はすでに只人以外の種族は絶滅した後、一部の者は転移門で異世界に転移できたみたいだけど」


 後悔が強いのか、少し暗い感じでレイジが話してくれてる。

 でもそっか、絶滅しちゃったのかぁ。わたしが死んだ後、完全に滅ぼされちゃったわけね。予想はしていたけど、ちょっと悲しい。


「でも、もしかしたら生き残りがいるんじゃないかって思って、僕は旅に出たんだ。会って話がしたい、真実を聞きたい、その為にね」

「旅に出るとか、結構すごいことしてるね。旅に付き合う人も大変だったんじゃないの?」

「それが僕の行動は誰にも受け入れられなくて、仲間だった他の勇者にすら否定されたんだ」


 確かにあの世界、只人以外は魔物という認識が当然って感じだったわ。

 ふーむ、共感する人が誰もいなかったことを思い出したのか、何となく寂しそうな顔してる。もしかして……


「一人で探してたの?」

「そうだよ。あてもなく何年も探していたんだ。そんなことをしていたある日、足元に召喚陣が急に現れてね。避けることもできず光に飲み込まれ、気が付いたらこの世界に召喚されていたんだ」


 なるほどねぇ。あの世界に召喚されたときと同じ様なことが起こったわけね。

 あれ? つまりレイジは日本からあの世界に召喚、そしたら今度はこの世界に召喚という2連続なわけですか。まぁわたしも同じようなものだけど。


「召喚されて最初に驚いたのは、自分の体の変化だったね。この世界だと1年が48ヶ月なんだけど、僕が居た世界はどちらも1年が12ヶ月というとても短い物だったんだ」


 そういえばあの世界、どういうわけか時間の流れが地球と完全に同じだったね。それともこの世界が異常なだけなのかな?


「時間の違いが影響したのか、歳が一気に若返っちゃったみたいでさ。元は24歳なんだけど、こっちに来た時に6歳になってしまったんだ」

「ということは、仮にほかの人も召喚されたらみんな若返るわけ?」


 すっごい気になる。だって24歳が6歳ってことは、歳が4分の1になるってことでしょ? ということは、もしも3歳児が召喚されたら、とか考えちゃう。

 おっと、レイジが少し苦笑いしてるんだけど、これは何かあったな。


「実は僕だけなんだ。これは前の世界でも僕が勇者だったことのせいだね。この世界の勇者は〝只人族の勇者種〟って感じなのは知っていると思うけど、前の世界では勇者っていう種族になっていてね。そのせいでこの世界だと僕は〝勇者族の勇者種〟というよくわからない存在になっちゃったんだ」

「なにその〝男の中の男〟みたいなの」


 特別感あるけど、謎な生物になった感の方が強いね。


「ほんとそんな感じなんだ。若返りも謎だけど、僕は他の只人族と違って天魔人に進化できないんだ。代わりに勇者として覚醒していくことで強くなれるようで、今では天魔人と同じ力は持っているかな」


 え? つまりなに? もしかしてレイジってあの時よりもずっと強くなるの? これはちょっと予想外、それと同時にちょっとした危機感。

 おそらくレイジのような者が召喚されたら強くなるってことだよね。味方ならいいけど、敵も強くなるのは厄介だなぁ。


 まぁ話から察するに、レイジはわたしたち獣人とかエルフとか、只人以外の種族と敵対する気はなさそうだね。





「そうそう、召喚したのがお嬢様の家の方でね。異世界で勇者ではなく従者として召喚されました、というのもなかなか面白いよね」

「なのですわ。このレイジは2年前からわたくしの従者として勤めていますの」

「なるほどねぇ。意地悪いこと聞くけど、レイジって只人以外を敵とみなし、戦って滅ぼそうって気はあるの?」


 敵にはならないと思うけど一応ね。本心を聞いてみないと安心できないもの。

 おっとエレンも真剣な目でレイジを見てる。エレンはわたしたち獣人や妖人とも仲良くしたい、って気持ちがあるからだね。


「前の世界の事を言ったとおり、僕は獣人やエルフ、ドワーフとも戦った。それが許されないことはわかっている。だからこそ誓うんだ、この世界では獣人やエルフたちと敵対する只人が現れたら、僕は率先して只人と戦うって。それで僕が戦った人たちが許してくれるとは思わない。身勝手なのもわかっている。それでも僕はこの道を進みたいんだ」


 すごく真面目な顔をして答えてくれた。嘘偽りのない本心みたいだね。


「それがレイジの理想の勇者像ってとこかな? 種族関係なく弱い人を守る、みたいな」

「そうだね。まだまだ僕も弱いから大口叩けないけどさ。強くなるために訓練はしているけど、ほんとこの世界の強者はレベルが高すぎてまいっちゃうよ」


 そう言いながら、えらい活き活きとした笑顔するね。

 んー、思っていたより良い奴なのかも? 力に溺れず向上心もあるし。なるほど、これがエレンのアレなわけですね~、ニヤニヤ。





「とまぁ長くなったけど、僕はそんな感じだよ」

「なーるほどなるほど。なかなか興味深いお話ありがとー」

「どういたしまして。ただお願いなんだけど、あまりこの話は他の人に言わないでもらえるかな。獣人やエルフの人とかに誤解されたくないからさ」


 他種族と仲良くしていきたいんだね、わかるよわかるよ~。

 でもエレンが居るのに、他種族の女の子まで狙うのはどうなのかな~? 修羅場になっても知りませんよー。


「ほーい。それじゃ気持ちを切り替えて、次の料理を物色しようか」

「ですわね。せっかくですし、今度はレイジ、あなたのお勧めをお願いしますわ!」

「おもしろそう。んじゃお食事券渡すからなんか貰ってきてね~」

「了解ですよ。お嬢様の食べたことのないジャンクな物、探してくるよ」


 本心を聞けて最初にあった不安とかが無くなったのか、わたしもすっきりした感じ。敵だった相手が仲間になるときの気持ちってこんな感じなのかな?

 んーむ、できることなら他の勇者もレイジみたいならいいんだけど、そんな都合のいい展開はないだろうなぁ。

レイジ君は良い勇者枠です

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