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49話 たこ焼きトラブル

 エレンたちと一緒に屋台を回ることになったけど、どうやらエレンは街に出たことがほとんどなかったみたいね。

 何となくそれって軟禁に近い気がするんだけど、大丈夫なのかな?


 それにしてもお嬢様が二人、しかも高そうなドレス姿で屋台巡るとかなかなかだね。でもでも、他にも貴族がいるから目立たない……ハズ。


「ところで、ユキさんに一つ聞きたいことがありますわ」

「な~に?」

「そのドレスはどちらで作られたのです? すごい手の込んだ物のようですし」


 次の屋台に向かって一緒に歩いていたら気になったのかな? まじまじと見られるとちょっと恥ずかしい。


「これはうちのメイドさんが作ってくれたんだよ。わたしとしてはちょっと動きにくいのと、普段こういう格好じゃないから違和感あるけど」

「そうなのですね。その様なドレスを作られるなんて、相当腕のある方ですわね」

「そうかも。デザインをメイド長が考えたんだけど、デザイン通りに作ったのはわたしの専属メイドなの。すごい良い子なんだよ~」

「専属の方もいるのですか。ちょっと羨ましいですわ」


 お嬢様って専属が付くのが当たり前だと思ってたけど、違うのかな? というかこの従者二人が専属じゃないのかなぁ。


「エレンって専属の人とかいないの?」

「いるのですけど、その、わたくしの場合は彼らなので」

「あー、つまりメイドさんのほうが良かったわけだね」

「ですわ。だって彼らの選ぶ服、いつも実用的な物ばかりで可愛くないですの」


 すっごい納得。わたしも前世では実用面重視していたわ。

 これは男女関係なく、無意識のうちに戦闘でのことを考えちゃうからだけど、彼らはそういうタイプってことだね。まぁ可愛い格好でも慣れたら戦えるけど。


 でもおかしいな。うちはお母様が率先してわたしを着飾るけど、エレンのお母さんはそういうことしない人なのかな? ひょっとして親子仲悪いのかな?

 だけどいきなり深いところ聞くのは失礼だしなぁ。今はやめておいて、仲良くなったら聞いてみようかな。





 エレンと話しながら歩くこと数分、お目当ての屋台に到着。

 それでは見せてもらいましょうか、アルネイア王国屋台の実力を。


「ねーねーおにーさん、これ使えますか?」

「いらっしゃい。お食事券だね、もちろん使えるよ。好きなのを選んでくれるかな」


 ここでもちゃんと使えるね、よかったよかった。使えないお店もあるらしいから、ちゃんと確認しないと。

 さてさて、どれにしようかな~。定番も良いけど変わり種も試してみたい、でもエレンもいるからそうだなぁ。


「それじゃおにーさん、この〝絶品! ふわとろたこ焼き〟の数が一番多いのください」

「まいどあり~。ちょっと数が多いけど、お嬢さん一人じゃなさそうだから大丈夫かな」


 そう言って目の前で焼いてくれるおにーさん。

 おー、タコが大きい! ほかはネギと紅生姜に天かすだね。定番の構成だから間違いなさそう。回すのも上手だし、期待できるなぁ。


 焼きあがったら大きい舟皿に盛りつけ、最後にソースにマヨネーズ、青のりと鰹節と完璧だわ。


「お待ちどおさま。熱いので気を付けてね」

「ありがとー。んじゃエレン、あっちで食べるよー」

「わかりましたわ。それにしてもほんと珍しい作り方でしたわ」


 確かにちょっと珍しいかもね。鉄板で焼くのではなく、わざわざ専用の金型で丸くなるように作るんだから。

 それにしてもこの世界、たこ焼きどころか専用ソースにマヨネーズ、紅生姜に鰹節まで普通にあるとかね。ほんと昔の転生者さん頑張りすぎでしょ、後発の転生者さんたちが絶対泣いてるよ。





 少し混んでいるけど、席が空いていてよかったわ。

 そして目の前にはおいしそうなたこ焼きが60個も! 素晴らしい光景です。


「それじゃ食べましょー。いっただきまーす、あむっ」


 おー、熱々ふわふわで中がとろとろ、幸せすぎる。タコも大きいのに硬くないし、ソースも適度な甘さ、マヨも油っぽくない。

 何よりこの生地自体がおいしい。生地に魚介系のだしを使っているのはわかるけど、なにを使っているんだろ? 色々な魚を混ぜているみたいで深いわ。


「これを一口で食べるのです?」

「もぐもぐん。そうだよ~。熱いから気を付けないとダメだけどね」


 エレンってばたこ焼きをじっと見つめてるね。見たことのない料理だから一口でいくのを躊躇してるのかな? しょうがないなぁ。


「はいエレン、あ~ん」

「あら、では失礼して、はむっ」


 たこ焼きをエレンに食べさせてあげたけど、熱いの大丈夫かな? ふーふーすべきだったかな?

 そういえば一番最初にアリサに会った時もこんなことしてたっけ。そんなに経っていないのにちょっと懐かしいわ。


「もぐもぐ。これは、熱いけどおいしいですわ!」

「たこ焼きは熱々だからこそってのもあるからね。あとは変わり種で中にチーズ入れたのとか、ソースじゃなく大根おろしとポン酢で食べるのもおいしいよ~」

「まぁ! それはそれでおいしそうですわ」


 おいしい物に興味津々って顔してるねぇ、わたしもなるからすごい親近感。

 変わり種といえば、うちの国だと魔物のお肉とか使ったのもあったっけ。タコじゃないけどあれはあれで美味しかったなぁ。


「それじゃ冷めないうちにどんどん食べ」

「きっさまぁぁぁぁぁぁぁ! さっきから黙っていれば、お嬢様に変な物を食べさせやがって!」


 はぁ、またこのジョイスっていうバカが怒ってきたよ。おいしいな~って気分が壊れるんですけどー。


「ねぇエレン、あなたの従者がまたうるさいんだけど」

「ごめんなさいですわ。ジョイス、いいかげんにしなさい! わたくしはユキさんと楽しくお食事をしているのに、邪魔をするのですか!」

「し、しかし、このような場所で毒見も無しなど、お嬢様の身にもしものことがあれば」


 あー、うん、一理あるね。


 去年のあの騒動以来、わたしは家の中などの本当に安全な場所以外だと毒や麻痺、睡魔や幻覚などすべての状態異常に対する耐性強化の術を常時発動させてる。さらにお母様から貰ったアーティファクトでも同じ耐性効果を発動させる徹底ぶり。

 だから毒とか全然気にしないで済むんだけど、普通はそうはいかないからねぇ。


 もっとも、毒が含まれているかはすぐに気が付くから、エレンが毒入りを食べるってことはまずない。だけどそれは伝えていないからなぁ、ここはちょっと反省だね。


「あーえっと、その毒見はわたしが先に食べていて、毒が無いのはわかってるから気にしないでいいと思うよ。作るところもちゃんと見てるしね」

「信用できるか! 獣人の味覚や嗅覚ではわからない物もあるかもしれないだろ!」


 むっ、予想通りこいつってわたしたち獣人を下に見てるのかしら。

 こういう只人って獣人や妖人は下に見ていて、エルフやドワーフは上に見るんだよね。正直気に食わない。


「なんてことを言うのですか! 今すぐユキさんに謝りなさい!」


 エレンが怒りながら思いっきり机をたたいたよ。バンッ! って大きな音もしたから、そうとうだね。ひょっとして、わたしよりも怒ってる感じ?


「で、ですがお嬢様」

「くどいです! もういいですわ、あなたは先に屋敷へ戻りなさい! これは命令です!」

「お、お嬢様!?」

「さっさと行きなさい! 聞こえなかったのですか!」


 わー、すっごいことになっちゃった。

 エレンはカンカンに怒って、ジョイスはすっごい青ざめた顔してる。さすがにちょっとだけ同情しちゃうかな、一応正しいことも言ってはいたから。





「わたくしの従者が失礼なことを言って、申し訳ございませんでした」


 そう言ってエレンは深々と頭を下げてきたんだけど、ちょっと目立つよー。


「あーうん、わかったからとりあえず頭あげて? ほら、周りの人が見てるから」

「わかりましたわ。でも本当に申し訳ありません。それに、わたくしはあのような事これっぽっちも思っていません。そこはどうか信じてくださいまし」

「う、うん、わかったから、その、ちょっと近い」


 ずいっと顔を正面から寄せてこられるとね、わたしもちょっと恥ずかしい。なかなか慣れないからね、こういうの。慣れる意味がそもそもあるかって気もするけど。


「でもいいの? あの従者を先に帰らせても」

「大丈夫ですわ。なによりレイジもいるので問題ないですわ。それにジョイスは正直、ちょっと……」

「何か含んでるみたいだねぇ。まぁそれはいいとして、冷めないうちにどんどん食べるよー」


 少し気にはなるけど、聞いていいのかちょっとわからない。こういうときは流しておくに限ります。

 なにより、せっかくの熱々たこ焼きが冷めたらもったいない。いくら術式で熱さ戻せるからって、それはちょっと違うと思うんだよねぇ。


「そうですわね。せっかくなのでレイジ、あなたもこっちに来て一緒に食べませんこと? ジョイスが居ないから大丈夫でしょ?」

「たしかに、それじゃせっかくなので」


 ほほー、これはチャンスかな。レイジがわたしにとって敵となるのか、じっくり見てあげましょー。

 でも一番はこのたこ焼きをおいしく食べることだけど。

補足:

後続の転生or転移者が泣きたくなるのは

 マヨネーズを広めて大金もち! → すでに広まっているので無理

 ならば日本の料理を広めて → すでに広まって(ry

 なら地球の道具を広めて → すでに(ry

という、お約束が通用しないハードモードな世界に見えるので。

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