表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~  作者: 壱弐参
第三部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

632/917

その629 武闘大会1

第三部の開始です。引き続きよろしくお願いいたします。

2021/9/3 本日一回目の投稿です。ご注意ください。

「へぇ、新調したのかい?」


 出発前、俺は双黒の賢者プリシラの下までやって来ていた。


「ロレッソがわざわざ用意したみたいで。【開会の儀】でお披露目予定なんですがどうです?」


 新調した冒険者用の衣装は、吸血鬼らしく鮮血をイメージして仕立てられたそうだ。

 炎の戦士風と言ってくれれば、もっとイメージがいいのに、何故魔族寄りになってしまうのか。俺はそれが疑問でならない。


「うん、とても凜々しいね。私が死ぬ時は手を握ってくれるといい」


 そう言ったプリシラの笑顔はどことなく元気がないように見えた。

 プリシラがここに来てから数ヶ月。日に日にやつれていくプリシラに、担当メイドのコリンも辛そうである。


「……あと二週間ってところかな」

「え、三週間じゃなく?」


 最近のプリシラは、自分の寿命をジョークに使う。

 とても厄介なジョークだが、それを真に受けてしまうと空気がぶっ壊れてしまう。

 仕方ないので、俺はそれに付き合う訳だ。

 まぁ、プリシラも俺の前だけでしか言わないけどな。


「三週間……いや、難しいだろうね」


 だが、今回はマジっぽい。

 後方で控えるコリンの緊張がよく伝わってくる。


「では、弟子のお二人に都合をつけてもらいますか」

「呼ぶのかい?」

貴方(あなた)が断ったとしても呼ぶつもりですよ」

「はははは、それじゃ断れないね」


 嬉しそうに笑ったプリシラは、最後に言った。


「……武闘大会から戻って来たら、約束を果たそうじゃないか」

「約束?」

「初めて出会った時、キミが私に聞いただろう? 『まったく、どこで調べてるんだか……』って」

「あー……そういえば言いましたね」

「そして私はこう言った。『死ぬ前までには教えてあげるよ』と」


 そうだったそうだった。

 あの時、プリシラは俺が秘匿としていた【聖加護】を使える事を知っている様子だった。何故、プリシラは俺の秘密を知っていたのか、どう知り得たのか。それは俺が一番気にしている事だった。

 武闘大会の後、それを教えてくれるというのか。

 という事は、冗談抜きでプリシラの余命はもう僅か。

 出来れば存命中にプリシラの願いを叶えてやりたかったところだが、どうもそういう訳にはいかないらしい。


「わかりました。では、お土産のリクエストを聞いたら出発します」

「そうだな……あぁ、最近ミケラルド商店で勇者人形と聖女人形以外にも色々売りに出してるって聞いて気になってたんだ」

「本店が目と鼻の先にあるっていうのに、ミケラルド商店でお土産ですか……」

「実は私、歩けないんだよ」

「また突っ込みづらい事を……」

「それを引き出したのはキミさ」


 ウィンクして言ったプリシラは小悪魔的に微笑んでいた。

 相変わらず賢者である。有無を言わせぬ言い回しは是非とも学びたいところだ。


「では、何の人形をご所望で?」

「【ミケラルド・オード・ミナジリ正装バージョン(青年)】で頼むよ」


 カミナが悪ふざけで造ったやつか。


「その情報、どこから漏れたので?」

「クロード新聞」


 くそ、目を通してやがったか。


「リ、リィたんの水龍バージョンとかオススメですよ?」

「ついでに【ミケラルド・オード・ミナジリ寝間着バージョン(少年)】を頼むよ」


 カミナが目を輝かせながら造ったやつか。

 俺が却下しても多数決で製作認可が下りちゃうんだよなぁ……。

 ここは俺が堪えるしかない、か。



「お、呑み込んだね?」

「えぇ、何か言えば更に注文が増えそうで」

「よく私をわかってるじゃないか」

「はぁ……それじゃあ行ってきます。コリン、留守をよろしくね」

「はいっ! 行ってらっしゃいませ、ミケラルド様!」


 扉を出る際、俺とプリシラは一瞬視線を交わした。

 彼女が一体何を考えていたのかはわからない。だが、これだけはわかった。

 彼女の命はもう……――。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 今年の武闘大会は法王国で開催され、戦士部門と魔法使い部門が分かれている。

 我がオリハルコンズのパーティメンバーの多くがこれに参加する。

 戦士部門にはラッツ、ハン、クレア。

 魔法使い部門にはアリス、キッカ。

 聖騎士学校にいる生徒の内、冒険者組から別に何人か参加するようで、聖騎士学校の連中も応援にやって来ている。

 戦闘に携わる事から、校外学習扱いである。

 観客席にはファーラ、ゲラルド、メアリィ、レミリアもいる。

 当然、ナタリーとリィたんも観戦に来ている。

 昨年、俺はリプトゥア国で開催された武闘大会に参加していたが、今年はそうではない。

 控え室でお茶を呑む俺の隣では、齧歯類系の美少女ネムが、ソワソワしながら周囲を見渡している。

 声を掛けたら「ひゃいっ!?」とか驚いてくれそうだ。


「ネム」

「ひゃいっ!?」

「もう少し捻りをだな……あいや、もう少し落ち着いたらどうだ?」

「こ、これが落ち着いていられますかっ。ま、まさか【開会の儀】のゲストとして、私の担当冒険者が選ばれるなんて思わないじゃないですか……!」


 SSS(トリプル)冒険者として、昨年の優勝者に胸を貸す。

 それが開会の儀の趣旨ではあるが、昨年の優勝者であるリィたんはこれを辞退し、次点の俺は、そのSSS(トリプル)冒険者としてここに呼ばれている。

 控え室に響くノック音。


「ひゃいっ!?」


 捻りのない返事をしたネムが慌てて扉を開ける。


「おはようございます、ミケラルドさんっ!」


 そう、俺が胸を貸す相手は、SS(ダブル)にまで成長した勇者エメリーなのだ。

次回:「その630 武闘大会2」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ