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【第4面】 (4)

 *

 

 私は、『ゲーム』での独特な位置に居た。それが判ったのは、敵と出遭った時だ。

 敵はなぜか私を攻撃しなかった。試しにこちらから攻撃してみると、攻撃できた。それでも敵側の反撃は無かった。他のどの敵にも当て嵌まった。

 敵は私を認識していないのである。しかし、私からは認識しているのだ。

 ゲームオーバーにより、ゲーム上、消えたデータとして扱われているのだろう。しかし私は『ゲーム』内で動けた。透明人間のような位相だった。

 セカイを歩き、『ゲーム』の特徴を拾い集める期間が、延々続いた。

 苦痛ではなかった。『ゲーム』の中を解き明かす作業は地味だが楽しかった。一見関連のない些事が雑然と集まるだけにも見えたが、ある時になると明快な見通しが開けた。それが何度も続いた。『ゲーム』の景色が、段々と単純なものに見えはじめた。単純だからといって、つまらなくはない。むしろ、前よりも美しく、確実なものとして感じられた。もちろん、『ゲーム』全部を解き明かしたなどと、心にもないことを言うつもりはない。しかし、全部を解き明かさずとも、全景をほぼ確実に言い当てることは可能なのだ。たとえば、黒いピース、青いピース、緑のピース、その他何色かのピースが手元にあれば、自分の作るパズルが「宇宙に浮かぶ地球」だと推測できるかのように。今までに無かった達成感だった。

 そして、学習期間の集大成となる成果を、私は手に入れた。

 セカイ内の移動がすみやかにできるようになったのだ。『ゲーム』セカイのどこにでも、念じるだけで一瞬で行けるようになった。

 私がしたのは、まず、ユイが残した攻略本の徹底的な読み込みだ。前半部分しか無かったが、そこに断片的に載っていた各地の地図を全て頭に入れた。洞窟・塔・町・村・都市・平原・山地・毒やバリアなどの特殊区域等々。すべての配置を連関的に覚えた。そして、これら「セカイの半分」の情報に、私がフィールドを歩いた情報を加え、残り半分を画定した。情報が皆無の地域もあったが、それは周辺情報から類推できた。パズルで言うと、周囲のピースから、欠けているピースを類推する作業だ。こうして私は、地図の断片から完全なデータ量を一応は復元し、頭の中で繋ぎ、一枚の巨大なセカイ地図を作った。もっともこれはセカイの材質にイレギュラーが無かったからできたことだ。パズルの欠けたピースが立体や液体だったら、組み合わせは理解不能となり、お手上げになったところだ。私は、平原や町や洞窟などのデータには、ある共通性と等質性があることを知っていた。セカイを巡るうちに知った法則の一つだ。

 私は、攻略本にある場所なら、セカイのどこであっても、正確に思い浮かべることができた。そうして、ある時、頭に入っている場所であれば思うだけで移動できるようになった。こうして、特別な道具や移動呪文を必要とせず、魔王城に行ける準備が整った。

 私は、今までは感じなかった、ある特異な空気をセカイに感じ始めた。

 それは、「私の目の前のものは、私の内側にも同時に存在する」という感覚だ。

 なんというか、セカイが劇的にコンパクトになったような感じである。いや、私が「拡大した」感じだとも言える。

 私は、セカイの存在・空間・時間というものに、ある程度以上に、力を及ぼせるようになっていた。

 以前の私なら、驚いたかもしれない。

 しか

 しすでに、それをできることに慣れていたから、何の驚きも不思議も込み上げなかった。

 これを技術的に言うと、『ゲーム』を構成しているプログラムに入り込み、ある方向性を持たせるという事かもしれない。

 私は、ゲームプレイヤーというより、プログラマーのほうに近付いている自分を感じた。

 

 魔王城に行くべき時がきたようだ。

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