【第2面】 (5)
「現実」の風景が広がっていた。
大学から駅へと向かう大通りは、現実世界そのものだ。
人混みのゴチャゴチャした流れ。渋滞や路駐をし、クラクションを鳴らす車。うっすらと空気にブレンドされた排気ガス。
しかしこのフィールドは『ゲーム』なのだ。そのことが私を混乱させた。吐き気を感じる。
ユイはきょとんとした顔で私を見ながらついて来る。私はユイがしたことがない不愉快な顔をしているのだろう。ユイだって年をとったら私のような顔ができるようになる。
現実世界には無いものが、ぱらぱらと存在した。
[ダーク・マスター食品][ダーク・マスター交通]といった看板。お菓子屋の店頭にはためく[ダーク・マスター饅頭]の幟。
横断歩道のたもとでは、牧師らしき人間が説教をしていた。
「父なるダークマスターは言われた。子らよ、卑賤と悪徳と姦淫に励みなさい」
ここはやはり現実世界ではない。
もっと「現実」的とも言えた。
道を歩く人々の中には、尻尾が生えている人間がいた。ヌメッとした黒い尻尾だった。背中から小さな翼が出ている人間もいた。腕や首から白い泡が吹き出している人間も居た。一旦それと気付くと、続々見えてくる。赤い目の人間。口から粘膜状の袋を膨らませ、歩く男。まったくふつうの格好だが、手だけが七本ある男性。モデルのような綺麗な顔なのに、体がただの黒い棒である女性。仰向けになり、手足をカニのように動かし移動する人間。手足がなくムカデのように歩く、体毛だらけの人間。そういう怪物が、風景に溶け込んでいた。魔物の町と化していた。醜い光景だった。
だが、魔物とは、戦うわけにはいかない。こちらは二人。多勢に無勢である。
魔物の方でも、私達を気に留める様子は無かった。無理して戦う理由はなかった。私達は先に進んだ。




