表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/73

【第1面】 (3)

 しばらくして、ロボットのホームベース状の頭部が薄暗く点灯した。腹部の掲示板は、そこを指すように【↑】を点滅させている。

  

 20/20

 15

 99/99

 

 

 突如として頭部に数値が示された。ゲームでのカウンターになると言われたが、何の意味をもつ数値かは分からない。

 また、私の腕輪から薄紫色の光線が発せられた。ロボットの何処かと感応しているのだろうか。光線はキノコのように広がり、頭上を覆うプラネタリウム状の空間を形成した。

 ほぼ全部が真っ黒な半球だったが、ドット抜けのように、一部だけ明るい箇所があった。それをよく見ると、2D的な城のグラフィックであった。

 城に重なるように、濃いピンク色の点滅があった。

 もしかするとこの表示は王宮の前に立っている私を表すのではないだろうか。

 すると、頭上の黒い半球は、ゲーム世界を表現するマップなのかもしれない。たぶんゲーム内の既知の場所がグラフィック表示されるのだろう。

「邪魔だな」と思うとマップは消え、また見たいと思うと出現した。

 この『SC』は、プレイヤー自身がインターフェイスとなる性質のゲームなのか。だとすれば、自分のココロとカラダのままゲーム世界に入った感覚は、正常なのかもしれない。

 私は、もと大学講堂だった王宮へと歩を進めた。

 鎧兜を着けた門番が二人居たが、私を通してくれた。

 門番の存在感は奇妙だった。通り過ぎる時、姿がグニャリと歪む感じだ。空間や距離感がおかしい。

 城の内部も全体的にそうだった。絵ほど薄っぺらくないが、実物ほど濃厚でなく安定感もない。中途半端な存在感の構造物。歩くだけで気持ちが悪くなった。この場所は一体、何なのだろう?

 やがて私は王の間に到着した。

 王が玉座に座っていた。

 王衣ジュストコルを羽織り、王冠を戴いた若い姿。

「勇者よ、面を上げい」

 なんと、王の顔は空蝉ヒジリだった。

 実物とは違い、やはりホログラムのような存在であったけれど、ヒジリの容姿は衝撃的に綺麗だった。データ量としては多くはなかったが、とても整っていた。現実の存在の持つ不純物が削ぎ落とされた感じだ。ヒジリに不純物なんてあったのかと思うが、どうやらあったのだ。いま私の前にある、批評のしどころがない姿を見て、それが判明した。

 おそらく、ゲームでのみ存在可能となる、理想的な姿なのだ。

 ある確信が私に芽生えた。

 ゲーム世界ここには私の「断片」が存在する。

 私は、自分のココロとカラダのままゲーム世界ここに入ったので、現実のように「断片」を経験している。

 つまり、理想を体感していると言わずして、何と言えるだろう!? 

『無限の可能性』と、ロボットは説明した。プレイヤーと感応し、舞台フィールドを構成する仕組みのゲームなのか? 突飛な考えだが、間違っていないと思う。

 美しさに食われ輪郭が溶けてしまいそうなヒジリの姿。

 このレベルでのヒジリのイメージを作れるのは、世界じゅうでも私の他には居ない。

 私はひざまずいた。王の前ではそれが作法だからだ。膝をついた時、ガシャリと重い音がした。私の首から下は、甲冑に包まれていた。背中にはマントが提がっていた。笑みをこらえて、ヒジリに頭を垂れた。

 私は、予想通りの実体イメージに、ことごとく包まれていた。なんという開放感だろう。

 これは「冒険」がスタートする場面に対する、私のイメージなのだ。イメージの純度の高いものは、王のような「断片」となり、漠然としたものは兵士のような薄い存在の像となるようだ。しかし、世界全部が肌に吸い付いてくるような瑞々しい感覚は、とても悪くなかった。

「よくきた勇者よ。そなたが来るのを待っておったぞ。知っての通り、世界はダークマスターに脅かされておる。奴は世界を闇に変えようとしておるのじゃ。勇者ショウブよ、ダークマスターを倒してまいれ」

 ヒジリは尊厳ある声で命令した。その命令が下されるのは分かっていたし、命令されて私は満足した。

「わかりました」

 私は答えた。わかりましたも何も、ロボットによれば、ダークマスターを倒すのがゲームのストーリーだ。拒否する選択は無意味だ。

「そうか、やってくれるか! 期待しておるぞ」

 王は頷いた。

 まわりの家臣達から万雷の拍手が起きた。

「ところで、私の他にも、勇者は来たのでしょうか?」

 私は訊ねた。

 ゲームには他のプレイヤーも参加していると聞いた。私の他にも勇者は居るはずだ。

「そうか、やってくれるか! 期待しておるぞ」

 ……王は同じセリフを繰り返した。おそらく、プログラム外のの質問には答える回路がないのだろう。質問を続ければ無限に会話できが、仮にもヒジリの顔をもつ人物である。何度もプログラムをなぞらせるのは気が引ける。やめることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ