第3話
昼休み。
「晴翔ー飯食いに行こうぜ」
涼太を含めたいつものメンバーで屋上へ向かう。この学校は、吹奏楽部がたまに屋上で練習をするので、自由開放になっている。
「風きもちぃー」
春が終わりかけのこの時期、屋上は心地の良い風が吹いていた。
少し風が強いが、そこが良い。
コンビニで買ったパンを開ける。
「お前それだけ?」
手元を指さして、涼太が言った。
「ああ」
「マジ?少なくね?減量中?」
疑問が3連続で放たれた。
「いやこれで十分だろ」
俺が買ったやつは、『増量!』とデカデカ書かれたシールが貼ってある焼きそばパン。それと牛乳。男子高校生の基準はわからないが、普通だと思う。
他の友人を見てみると、デカい弁当を持ってきているやつがほとんどだった。メインの弁当箱の他にスープが入っているものも持ってきているらしい。
(確かに少ない……か?)
いつもは弁当なのだが、「水曜は自分で買って」と母に言われているので今日がその日だった。
朝は米を三杯食ったし、卵も肉も山ほど出た。筋トレを始めてから、母の朝飯だけ妙に本気だ。
「ほら、これやるよ」
「俺も」
友人たちが次々と弁当箱からおかずを差し出してくる。というか勝手にパンにねじ込まれた。あっという間にパンがパンパンになった。
(こんなに食えないんだけど……)
と思っていたが、意外と食べ進めるといけるもので、全て平らげた。
「やっぱ足りなかったんじゃねーか」
「違うわ。残すのもったいないだろ」
別にそこまで否定するほどのことでもないのに、俺はなぜか恥ずかしくなって、言い訳じみたことを言う。友人たちもわかっているのか、ニヤニヤしてくる。
「キモ」
「ひでぇ!」
ワーワーと言い合っているうちに昼休みが終わった。
「授業だるぅ」
「寝るなよ?」
「一発目国語だぜ?寝るだろ」
「真面目に聞け」
「晴翔はマッチョのくせにそういうところだけうるさいよな」
「マッチョ関係ない。あとマッチョじゃない」
まだ鍛えている最中だ。まあこれ以上に鍛えたら制服が着れなくなりそうなので、ほどほどにしているが。
「はいはい。そーですか」
涼太たちが、頭の上で腕を組みながら、屋上のドアへ向かう。俺は遅れてその後をついていく。
教室に戻ると、弁当とかパンとかの匂いが合わさって、独特の匂いがする。
教科書をロッカーから取り出して席に向かう。
席は一番後ろだ。本当はくじ引きで決まるのだが、固定になっている。
以前、前の席を引き当てた時に「黒板が見えない」と言われたからだ。
そして、なんと三谷が隣である。席替えは一ヶ月に一回やるので限定ではあるが。
頬が緩みそうになって、机に突っ伏す。
後ろの席、好きな人の隣。
落ち着け。俺。
「眠いの?」
「……まあ、うん」
違う。嬉しくて顔を隠しただけだ。
けれど、そんなこと言えるわけがない。
「でも六浦くん、授業ちゃんと聞いてるイメージある」
「
(見てたんだ……)
たったそれだけなのに、変に嬉しい。
ふと、涼太が意味ありげな顔をしながら、こっちを向いているのがわかった。
俺は手で「前向け」と合図を送る。
授業はまだ始まっていないが。
三谷が「ふふ」と笑った。何がおかしいのかと思っていたら「仲良いんだね」と言う。
「まあな。うるさいけど」
仲がいいと言われるのはなんだか照れ臭くて、俺は素っ気ない返事になった。




