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Wind Illusion Story ー世界は混沌に選ばれし勇者の再来を待ち望むー  作者: 雪杜 凛


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セディル家のお家騒動の顛末について4-6

 笑顔の裏で他人を手のひらでコロコロと転がすタイプそうで、はっきりいってショウもこういう人物は苦手かもしれない。

 リアがはっきりと言ってくれたら、全力で逃げるのに協力したのに。

 そう思っても、見つかってしまった今ではすべてが手遅れだ。

 ーーたぶん、ここがリアが苦手としている部分なんだろうな……

 感情がはっきりとしているリアには、本音を完璧に隠すような人は苦手なタイプだろう。常に、笑顔の裏でなにを考えているのか勘繰ってしまいそうだ。

 リアも人付き合いの中である程度本音と建前を使ったりはするだろうが、この人はたぶんすべての本音を隠して他人を転がす感じの人かもしれない。

 ーーこれは……確かに会いたくなかったかもしれない……

 ショウがそんなことを思っていると、そんな気持ちを見透かしているのか相手はこちらから一切視線を外さない。

 リアの婚約者を名乗る彼はにっこりと笑顔を浮かべているが、全然目が笑ってはいない。冷えついた雰囲気の瞳はまっすぐにショウへと向けられており、それを向けられれば背筋に寒いものが走るのを止めることができなかった。

 無言の睨み合いが続き、ふっと青年が笑ったような気がした。

 なぜ笑われたのかがわからないショウが戸惑って眉を寄せていると、青年は綺麗な所作で腰を折った。

「はじめまして。僕はリアの婚約者です。僕の婚約者と一緒に旅をしているあなたは誰ですか?」

 自分の婚約者が知らない男と旅をしていたら、それは不愉快に思っても当然かもしれない。先ほどから感じている張り詰めた空気は、ショウに対しての怒りなのだろうか、と思った。

 それだったら、先ほどからの冷めた視線に納得がいく。

 ショウだって、自分の恋人が知らない男と一緒にいる姿を見たら不愉快に思うだろう。なので、青年の怒りを黙って受け入れるしかない。

 ずっと固まってこちらに背を向けていたリアが大きく息を吐き、こちらを振り返る。じろり、と青年を睨みつけた。

「回りくどい言い方をするな。どうせ全部知っているくせに」

 その発言に、婚約者がリアに向き直った。

「君が僕を無視して通り過ぎようとするからだ。婚約者であるならば、挨拶くらいはして欲しいものだね」

「……」

 その通りだと思ったのか、リアが悔しそうな顔をして黙る。

 確かに、婚約者が住んでいる街に立ち寄ったのであれば、挨拶をするのは常識だろう。それをせずに通り過ぎようとしたリアは、責められても文句は言えない立場だ。

 それを見て、くすりと笑った青年は「まぁ、いいや」と言って、リアの頭をぽんぽんと叩く。

「リアを無事に捕まえることができたし、このまま屋敷へ行こうか。もう君たちの部屋も用意してあるし、料理長がリアが来るって聞いて腕によりをかけてディナーを作ってくれているらしいからね。来てくれなきゃ、食材がもったいないし、なによりも料理長ががっかりするかもよ?」

 その言葉に、リアがぐっと悔しそうな顔をした。

「……そう言われると、私が断れないとわかってるんだからたちが悪い」

「さぁ、それはどうかね」

 リアに対してウインクする青年は、どうやらリアの思考回路を分かりきっているようだ。確かに、リアに対して要求を通すのに、その作戦は有効だろう。

 料理長ががっかりする、と言えば、絶対にリアは断れない。その料理長を顔見知りであればなおさら。

 案の定、リアは苦虫を噛み潰したような顔をしている。相当悔しそうだ。

 青年は勝利を確信したのか、満面の笑みを浮かべる。この笑顔は本物だな、と思った。リアの滞在が決まって、心の底から嬉しいのだろう。

「さぁさぁ、おいでおいで。パティも久しぶりだね。元気にしてたかい?」

 ずっと黙って様子を見ていたパティに視線を向けた青年は、こちらとも顔見知りであるらしい。

 それもそうか、とショウは思った。この人は姉の婚約者にあたる人なのだから、顔を知っていて当然だろう。

「うん」

 声音を聞く限り、パティはこの青年への苦手意識はないようだ。

 元々、他人に対して大きく感情が動くタイプではないので、青年に対しての苦手意識はないのかもしれない。パティにとってはリアの存在が絶対で、それ以外はその他大勢だ。

「少し大きくなったようだね。前に会った時は、こんなに小さかったのに」

 こんなに、を親指と人差し指で表現した青年の太ももに、パティが軽く蹴りを入れる。

「ボク、そんなに小さくない」

 軽く、といっても結構大きな音がしたのだが、青年は痛みを感じていないかのように、にこにこと笑っている。

 普段のパティの馬鹿力を知っている分、今のはかなり手加減したのがわかる。けれど、それでも通常の人間よりも威力はすごかったはず。それを受け止めて平然としているこの青年に対して、ショウは本当に気味悪いものを感じてしまう。

 思わずリアに対して同情するような視線を向けると、彼女はそれに気づいてショウを睨みつけた。

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