第5章 第20話 四面楚歌
〇主水
2019年 4月4日(木) 12:03
おかしい。交通安全教室が終わり、教室に帰ってきたのに、芽依、水菜、十六夜、七海がいない。
七海グループでいないのならどっかでサボっているのだろうが、十六夜までいないとなると少し不可解だ。俺がいない間にそこまで仲良くなったのだろうか。
と思っていると、来た。芽依たち四人が教室に入ってきて……。
「ていっ」
「なんでっ!?」
芽依が突然俺の顔に平手打ちしてきた。
「ぇっ、えっ、なんでっ!?」
待って本当にわかんない。なんで急にビンタしてきたのなんでそんな無表情なの。
全く予想外の出来事に動揺を隠せないでいると、芽依は静かに一言。
「なんで怒ってると思う?」
出、出出出出出出たー! めんどくさいやつっ! 妹がいるからわかる。これ、めちゃくちゃ怒ってるやつだ!
いや、でもなんで!? 俺怒らせるようなことなにも……。
「この前水菜とキスしたから……?」
「ふんっ!」
「ぐぎゃっ」
今度は腹パンだった。しかも魂こもったやつだった。クソいてぇ。
「み、水菜、なんで怒ってんの……?」
このまま芽依と話をするのは無理だ。水菜に助けを求めると、
「名前呼ばないでくれる? 大矢くん」
大矢……くん……?
「ていうかあんまり話しかけてほしいんだよね~。きもいから」
ぇ……? 普段あんなにおーくんおーくんうるさい水菜が……ていうか水菜って呼べって言ってたのに……?
「ご、ごめ……」
「ごめんじゃないんだよね~ほんと。そういうとこが……はぁ」
「てかわたしまだ話してるんだけど!」
「ぐぇっ」
やばいやばい! 言葉と物理の暴力がえげつない! こうなったら次だ。
「い、十六夜さん……」
「うぇーい! ちっちゃなことなんか忘れてもっとたのしもうよーっ!」
だめだ。この子はだめだ。一番おかしくなってる。
「なな……いやなんでもない……」
元から怖い七海にさらに怒られたら立ち直れない。なんか死にたくなってくる。
「あ? 言いたいことあるなら言いなよ」
「いえ……その……」
これはどっちなんだ。怒ってるのか怒ってないのか普段から怒ってるのか。どれなんだ。
とにかく、おかしすぎる。
芽依が暴力を振るってきて、水菜が冷たくて、十六夜がうぇいうぇいして、七海が普通に怒っている。
色々。本当に変だ。考えられる可能性としては……。
(リル、天使って洗脳とかできるの?)
「洗脳、は! できません」
(くっ、違うのか)
「ううううっ!」
だとしたら本当になんだ? 本当の本当にわからない。純粋にみんなを怒らせてしまったのか……?
「みんな、ごめん……」
「なにがごめんなのっ!?」
「ほんときもいな~」
「うぇーいっ。クラブでパーリナイしよーっ!」
「だからちゃんと話せって」
四面楚歌とはまさにこのこと。もう、しんどすぎる……!




