4:事件解決……?
「もしかして……」
「どうしたんですか、お兄様」
「今日は広場でお祭り。毎年恒例で奇抜なアイディアの催し物をするよね。去年は大声大会。一昨年は早歩き大会。その前の年は早口大会……。そして今年は力自慢大会なんだ」
お兄様が何かを思い付いたようなので尋ねたら、お祭りの催し物について話し始めました。はぁ……それがなんでしょうか? いや、待って。これこそ、私が転生した理由では⁉︎ お兄様が何となく謎解きの探偵役みたいですもの! という事は、私は相方役を請け負うべきでは⁉︎
「それがなんでしょうかお兄様」
そう、コレよっ。
探偵の助手と言えば、謎を解こうとする探偵の話が全く見えて来ずに疑問を呈する。それに対して探偵は「こんな簡単なことも分からないのかね?」 とちょっと相方を見下しつつ溜め息をついて、相方が理解出来るように分かり易く話し出す。
聞き役とは、こういう存在なのよっ。
「うん。あくまでも仮説……例えばのお話なんだけどね、ユリカ」
あああ……お兄様、優しいお兄様だから仕方ないのかもしれないですが、そこは理解出来ない私をちょっと見下しながらも、ヤレヤレ仕方ない……とばかりに話してくれると探偵っぽくていいのですが!
私の探偵像ピッタリに演じてもらえないでしょうか……。いえ、優しいお兄様には無理ですね。ごめんなさい。続けて下さい。
「はい」
「今年のお祭りは、力自慢大会なんだ。どういった内容なのか詳しくは知らないけれど、例えば。その力自慢大会の方法が重たい物をどれだけ持てるか、という方法じゃなくて、どれだけ物を遠くへ飛ばせるか、という方法だったら……?」
それはあれですか。
前世で言う所のダンベル上げより砲丸投げとか槍投げとかに近いタイプのヤツですか。
それは力自慢になるんです? 寧ろ物を投げて飛距離を競い合う大会では……?
あー、でも、力自慢って言えなくも……ない?
えっ、いやいやいや。やっぱり何か違う気がするけども。
「例えばそうだったとして、それが……?」
取り敢えず不明なことは置いといて。私が続きを促すとお兄様がちょっと困ったように笑います。まだ分からない? って感じですか。
「それが例えばそれなりに大きい生肉を飛ばす方法だったら……?」
お兄様のその言葉に、私だけじゃなく、お父様もお母様も執事を含めたこの場に居る使用人さん達皆がポカンとした顔で
「まさか……」
と言葉を失いました。
いやでも、有り得なくない……?
前世、砲丸投げとか槍投げとかする人の中には、物凄く筋肉ムキムキの人が居て、その人達が投げる砲丸やら槍やら、結構な飛距離を出してた。ある程度の重さが無いと意外と飛ばないかもしれないけど、生肉の大きさは結構大きかったし、力のある人ならば可能性はある……?
広場は、富裕層の人達が暮らす平民街の中央で、右隣の家は我が家よりも広場に近い。目の前とは言わないけど前世の感覚なら数百メートルくらいの距離。
……可能性はある。
私はお父様とお母様の顔を見て、お父様が意を決したように執事に広場に行ってお祭りの催し物を確認して、お兄様の予想通りなら主催者に話をするよう命じてます。執事も直ぐに動いてました。
そしてこの結果については執事が夕食時に教えてくれました。
正にお兄様の予想……つまり、推理通りでした。
ヤダ、お兄様ってば賢いっ!
「お兄様ってばすごいです!」
「ユリカの鳥の話から、有り得ないかもしれないことだけど、そんなこともあるかもしれないって思っただけだよ」
私が興奮してお兄様を褒めたら、お兄様は照れたように笑いながらそんなことを仰いました。うーん。私の中の探偵像は、これくらいは推理とも言えない推測で、当たって当然。騒ぐ程のことでもない。って態度なんですけども……。
まぁ優しいお兄様にそんな態度は出来ませんよね。
まぁ何はともあれ、事件解決でめでたしめでたし。
お読み頂きまして、ありがとうございました。
これにて完結です。