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レティア姫は羞恥心よりもユース宰相への愛情が勝り、照れなんて吹き飛んでいる。
笑って欲しい、安心させたい、大切にしたくてならない。彼女の胸の中はそういう気持ちで満ちている。
「ユース様から何も受け取らなかったなんて、そんなことは絶対に、絶対にありません。信じられなかったのではなくて、きっと勇気がなかっただけです……」
(ヤバイ。マリーの気持ちの代弁なんてされたらヤバイ。泣く姿なんて見せたくない。いつかは話そうと思っていたが、このタイミングは諸刃の剣だった!)
夫の無反応を悲痛と捉えたレティア姫はますます腕に力を入れた。そのせいで、ユース宰相の足から力が抜けそうになる。
「レティア、ありがとう。今日も好きだった。愛してる。名残惜しいけど本当に仕事が山積みで……」
(胸、やはり予想より大きい気がするというか、そんなに押し付けるな。いや、押し付けてくれ。もっとどうぞ。どうぞどうぞ)
「ユース様、そんなに山積みなら何か手伝います」
嫌々、まだ離れたくないというようにレティア姫は更にユース宰相に密着した。
「格好良くスマートに!」という理性と「別に良くない?」という本能がユース宰相の中でグルグルとせめぎ合う。
この時、ガチャリと扉が開いた。
「ユース、ルイが話があると……」
急かされて慌てていたのでノックもせずに入室しようとしたフィラント王子が目の前の光景に固まる。
両鼻の穴から微かに鼻血を出し、口を半開きにして歪ませ頬を染めているユース宰相の姿にギョッとしたからだ。
(ユースのこんな顔初めて見たが、気持ち悪い……)
瞬間、ユース宰相の顔が真っ白になった。表情も戦慄したというようにひきつる。
(うげっ、フィラント! この顔、私はどんな表情をしていた! いや助かった! ナイスタイミング! いや、しかし最悪なところを見られた……)
(鼻血が垂れそうだが指摘するのは悪いよな……)
「ひっ、ひゃぁ! フィラントお兄様! そ、その、何も、何もしていません!」
ユース宰相とフィラント王子の気まずい空気をレティア姫の悲鳴が断ち切る。
「チャンス!」とユース宰相は固まっていた足をサッと動かして前へと進んだ。
部屋を出て、即座に扉を閉め、フィラント王子の手首を掴むと向かい側の客間へと駆け込む。
「助かったフィラント! 死ぬ! レティアに殺されるところだった! この私が清楚可憐な乙女の色仕掛けで鼻血を出すとか、それを見られて幻滅されるとか死にたい!」
ユース宰相は小声で叫びながら、フィラント王子に抱きつき、彼のシャツで鼻血を拭った。
「お、おい。ハンカチを使えよ」
「フィラント助かった。しかしさっきの顔は忘れろ。酷い顔だっただろう? 無理無理無理! 色々無理! レティアとの結婚式典とかまだ無理!」
スリスリ、スリスリとフィラント王子の胸に頬を寄せると、ユース宰相は彼の足に縋り付いた。頭を抱えるように項垂れる。
「心臓を吐きそう。うえっ。気持ち悪い」
「は、吐くな! 吐くなら風呂場かトイレにしてくれ」
「無理、吐きそう。耐えられない。心破裂する……」
そこへ「待てない」とルイ宰相が登場。彼は顔が赤くて気持ち悪いと言うユース宰相の様子を見てこう思った。
(酒好きらしいから酒の飲み過ぎか? ダメ男そうなユース王子からレティア様をお救いしなければ)
まったくもって、その通りのような、誤解といえば誤解である。
その頃何も知らないレティア姫は談話室の扉の隙間から廊下を覗き見し(なぜまだルイ様が現れるの⁈ ユース様に話って何⁈)とオロオロ。
最終的にお客様と遊びたくてならないクラウス王子が突撃してきて、1番懐かれているレティア姫(と現れたセルペンス)が子守をすることになり、ユース宰相はルイ宰相に拐われて「女性は褒めちぎるべき」とか「酒を好んで飲んでも飲まれるな」「レティア様の婚約者として相応しい男性になっていただきたい」などと延々と説教をされた。
次回、今回のレティア姫の心境の変化にて2人がイチャコラする話(ユース宰相憤死、ピンチ)
みたいな話を書き終わったら追加する予定です。




