カサブランカ01
少し曖昧な部分はありますがそこは許してくれると嬉しいです
全ての始まりは半年前。
会社を定時に出て、秘書課の同僚と帰っていたとき、
「あなたには悩みがあるようですねぇ」
横から声をかけられ、目線を向けると、小さなテーブルの上に水晶玉がのり、いかにも占い師のおばさんみたいな格好をした女性が私を見つめていた。
きょとんとした私とは裏腹に同僚である上原奈々は胡散臭そうに顔をしかめていた。
「あなたは今恋人か婚約者がいる、しかし彼の事を好きではあってもこのまま結婚はしたくはないという思っている」
ハッとして占い師のおばさんを見つめる。
促されるままに向かい合わせに座る私に不満そうにしていた奈々だが特に口には出さなかった。
「このまま結婚してしまえばすれ違いや溝が大きくなるでしょう、特別な役職に就いている彼だからこそあなたと満足に話をしていないのではありませんか?」
…その通りだった。
私の想いも疑問もきっと口に出せば簡単な事。
でも、彼からもきっと周りの人達もどうして今更、だと口々に言うかもしれない私の想い。
人は結婚すれば変わる。果たしてそうなのか?
このままにしておけばどこが悪いかなんてきっと本人が気づかなければ分からないし直せないと思ってしまう。
でも、彼は私の初恋の人。
好きな気持ちは変わらないのに…
「あなたにはいくつかの運命が重なっている。このままその彼と結婚するも良し。時間を置くのも良し。ただ一つ言えることは今のまま迷いがあれば上手くはいかない」
確かにその通りだと思ってしまった。
昔から私はこうと決めたら絶対に曲げない頑固さを持っていた。
「…運命が重なっているってその彼はこの子の運命の相手ではないの?」
「ああ、言葉を間違えてしまったわね、そうではないのよ。彼女の運命は複数にあるのよ。その分相手も沢山ある。まるで主人公のように選ぶことができる…」
考えこんでいる詩織を見つめ、奈々はぽつりと、
「…それはそれで大変ね…」
「それじゃ相談料は三千円ね!」
「はっ?金取るんですか⁈」
「当たり前よーこれでも商売ですもの!」
「いやいや!そっちが勝手にしたんでしょうが!」
言い争いをしている奈々と占い師のおばさんを尻目にさっきの言葉を思い返していた。
(運命かどうかはともかく、今のままでは駄目な事は事実だわ…なら私はどうしたらいいのかな?)
初恋であることも好きであることは事実。
でもそれはあくまで私の気持ち。彼の気持ちは?
やっぱり祖父同士の約束が私達を繋いでいる。
でもその祖父はもういない。両親は恋愛主義だから決められた結婚は望んではいない。
あくまで私の幸せを願っている。
なら、この結婚は強制ではなく自分達の意思で決められる。
そうなれば私達を繋ぐモノは何?
「愛か、はたまた初恋に囚われているのか…」
スッと財布から三千円を取り出しテーブルに置く。
「ありがとう、占い師さん。もう少し考えてみるよ」
奈々は言い足りなさそうにしていたが詩織に促されて帰ろうとする。
そこで占い師のおばさんが待ったをかける。
「これは餞別だよ」
差し出してきたのは紙に包んだ白い百合の花。
「これは百合の代表的な花カサブランカさ。あんたにぴったりの花だよ。そして、もう1人の子にはこれさ」
差し出してきた花を見て眉を顰める。
「何そのオレンジ色の花?」
「これも百合の花、オニユリという花さ」
奈々はますます眉を寄せて
「いらないよ、そんなの人にあげるような花じゃないでしょう?」
でも奈々はそのオニユリを受け取る。
「それをあなたにあげる理由はあなた自身が知っているでしょう?」
詩織はそんな奈々の様子に疑問をもちながらこれからのことをかんがえていた。
読んでくれてありがとうございます。




