表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/40

34 瓦解




 そしてローズマリーは紙束を腕に抱えて立ち上がった。


 ホワイトリー指導官も紙束を一つ持って、同時に、力いっぱい天井に向かって投げ出した。


 それからホワイトリー指導官がパチンと指を鳴らすと途端にキラリとした魔力の光がともった魔法の風が事務室中を吹き荒れる。


「っひいぃ!! 何ですの!!」

「うわっ」

「なんだこれ!」

「きゃぁ!」


 多種多様な悲鳴が上がりその後には、ひらひらと古めかしい書類が舞い落ちる。


 派手な光景にローズマリーは思わず笑った。


 ちょっとばかり、ホワイトリー指導官の魔法をお借りして軽やかに情報を届けるつもりが、あまりにも量が多かったせいでものすごいことになってしまった。


「なんだこれ、紙?」

「……申請?」

「あら、これって……」


 一人一人が風ではなく宙を舞った紙の方に注目し始める頃、ローズマリーは一枚手に取って進み出た。


「どれもこれも……ウェルズリー君、君の名前が……」


 ラルストン課長が周りに落ちた書類に目をやって言葉をつぶやいた。


 ローズマリーはウェルズリー指導官の隣に並び、今までの彼らに負けないように大きく息を吸って声を張った。


「そう、魔法使いの将来について話をするウェルズリー指導官ですが、当の本人は、魔法学園にて、長期にわたって魔力強化薬の使用やその他魔法具についても高頻度で利用していたようです!」

「……なんと……」

「見ての通り、すべてウェルズリー指導官、直筆の魔法薬使用の申請書ですわ。備品の使用についてきちんと書類を提出するのは当たり前、もちろん魔法学園でも同じ管理方法をとっています」


 ウェルズリー指導官の手にも一枚の使用申請書が握られている。


 心当たりがあるだろう。これらはすべて、魔法学園で保存されていた当時の書類だ。


 すでに必要保存期間は過ぎていたが、それらは処分の手間を惜しまれて学園に放置され、だんだん圧迫しているとクレイン先生の手伝いをしていたときに聞かされた。


 それならば、魔法具や魔法薬を嫌っているウェルズリー指導官の使用申請も一枚ぐらいはあってもおかしくない。


 そう考えて、探していたのだが、結果は見ての通り……彼女の言葉も主張も真っ赤な嘘だったのである。


 あのたくさんの書類の中から一枚見つけるだけではなくローズマリーの友人達はあるだけ全部送ってくれた。


 とても大変だっただろうに、胸が熱くなる思いだった。


「これだけの数を使用して、魔法学園を卒業し資格をもらっておきながら、現場で働く人間に対しては随分とまぁ、辛辣なことをなさっていたようで」

「……」

「嘘八百を並べ立て、ペラペラと自身の講釈をたれ、将来の魔法団のためなどとほらを吹き」

「…………」

「経費の削減という成果のために、自分の経験すら否定し、好き放題、魔法局の主張はこの数を見るかぎり正しかった」


 ウェルズリー指導官は紙を握りしめ、目を大きく見開き、薄く開いた唇から「ぁあ」と震える声で言った。


「そんな誰が見ても正しい現場の主張を独断でねじ曲げて、自身の成果を上げるために各局を絞り上げる、それが、この課の仕事ですか?」


 ラルストン課長の顔はだんだんと血の気が引いていく。


「各局の管理は正しく公平であるべき重要な仕事ではありませんの?」


 課の全体の問題として語りかけ、事務官たちに問いかける。


「誤った判断を見過ごし放置し、正しい意見を言う新人を大きな権力で丸め込む、それは正しいことかしら?」


 事務官たちは困惑していたが、それでもローズマリーに目線を返してくれる人がほとんどだ。


 きっと彼らは味方になってくれるそう思えた。


 そうすると、ウェルズリー指導官を放置しているこの職場に対する不信感は消え、最後に彼女に問いかけた。


「さて、真実が明らかになっても、まだ自分が正しいとおっしゃいますか? ウェルズリー指導官……それが本当に正しいことか、わたくしとこの場の全員が判断いたしましょう」


 ウェルズリー指導官はぐしゃりと紙を握りつぶす。


「……ぁ、あああ!!」


 それから頭をぐしゃぐしゃっとかきむしり、大きくかぶりを振る。


「ふ、ふざけんじゃないわよぉ!!! 小娘がぁあああ!!」


 獣のような叫び声をあげ、彼女はぶわりと魔力の光をまとう、ローズマリーは反射的に杖を構えた。


 ボカンと大きな火の玉がローズマリーに向かって放たれるが、杖を振って同じだけの炎の火球で相殺する。


 キラキラとした光をまとった炎が、飛び散り様々な場所から悲鳴が上がる。


「止めろ! 止めろ!」

「魔法を使って攻撃したぞ!!」

「逃げろ!!」

「兵士をよべ!!」


 片手間にセオドアからもらった水の魔法具を使って、飛び散った炎を消火しながらウェルズリー指導官の放つ魔法を捌いていく。


 魔法使いの資格を持っているとしても、もう随分と訓練もしていないお粗末な魔法だ。


 ローズマリーでも捌くのは簡単だった。


「あああっ!! 最悪!! こんなのっ、あり得ない!! ありえないでしょぉおお!!!」


 取り乱して背後から男性の事務官に取り押さえられても魔法を使って暴れ続け結局、兵士が到着し貴族用の枷をはめられるまで、彼女は抵抗し続けたのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
大量ドーピングして得た魔力と魔法を磨かずにいるとは…もったいない。 そして可燃物いっぱいの室内で火魔法…放火か?
ここでラルストン課長に重い責任による罰が無かったら、これまで潰されてきた 新人達が浮かばれないな・・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ