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ダージュ・オブ・ゲーヘント  作者: ラツィヲ


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第十二章 命と引き換えに 六話

 数日前。


 マチルダは、あるブローカーと待ち合わせをしてた。


 そのブローカーは、闇の住人でありながら、一般の世界で上手く立ち回り、仲介役にするなら、あいつを、と言われるほどの手腕の持ち主だった。


 ある時は、一人で麻薬と現金、五億ドル分の密売の取引を成立させ、更には町の市長が噂を嗅ぎ付け、アメリカとイギリスの税務官に賄賂を渡す際のパイプ役として、情報を一切、外に漏らさず、十万ドルで、イギリスにある名産の魚を安く大量に買い、自分が経営する料理の裏メニューとして提供していた。


 何をするにも抜け目がない敏腕のブローカー。


 その人物と、マチルダは、正午の二時、ビバリーヒルズに位置する高級住宅や商業エリアとは隔意された隠れスラムで待ち合わせしていた。


 裏と表が分かりやすく体現でもしているかのように、スラムを生き行く人たちは、侘しい服装をしている。


 屋根に穴が開いていたり、(ひび)や亀裂が入った舗装のされてない道路。


 そこで先に居たのはマチルダだった。


 マチルダはスラムとは似つかわしくない、赤いドレスの様な布地で纏わした、ラフでボトムに合わせたドレスライクな赤べスト。


 時計を見ながら待ち合わせの五分前に居た。


 「……待たせたな」


 はしゃいでボロボロのボールで遊んでいる子供たちに紛れて現れるかのようにマチルダの後ろから声をかける。


 「あら、有名なブローカーの割には、レディーを待たせるのね。もうちょっと取引相手に時間や場所の配慮をするべきじゃないのかしら? オセロさん?」


 嫌味を口にしながら、後ろを振り向いたマチルダ。


 ブローカーの男もスラムの町に似つかわしくない服装だった。


 オールバックな髪を後ろで結び、お人好しそうな人相。


 タキシードの生地をジャケット風にして着こなし、ズボンは白のスリムパンツ。


 ブローカーは偽名でオセロと言う通り名だった。


 白や黒を自在に操れる、と言う意味合いがあり名づけられた。


 「まあそう言うな。俺にも自己保身はかけておかなくてわな」 


 「ん?」


 まるで自分を守るために何か既に手を打ってるような物言い。


 それに反応したマチルダは警戒心を強め、周囲を確認する。


 「違う。そう言う意味じゃない。有名なブローカーとなると命に危険が及ぶものだ。だから事前に、ターゲットの情報だけでなく、待合場所に居る周囲の人間の行動、仕草、挙動、反応、その全てをインプットし、持ち味として生かさなければならない。つまり、俺の命を危機的状況に追い込むような人間を予め予知、排除する」


 「なるほどね。事前の下調べだけでなく、取引相手が周囲の人間とコンタクトし、共同で貴方を殺そうと言う算段とかを除外する。実にブローカーらしい合理的な対応だこと」


 オセロはブローカーらしい振る舞いと言うよりも、自慢と脅しを既に使い分けてるような印象があるマチルダ。


 マチルダは当たり障りない言葉で返す。


 「んで、マチルダさん。あんたが元殺し屋であり、ジョーン大統領とも取引相手。既に調べがついてる。おまけにあの狂人、ダージュ・バイソンとも何やらこそこそと会ってるな」


 ニヤリとした嫌な笑みで、いきなりマチルダの懐に潜り込もうとするオセロ。


 「私は貴方と世間話しに来たんじゃないわよ。取引だけに重点をおきなさい」


 「はいはい。まあ安心しろ。あんたに対しての依頼が直接的でない限り、介入する事は絶対ない。もしあるとすればあんたに教えとてやる」


 「どうせ、その時に、私の情報を開示しないための口止め料が欲しいだけでしょ?」


 二人とも牽制しながらもどこか余裕があった。


 確かな事が言えるのは、二人に油断は無い事。


 マチルダは既に弱みを握られているようではあるが、それは想定内。


 なぜなら、マチルダは危険を冒してでもある情報を、オセロから買おうとしていた。


 それは、ダージュについてだった。


 「まあいい。本題に入ろう。この資料だろ? あんたがほしがってるのは?」


 「念のための確認だけど、それには確かに書かれてるのね? ダージュの生い立ちの経由が?」


 オセロは懐から三枚の用紙を取り出し、これ見よがしにマチルダに裏を見せつける。


 マチルダは鋭い目をその紙に向ける。


 「ああ、約束する。これには世間だけでなく、あのジョーンすらもしらない秘密がある」


 「――なんですって」


 まさかの言葉に驚きを隠せないマチルダ。


 そこでさらに勝負に出るオセロ。


 「さあ取引だ。こいつを小切手、二億ドルで売ってやる」


 「――二億ドル⁉ その紙で?」


 「ああ、そうだ。言っとくがこれ以上ない破格だぞ。あんたとは闇の住人通し協力関係を築いていきたい。元殺し屋の協力があれば、俺も更に闇の奥深くに根を植え付ける事が出来る」


 オセロは笑みを絶やさず、まるでオークション会場のオークショニアのような立ち振る舞いで、マチルダを誘惑する。


 流石は有名なブローカーと言った所か、扇動や仕草がオールラウンドのそれ。


 マチルダは顎を摘まみ、俯き沈思黙考する。


 「……でも、用紙三枚に二億ドルだなんて」


 「そう言うと思った。だから少しだけ教えてやる。この真実は、アメリカだけじゃない、世界を震撼させ、支配できる程の事実だ。それがダージュ自身の秘密だ」


 「……ダージュの秘密……」


 この時のマチルダは世界がどうと言うよりも、ダージュについて気になっていた。


 元々はダージュを脅すための材料が欲しかっただけ。


 ダージュを支配し、ダージュ・オブ・ゲーヘントを有効活用するための。


 あそこまで凶変できる心の持ち主の真相が気になる。


 これは欲と言うよりも、興味本位に近い物だった。


 数分が経つ。


「……分かったわ。ただしこの場で買って読むまで貴方はここに居なさい。少しでも妙な真似をすれば殺すわよ?」


 「ああ、それで構わない。声を大にして言える。この紙には神すらも平伏するほどの真実が書かれているとな」


 殺意を込めて脅したはずのマチルダだったが、オセロは意にも返さず、それどころか、圧をかけ返してくる。


 鋭い目でオセロの目を見続けながら、マチルダは小切手を取り出し、ペンで書き、二億ドル分の小切手をくれてやる、とでも言わんばかりに強引に渡す。 


 「へへっ、まいど」


 オセロは小切手に二億ドル書かれている事を確認すると、ニヤニヤしながら三枚の用紙を渡す。


 ダージュの秘密とは? 一体……なにか。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

今回の投稿はここまでです。

次回からも是非ご一読ください。

また、評価ボタンなど押してくださると、更に励みになりますので、是非ともよろしくお願いします。

ではまた、お会いしましょう。

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