第十一章 ダージュ・オブ・ゲーヘント 二話
話は少し遡り、ダージュがアメリカの現大統領、ジョーン・グライと密会してた時だった。
「この前のグイリバナ国とギゼン国の件、よくやってくれた。しかし、良いのか? 君はまたもや市民から反感を買う事になる。少なくとも、ギゼン国は君を許さない。一国を敵に回すまでして、君になんのメリットがある?」
密会の場は、料亭だった。
荘厳な室内に、厳選されつくした品の数々。
香ばしい匂いと麗しい色で人の食欲をそそらせる料理を、挟んで、ダージュとジョーンは酒を交わしながら話し合っていた。
ジョーンは少し険しい表情で、当て障りない話から少し本題に入る。
「大した障害ではない。一国と言っても、所詮、金と業でかき集めた烏合の衆。そんな半端者の言動など、視界にすら入らない」
不敵な相手と見ていたダージュは、鼻で笑う。
そこでジョーンは、どうしたらダージュの神経をすり減らせるか、再び難題に迫られていた。
例の計画。
これを我が物にしたいと躍起になる感情を押し殺しながらだったが、こうなれば玉砕覚悟で話題をそちらに変えるのも手かと思い、決断する。
「そう言えば例の計画だが、順調か?」
声を抑えてダージュの顔に近付くジョーン。
しかし、ダージュは分かっていた。
ジョーンが何を企んでいた事を、か。
それを随分前、いや、確信していた心を読み切っているかの様に、再び鼻で笑うダージュ。
「ここには盗聴器も無ければ監視カメラもない。迂遠にではなく、ストレートに言ってみたらどうだ?」
ダージュの言葉に揺れ動かされたのか、一度、コップをテーブルに置き、音を立てず、ゆっくりと、出入り口の扉に近付き開け、周囲に人が貼っていない事を確認したジョーンは、扉を閉め、席に戻る。
「分かった。ここからは真っ向から言わせてもらう。……死者蘇生……ダージュ・オブ・ゲーヘント(ししゃそせい)についてだ」
険しい表情で身を乗り出すかのように、声を押し殺して覚悟を決めて口にするジョーン。
すると、ダージュの顔つきが変わり、ダージュもまた険しい表情になる。
「それについては実験結果を報告したはずだ。マウスの蘇生は成功した、と」
「マウスは分かっている。問題なのはそれを人間で蘇生させるかどうかだ」
ジョーンが居ても立っても居られない様子で喋り出す。
人間の浅はかさを体現した見たいなジョーンを見て呆れながら軽い溜息を出すダージュ。
そう、ジョーンは、ダージュ・オブ・ゲーヘントで蘇生を繰り返し、不老不死に近い存在になろうと、計画を立てていた。
もちろん、それはダージュにはお見通し。
だが、それを分かっていても、ダージュは、ジョーンに恩を売り続けるにも理由があった。
だが、それはあまりにも、純粋で歪んだ理由だった。
しかし、それでも人間の貪欲差には呆れるほかないダージュ。
分かっていながらもジョーンに手を貸すダージュの理由とは?
それを割り切りながらダージュは話す。
「そちらも順調だ。最近面白い逸材を見つけてな。そいつに人柱になってもらう予定でもある」
「確か、ダージュ・オブ・ゲーヘントは、蘇生させるために強者、つまり超人を生贄にし、複数人を蘇らせる、それでいいはずだな?」
「ああ。マウスの実験の時も、複数匹からカリキュラムをこなさせ、その中で一番、成果を出したマウスを生贄にし、死滅させる事で、一年以内に同種の生物を蘇生させる。肉体の年齢、人体の構造、皮膚年齢から様々な人体の操作も蘇らせる際、捜査可能だ」
「で、どうなんだ? それはいつ頃やる予定だ?」
夢物語を聞かされている狡猾な大人がワクワクする姿は、客観的に見てもおぞましい物だ。
それはダージュも自身から学んだことではあるが、ジョーンの場合、目から腐ってるように見えて、なんとも言えない表現が出てきそうな気がしてならなかった。
こいつと話すくらいなら、死体と抱き合ってた方がマシに思えるくらい。
しかし、不快ではない。
それは、ジョーンに自分のリソースを提供するダージュに取っては、何も不思議な事ではない。
むしろこれは致し方ない事。
ジョーンを好意? に持ち上げるのだからそれもそのはず。
なので、ダージュはこう返答した。
「あと、一カ月待って欲しい。成功した暁には、貴方を不老不死に近い状態にさせる。約束する」
「よしっ!」
ダージュの言葉に思わず、スポーツで試合している大ファンのチームが優勝したみたいに喜び、思わず立ち上がりガッツポーズを取るジョーン。
因みに、この会話は現在、アッシュたちが大量のマウスを目にした半月前の話し。
あと少しで、とんでもない悲劇がある事を、この時の、アッシュたちはまだ知らない。
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