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痛みを知るから優しくなれる  作者: 天野マア
3章 アンタレス、中編 
93/136

贖罪



「で、だから最近忙しそうなのですね」


 機嫌が悪い? というより不意に酔っ払ったクレアさんは机に顎を着け、目を細めたジト目でそう言った。

 彼女は口を尖らせ、どこか不貞腐れているようにも見える。

 元々自業自得だ。

 クレアさんに僕自身心配掛けまいと相談をしなかった。

 その溜まった鬱憤が吹き出したのだろう、それなら僕が受け止めるのが筋であろう。

 

 話は少し前に遡る。

 日が落ちる前に宿屋に帰ってきた僕は上着を自室のハンガーに掛け、気軽な格好で一階に降りた。

 今日はリーザさんとの約束があったからだ。

 昨日僕の元にやってきたリーザさんは明日面白い技術を見せてくれると笑みを浮かべながらも口角を数度ビクつかせた。

 これは彼女が何かいたずらをしようとしている時の癖であり、リーザさんが僕に背を向けた一瞬、バレないように溜息を吐いた。

 シリウスにリーザさんが居た時もそうだったが彼女は少々過激な態度を取る。

 シリウスに居た時の話だが、魔法理論の基礎をある程度学んだタイミングで昨日の昼時僕にスープぶっかけた男に向かって魔法は実践が一番とか言い出し仕返しをさせようとしたことがあった。

 勿論その当時の僕は彼女の言い分を気持ちよく仕返しをさせて貰った。

 ある意味そういう所でも色々な人に助けて貰ってたんだなと今更ながら気付く。


「モグ」

「ぐぐ」


 久しぶりに帰ってきた相棒にあるお願いをする。

 彼もそれがわかったようで、小さく両腕を上げ、声を潜めながら魔法を唱えた。

 リーザさんには恩義はある……だがそれはそれ、これはこれ。

 イタズラに突き合わされるのだ、仕返しの先出しこれくらいは許されるだろう。


「ふぎゃ」


 リーザさんの足元に軽い小石を精製、それに足を取られ彼女はそのまま顔面から地面に激突した。

 僕とモグは互いに顔を見合わせるがそのどちらも笑顔ではない。

 モグは珍しく半眼で僕を見る。

 その表情は見飽きたと言わんばかりのものだった。

 そして今度は肩を落とすほどに深い溜息が出た。

 自分で命令しておきながらこんな顔をしている理由は一つだ。

 

「おっかしいな、最近はやらなかったんだっけど」


 そして彼女は立ち上がった後、膝についた砂などを払い、何も疑うことなく去っていった。

 リーザさんの弱点はよく転ぶことだ。

 前方不注意が原因なのか、足をそれほど上げないで歩いているのか原因は不明だが、一度全力で歩き方のフォームを矯正してみたが意味はなかった。

 過去の努力が無駄だった事を再認識するとどうにも気持ちが落ち込む。

 再度溜息を吐いた後足を引きずりながら自室に入る。

 その後シャツのボタンを外さず脱ぐと、投げ、蹴り飛ばし乱雑に散らかす。

 そのまま布団に入り不貞寝を敢行した。


 ここまではいいのだが問題は翌日だった。

 ミリアムさんに剣の手入れを教えつつ、孤児達と触れ合い日中を消化した。

 しかし夕方、日が落ちてもリーザさんは中々宿屋に来なかった。

 集合場所も決めておらず、また昨日彼女が一方的にやってきての約束であったので、約束を取り付けた場所である宿屋が集合場所だと思っていたのだが、他の場所の候補として頭に浮かぶのは。


「もしかしてギルドか?」


 腕を組みながら手を顎に当てながら1階のロビーで人の出入りを何も考えずに目で追っているとようやく見覚えのある人が現れた。


「ロストいるか?」


 赤髪の冒険者グラントさんが宿屋のドアを開け中に入ってきた。

 入った直後に僕に声を掛ける、普通なら僕の借りている部屋まで足を運ぶか、受付のおじさんに呼び出しか伝言を頼むのが一般的。

 彼の態度から1階に目当ての人物ががいることを知っている態度だ。

 恐らくだがリーザさんから約束の件をを聞いていたのだろう。

 集合場所は宿屋であっていたか、それに安堵を覚えつつだが何故グラントさんが僕を呼ぶ? その疑問を抱えながら椅子から立ち上がり彼のいる玄関口に向かって歩いていく。


「何グラントさん、リーザさんは?」

「リーザからは今日の約束はキャンセルといっていた、代わりに助けてくれと」


 僕は一瞬緊急か? と己が持っているギルドから貸し出されている通信機を目にやるがそんな反応は一切なかった。

 目を細めながら斜め上を向き、異常事態について頭からできるだけ要素を書き出している現状を予測する。

 そんな僕をグラントさんは見て「はは」と軽く笑い、眉を下げ表情が優しくなる。

 僕の両脇を正面から掴むと、そのまま体を持ち上げ回転、肩に担ぐと宿屋の外へと連行される。


「大丈夫だ、ギルド関係の話じゃない」

「そうなの?」

「ああ、ただリーザは急いでロストを連れてきて欲しいだろうがゆっくり行こう、俺も面倒くさそうな場だったから、ゆっくり行きたい」


 グラントさんは何もない空に顔を上げ、目になんの力も宿さぬ虚ろさを持って空を眺めている。

 目的地に向かう際も数回同じ道を行ったりきたりしており不穏な行動をしていたため、何が待っているのか僕も徐々に不安になりその場から逃げようとしたが。

 肩に担がれている関係上逃げられずそのまま目的地に連行されて行った。

 そしてついたのがアンタレスのギルド支部、そこに併設されている食堂だ。


「グラント遅い」


 目的地の前、ギルドの入口でリーザさんは陣取っていた。

 グラントさんはたっぷりと時間を掛け遠回りをしてからここに来たのだ。

 そして彼女は当然のようにグラントさんの行動に感づいていた。

 当リーザさんの怒りは中々収まらず何度か地団駄を踏む。

 そして僕に鋭く、まるで魔物を対峙した時のような圧を感じる目でギルドに併設されている食堂を勢いよく指差す。


「後はよろしく、行くわよグラント」

「ああ……ロスト頑張れよ」


 リーザさんは先程と違う足取りの軽さでグラントさんを連れその場を離れる。

 ギルドを出る寸前、リーザさんは両手を振りながらステップをしているように見えた。

 リーザさんは結構根に持つタイプだ、それなのにあの開放されただけで機嫌が良くなるあの様子。

 それほど面倒くさそうな事件なのか? 僕は料理屋に危機感薄く近づく。


「あれ、ロストだ久しぶり〜〜」


 そこには顔を赤くし酔っ払ったクレアさんがいた。



「ちょっと、待ってて下さい」

「ダメ〜〜」


 リーザさんとグラントさんの表情を思い出す。

 僕が来てからも少し不機嫌そうに地団駄を踏んでいたリーザさんだったが、ギルドの外に出る際はステップをしながら機嫌良さそうに出ていった。

 ようやく開放されたとその顔に書いてあったくらいだ。

 その事を考えるとクレアさんのこの酔っ払った状態は何度か僕の知らぬ秘密裏に起こっていたと考えられる。

 これだけ酷い酔い方だ、多少噂になっていても不思議ではない。

 ならばと周りの冒険者に話を聞こうと少しだけこの場を離れるために立ち歩こうとするが僕は何者かに右手を掴まれ防がれる。

 視線を下げるとそこには顔を赤くし酔っ払ったクレアさんが僕の右手を掴んでいた。

 その際にクレアさんの右目が光る、予知を使ってでもこの場から僕を逃さないらしい。

 ロクでもない力の使い方をしているが、彼女の僕を見る目は先程のようなトロンとした意識の薄い瞳ではなく大きく目を見開きその中に僕をしっかりと捉えている。

 逃げては行けない気がしてそのまま対面に座るが彼女は今だ手を離さず僕が座った所まで確認してからようやく手を離した。


「で、だから最近は忙しそうなんですね」

 

 普通の酔っ払いは往々にして自分語りが多いものだがクレアさんはそれをしない、逆に彼女は僕の話を聞きたがった。

 今日何をしていたか? 闘技場の生活はどうたった? 孤児院はどうだったか? 話しを聞く内にクレアさんは何故か口が尖り始め、机に顔を押し付け始めていた。

 クレアさんは一度額を机に押し付け僕に見えないように顔を隠す。

 その態勢を10分くらいしてからだろうか。


「もう少し私と一緒にいて下さいよ」


 周りの雑談に簡単にかき消されてしまうほど小さな声で僕にそう言った後彼女は動かなくなった。

 僕は席を立ち彼女の隣に寄り軽く肩を揺らす。


「クレアさん? クレアさん?」


 2回声を掛けたその後クレアさんの口から穏やかな呼吸音が聞こえる。。

 眠ってしまった彼女を背負いギルドから出て宿屋に向かう。

 すっかり暗くなり、店の光が街を照らし始めたその時に。


「ロストと私は相棒なんですから、それに私が唯一甘えられるのはロストだけなんです」

「ごめんね、クレアさん」


 背中の呼吸音から寝言ではあるのだろうが、クレアさんが吐露した時確かに彼女は僕の背中に体を寄せ服を強く握っていた。

 

「そうか、そうだよね、アンタレスに来てから、そんな出会って間もないのにすぐ別行動しちゃったもんね」


 僕は歩く速度を遅め遠回りをしながら宿屋に向かう。

 本来あるべき彼女との時間を取り戻すようにクレアさんを背負いながらゆっくりと夜の街を歩き回った。



 翌朝クレアさんと食事を取るために1階で席を取り待っていた。

 隣の部屋ならば生活音で起きているかの判断くらいは付くためそれに合わせた。

 それから20分後にクレアさんが降りてきた。

 彼女を見て右手を上げ、手を振る。

 クレアさんもすぐにそれに気付いたのか、パンとスープを貰ってからこちらの席にきた。


「ありがとうございます、ふふ、一緒に朝食を食べるなんて珍しいね」

「ま、偶にはね、偶には」

「はい」


 クレアさんは笑顔を僕に向けて、その後すぐに朝食に目が向いた。

 僕は彼女の様子を伺いながら木のスプーンでスープを掬い食べていた。

 何の変哲もないパンを大事そうに一口ずつ千切って食べるクレアさんの普段通りの態度を見て昨日の事は覚えてないと確信し、僕の意識も朝食に向かう。


 パンとスープを食べ終えたが僕は正直物足りなかった。

 屋台で串焼きでも買うかとお腹を擦りながら考えているとクレアさんの口から、


「よかった、きっとこれは夢のおかげだね」

「クレアさん?」

「いえ、なんでもない」


 温かな朝食を食べ、穏やかな表情をしていた為か不意に漏れた一言に僕が反応すると、両手をを左右に振りながら何でもないと彼女は誤魔化す。

 しかし昨日の酔っ払った彼女を見るとどうにも僕が原因でああなったのかと思ってしまう。

 

「昨日クレアさん酔っ払って帰ってきましたよね」


 あくまで僕が連れ帰ったと言わず、少し遠回り気味に。

 クレアさんは眉を下げ、木のコップを手で弄りながら、少し困ったような顔で僕の問いに答えた。


「私アルコールに弱いみたいで、匂いだけで時々酔ってしまうんです」

「時々?」

「毎回って訳ではないのですが、ストレスが溜まるとそうなってしまうみたいで、最近心配事も多いですし」


 クレアさんは僕から一切目線を外さず、瞬きも控えながらそう言った。

 つまるところ。


「僕のせいですか?」

「はい、誰かさんが相談してくれないですし……目を離したらいつもズタボロになっているんで不安になるんですよね」


 あくまで僕の名前は出さずに目を細めながら言う、ただその時の表情は不満を言っているというよりは呆れている、そう感じた。

 ただ聞く僕も申し訳無さと逃げたい気持ちから右目は隅を眺めつつ、左目はクレアさんを見るという器用な事をしながら話を聞いていた。

 早く何かを言わなくれはそう思って出た言葉が。


「えっと、明日から一緒に朝食取りましょうか」

「そうしましょう、不安なので」


 僕が申し訳無さから固い笑顔でその提案をすると、彼女は嬉そうに頬を上げ真正面から僕をニコニコと見つめ続けていた。

 正直彼女の笑みが今の僕からしたら気まずかったのはここだけの話しだ。



 クレアさんとの朝食を終え僕らは別行動となる。

 といってもクレアさんはギルドへそして僕は教会に行く。

 そして教会に着くとその場で足が止まる。

 いつもと同じ癖だが今日はそれだけではない。


「気が重い」


 教会の外で耳を澄ませばどこかドタバタとした音が聞こえ教会内の生活感が強まっている。

 この教会は旧市街唯一の教会ということもあって結構大きいが普段はクラリスさんとターニャさん二人のみが住んでいる。

 そしてその二人は王都に行っており生活音は皆無の筈だ。

 教会が一度全焼してからは建て直した際に必要な道具や装飾品の用意のため他の場所からシスター、神父が来ていたが、それも一日のみ。

 現在この教会に人はいないはず、それなのに中から生活音がするその意味は。


「クラリス片付けがあるんですからだらけないで下さい」

「いいじゃん、私は疲れたよ」


 二人が王都から帰ってきたことを表す。

 ついに来るべき日が来てしまったか。

 気合を入れるために両手で頬を叩き鋭い音を響かせる。

 そして深く深呼吸をしてから教会の中に入っていった。


「すいません」

「はい、どうぞ自由にお入り下さい」


 いつも教会に来ているため初めてではない。ただいつもと違う緊張感を持って少し肩を固くし教会に足を踏み入れる。

 重い足取りを誤魔化そうと慎重に足を進めるが、かえって足音を立てない不審者のような歩き方になってしまう。

 それに教会の正面から入ったのだ、足音を消したとしても姿を隠せるはずわない。

 だから簡単に見つかってしまう。


「どうしたの? そんな固い歩き方で」

「うっわ」

「おっとっと、大丈夫?」


 突如現れたクラリスさんに声を掛けられ驚いた僕はそのまま態勢を崩し、彼女に寄りかかるように倒れてしまう。

 クラリスさんは僕の肩を掴み、倒れぬよう抑えてくれた。


「ありがとうございます」

「固くなりすぎだよ、全く眩しいな、ちょっと待っててターニャ呼んでくる」


 クラリスさんは僕がその場にしっかり立った事を確認すると、教会の奥にいるターニャさんを呼びに奥に歩いていく。

 心臓の音がうるさい、緊張するのもしょうがないだろう。

 この教会は全焼した、それは僕がエイナルとエレノアに負けたことが原因だ。

 やらかした事が大きければその分謝る時は気が重い。


「何ですかクラリス」

「いいから早く来て」

「はぁしょうがないですね」


 多少強引に連れて来られたのだろう、ターニャさんは右手に持った書類に目をやりながらクラリスさんに左手を引っ張られて現れた。

 そして僕の目の前にターニャさんを連れてくると足を止め手を離す。

 その変化に気付いてか一度ターニャさんが書類から目を切り顔を上げる。

 僕の存在に気付くと右手に持った書類を両手で抱きかかえ、胸元に抱えるが何も言わない。

 待っていてくれる彼女達に感謝したいが今の僕にそんな余裕はない。

 大きく息を吐き、そして


「すいませんでした」


 僕は頭をそして腰までしっかりと下げて謝罪をする。。

 頭を下げているからクラリスさんターニャさんの表情は伺えない。

 だからこそ怖い、返答が返ってくる僅か数秒のことなのだが唇が乾き唾を呑み込む。

 そして様子を伺うようにゆっくりと顔を上げると、僕からした意味がわからない光景が浮かんでいた。

 クラリスさんとターニャさん二人が頭を下げているのだから。


「私達こそすいませんでした。それとありがとうございます。孤児達を取り戻してくれて」

「あの、謝らないといけないのは僕の方です。孤児を奪われて、教会を焼かれてしまったんですから」


  僕は再び頭を下げようとするがそれを制したのはクラリスさんだった。

 彼女は僕に目線を合わために膝を曲げ、両手で包むように己の手を僕の手にに被せる。


「ありがとうございます」


 彼女は瞳から涙を零しながらそう言った。

 普段のダラシない表情ではない、どこか救われたように、どこまでも嬉しそうに。

 その表情は涙で濡れていながらも心から感情が押し上げられたような自然で柔らかな笑顔だった。

 何で彼女がそんな顔をしているかはわからない。

 でも僕は今の彼女以上の思いの強さで謝ることは出来そうになかった。

 その為僕は謝罪を受け入れるしかなかった。


「どういたしまして……ちょっと」


 クラリスさんは先程の涙をポケットから取り出したハンカチで拭うといつものおっとりとした彼女の表情に戻っていた。

 そして立ち上がると僕の後ろに回り込み背中から持ち上げられる。

 脇に挟む形で教会の外に連行されそうになる所をターニャさんに無言で助けを求めるが、彼女は彼女で手を振って僕らを見送っていた。


「頑張ったんだから、少しは休まないと、一緒にお昼寝しよ」

「僕これから孤児院に行くんだけど、それとなんで皆僕の事持ち上げるの?」

「140cm未満な自分を恨むんだね、手を引いて連れてくにしても手の位置が低すぎて掴みづらいんだよ」

「失礼な140はあるよ……多分」



 脇に挟まれ持ち上げられた僕には抵抗力はあってないような物だ。

 そしてクラリスさんに連れられ教会の外にある大きな木が作る日陰に連行された。

 日陰に寝転され、逃げられぬように腕を決められる。

 僕の表情はどちらかというと目を半分ほど開けた呆れ顔だが嫌なわけではない。

 彼女なりの善意を感じそれに甘える形で横になる。

 僕が寝転がった事を確認したクライスさんもは腕の拘束を解き安心したように目を瞑り、1分も経たないうちに眠りについてしまった。

 

 僕も心地よい陽気に瞼が落ちようとしたタイミングでギルドから貸し出された通信機が音を立てて鳴った。

 クラリスさんが強引に取らせようとした休息。

 それは過去の経験か? だが間違いなく僕の事を思ってのことだ。

 それを無駄にするようで気が引ける、だからせめて。


「ありがとうございます」


 感謝の言葉を残し起き上がると、宙を蹴り屋根まで飛び上がる。

 折り返し通信をしたが誰も出ない。

 呼び出しの意味での通信、出ることも折り返しも必要ない。

 ただギルドに来いと、緊急性の高い案件の可能性、悪い事ばかりが頭に浮かぶ。

 それを振り切るように足を動かし、急いで冒険者ギルドに向かった。

 

 ギルドが見える位置までついたがその先の光景は酷いものだった。

 普段閉められているギルドの入り口が開けられており、現在進行形でその玄関口から担架に乗せられた冒険者がギルドの中に入っていく。


「すいません、遅れました」

「いや、十分早い。すまないが包帯、消毒の準備をしてくれ。これから医者が来る。負傷者も多いから数を切らさないように注意をしてくれ」

「わかりました」


 その場にいた40歳ほどの冒険者に指示を貰い僕は倉庫に向かう。

 包帯と消毒液を使いやすいように個別に分けギルドのロビーに持っていき医者が来るのを待つ間周囲を見渡す。

 昨日までクレアさんが酔っていた料理店も、椅子と机を全て外に出し横になれるスペースを作っている。

 一面けが人だらけ、一日にして冒険者ギルドは変わってしまった。

 

 僕にとってアンタレスのギルドは特別だ。

 ここにいる期間は短い、でも初めて僕を好意的に受け入れてくれたギルド。

 例えそれが己で勝ち取った物だとしても僕にとっては特別なのだ。

 

 手から落ちたポトという水滴音で血を流すほど強く拳を握りしめていた事を自覚した。


拙い文ですが読んで頂きありがとうございました。


また読みに来てくだされば大変うれしいです。


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[気になる点] 話が飛んでる? なんでいきなりエレボスと戦うことになってるの? クレアたちもなんでいきなり負けた?
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