表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
痛みを知るから優しくなれる  作者: 天野マア
3章 アンタレス、中編 
92/136

あるべき日常

「そんな後生だから、エルヴィンさん」

「済まないなこれも仕事だ」


 エルヴィンさんは僕の持っている剣を入れておく筒を一切の淀みなく奪い去る。

 エルヴィンさんの持っている筒、それは僕が師匠から貰ったマジックバックだ。

 シリウスから持ち込んだ師匠の作品がたんまり入っている。

 そんなことはしないだろうが売れば一生遊んで暮らせる金額が入っている。

 いや正直に言おう、不安なのだ。

 戦場でいう兵士はナイフを精神安定剤にするように、僕にとってあの筒に入っている剣は日常を生きるうえでの精神安定剤。

 抵抗はしない、あの筒がどこに行くかはわかっている。

 ただ演劇のように大げさに両膝を地面に着け、右腕を伸ばし泣き叫ぶ。

 

 しかし刑の執行人は無情だ。

 訴えを聞いても一切の表情を変えず筒をアタッシュケースに詰めると駅に向けて歩いていった。

 

 エルヴィンさんの仕事は師匠との約束を破った僕へのペナルティとして師匠の作った作品を王都にいるある人物の元まで送り届けること。

 仮にでも王の所有物たる騎士を動かせる人物、それはテオ兄さんだ。

 アンタレスでの闘技場での話しを耳にしエルヴィンさんをこちらに寄越した。

 

 ただエルヴィンさん王宮鍛冶師からの指令がなければ当分はアンタレスに戻ってくる事はできなかった。

 そういう意味ではテオ兄さんは粋だ。

 ただそれとこれとは話が別だ。

 最後の抵抗として駅に入り切る前に強奪するしかない。

 すぐさま立ち上がりエルヴィンさんい向かって走り出そうとした時、何者かが羽交い締めにしてくる。

 この場にいる時点で答えは1つ、エルヴィンさん直属の部下であるスズカさん以外存在しない。

 ただ彼女は女性、僕自身肉体的にはまだまだ成長期とはいえ、引きずる事くらいは……残念ながら僕の非力さでは一歩足りとも動けはしない。

 そして目の前ではエルヴィンさんが駅に入っていき、切符を買わなければ入れない場所までいってしまう。


「離して、あれは僕のなの」

「ダメです、あれもお仕事です」


 再びガックリと地面に膝と手を着け顔を俯うつむけるそんな僕が今最も欲しい慰めるような声は聞こえていない。

 スズカさんはその頃駅に視線を向け難題をやり遂げたという清々しい笑顔を浮かべていた。

 正直蹴りでも入れてやろうかとも考えたが……まぁいいだろう。

 

 実際抵抗こそしたが9割程……気持ちの面でしか全力で取り戻そうとは思っていない。

 預かる人間の事はこの世で1番信用している人だから問題もない。

 直感だけならともかく剣から聞こえた声も言っていた今はまだ早いと。

 そしてエルヴィンさんが乗っているだろう列車がここアンタレスから王都に向かて走り出す。


「そんな」

「色々お世話になったのにごめんね」


 

 僕自身エルヴィンさんが乗ったであろう列車が駅を離れていくのを見て一時間ほどその場で立ち尽くし、ようやく諦めがついた。

 スズカさんは仕事に戻るらしく、隠れ家に戻る前に薬局で栄養剤を買いに行くと彼女も又肩を落とし、重い足取りで帰っていった。

 未だ例の地下施設の報告書が完成しておらず、スズカさんが机の上で放った寝言が。


「専門家じゃないからわからない」


 頑張れスズカさん、貴方ならきっと上の人を唸らせる文豪になれるよ。

 そんな事を僕は心の中で思っていた。



 さて僕のアンタレスでの冒険者活動を始めよう……だったはずが、未だに待機命令が解かれていない。

 この前の休暇はダンジョンアタックに参加するためのものだった。

 だが今回の休暇は本当に何もない。

 一応通信機を渡され緊急時には呼び出されるらしいが……この緊急時に呼び出される、この構図が休暇感をさらに強めている。

 そもそも僕は特殊ランク持ちの犯罪冒険者、休みなど存在しないはずなのだ。

 今だ待たせられるこの状況に、本当にアンタレス冒険者ギルドの信用が勝ち取れたのかと不安に思ってしまう。

 実績は示したつもりだ、歓迎もされた。

 ただ動かねば心は安心できない。


「馬鹿らし、休暇ならしっかりと休もうかな」


 太陽が生み出す光に眉を潜めながらそう呟いた。

 休める時に休む事もまた重要、だが宿屋に戻り2度寝をしようと言う気分にはならない。

 それならと子どもたちがいる仮設孤児院に向かおうとした。

 したのだが仮設孤児院には子供は一人も居ない、いや仮設孤児院が取り壊されようとしていた。

 とりあえず現場の人に話しを聞いてみると。

 

「前あった孤児院の立て直しが終わったので戻ってますよ」

「早」

 

 孤児院の残骸を撤去し再度立て直しを始め1週間と経っていない、耳を疑うレベルの建築の速さ。

 急いで旧市街の孤児院に向けて屋根の上を移動する。

 日が高く、歩いていっても余裕はある。

 それでも好奇心故に行きたかった


「本当にできてるってこっちもか」


 あまりの修繕の速さに感嘆ではなく溜息が出た、ついでに変な苦笑いも。

 目の前には前と全く同じ孤児院と教会が建て直されている。

 その目の前にあった当たり前、それを見て己の不甲斐なさから子供達を拐われた僕自身をようやく許せた気がした。

 体全体がジンと痺れ、先程の駅の演技とは違う涙が零れそうになるが腹部に感じた2つの衝撃がそれを引っ込めた。


「お兄ちゃん遊びに来たの?」

「うん、遊びに来たよ」

「……」


 レクトとフリードは僕が教会に来てた事に気づき飛び込んできた。

 二人の頭を撫でながらふと疑問に思った。


「よく来たってわかったね」

「レクトはお兄ちゃんが来たのを見逃さない為によく教会の見える場所で陣取るからね。それにお兄ちゃんは、パンを持っていない時はいつも教会に入る前に立ち止まるから」

「よ、よく見てるね」


 二人の頭を撫でる手が一瞬止めてしまい、何事かとレクトとフリードが顔を上げる。

 すぐさま頭を撫でるのを再開しその場を誤魔化すが、自分でも少し頬が引きつっているのを自覚する。


 そもそも僕は教会というものが苦手だ。

 その忌避感から教会に入る前に僅かな時間だがいつも立ち止まってしまう。

 僕がシリウスにいた時同年代の友人がレティシア以外いなかった理由もまたこれに関係している。

 そう僕はシリウスで忌み子と呼ばれていた。

 別に子供達が率先して僕をのけ者にしていたわけじゃない。

 その親、彼らがロスト・シルヴァフォックスは忌み子だから仲良くしてはいけないと子供に言い聞かせていたからだ。

 生憎僕には師匠やテオ兄さんがいたし、それに職人街の親方衆には可愛がられていたから孤独ではなかった。

 その結果僕の中では同年代を寄せ付けない理由を作った場所として教会というものが実は少々苦手だ。


「そうだ、レクトがお兄ちゃんに用事があるんだって」

「レクト、どうした?」


 レクトに視線を合わせるため少し膝を曲げる。

 彼の目と真っ直ぐに向き合い、準備ができるまで待つことにする。

 レクトは両手で服を強く握りしめ、数回深く息を吐いた後。


「お……にぃちゃん……ありがとう」


 消え入りそうな声でそう言った。

 僕はついつい嬉しくなりレクトの両脇に手を入れ、空高く持ち上げる。

 フリードは僕に抱きつき、飛び跳ねる。

 レクトは孤児院に来る前にいた場所のストレスが原因で声が出せなかった。

 彼の中で僕の存在が支えに慣れたならよかった、そしてこれほど嬉しい事もない。


「ありがとうレクト……嬉しいよそれに頑張ったね」

「言えたなレクト」

「うん……フリードもありがとう……」


 まだまだぎこちないが、今まで喋れなかったレクトが一歩を踏みしめ感謝を述べてくれた。

 景色が歪むのを必死に堪えながら僕の口角は深く広く上がりきった。

 ああ、最近涙脆いな。

 まだ歳じゃないはずなのに、そんな馬鹿な事を考えながらなんとか子供達の前で泣かずに耐えきった。



 レクトとフリードを連れ孤児院に向かおうとした時教会から人影が見えた。

 久しぶりにあった彼女。

 僕が投げかけた事だから責任を取るべきだと考えレクトとフリードと別れ教会に入った。


 教会に入ると椅子に座りながら顔を天井に向け、その上ハンカチを顔に乗せているミリアムさんがいた。


「お久しぶりです、ミリアムさん答えは出ましたか?」

「はいお久しぶりです……残念ながらさらに迷ってしまって」


 彼女が座っていた長椅子に僕も腰を下ろす。

 ミリアムさんはハンカチこそ顔から取り払たが今だ僕の方を見ずに天井を見上げている。


「事情と言っても、私個人の自己中心的な物なので正直怖いんですよね、呆れられてたりしないかと」

「世の中下らないお願いなんていっぱいあるから、きっと神様も聞くだけならそうとう寛容だと思うよ。もしよければ僕と契約を結ぶ? 私の願いを聞いても笑わないって」

「いえ、大丈夫です聞いて下さい」


 ミリアムさんは一呼吸おいてから天井への視線から正面へ向き直す。

 あくまで僕を見ず彼女は普段の彼女の声とは似ても似つかない酷く掠れた声で喋りだした。


「私勇者としては落ちこぼれなんです、聖剣の能力は引き出せないし攻撃よりも回復の方が得意です。そに生まれつき私の一族には」


 そう言ってミリアムさんは髪をかきあげ僕に顔を向ける。

 だが彼女は顔こそ僕に向けるが目を合せはしない。

 しかしそれも一瞬、目から迷いを消すと僕に目を合せるが何故かその時ミリアムさんの手は酷く震えていた。

 そのまま数秒目を合わせ続けるが何もない僕を見て彼女は不思議そうに顔を傾けた。


「あれ? 何ともないですか?」

「うん」

「え、えっと……。ともかく本来なら私の一族は強力な魅了魔法が生まれつき備わっているんです」


 ミリアムさんは立ち上がり1歩から2歩目とその場所をうろうろし始める。

 よほど魅了が効かなかった事が衝撃的だったのだろう。

 彼女を一旦落ち着かせるためにも口からデタラメを吹かす。


「多分だけど、僕は昔から綺麗所は目にして肥えているから。まぁそれ以上に」


 僕はミリアムさんから目を切り、座る時に膝に置いていた剣を穏やかに撫でる。


「武器以上に綺麗な物を僕は知らないから」

「そ、それが理由ですね」


 僕に指を向け原因を掴んだと目を見開きながら笑うミリアムさん。

 今日会った時からどこかしおらしい態度から本来彼女が持っているであろう、明るさが多少歪ながら戻ってきた。


「で、続き」


 パンと僕が場の切り替えの意図も含め手を叩く。

 ミリアムさんは僕の隣に再び座り今度は下を向きながら話し始めたが先程よりも不思議と話しやすそうだった。


「はい、私達一族は魅了の力を持っているせいでずっとアンタレス領主の監視下に置かれて生きてきました。監視下、違いますね幽閉されて生きてきました。そして成長すれば政治の道具として社交界に連れられ、私達はまさしく花だった、領主様を飾る花……でも領主様の事は恨んではいません。魅了持ちの一族を野放しにしていれば人を率いて反乱を行うは簡単にできる。平穏に人々が過ごすためには私達は生きてはいけない、そんななか生かして貰っているだけでありがたいんです。でも私は知ってしまったんです、世界の自由さを」


 ミリアムさんは依然顔を下に向けながら話を続けている。

 変わった所は瞼が鋭くなり、両手を膝の上で強く絡ませる。

 

 ミリアムさんが外で自由に生きていられるのは勇者だから。

 勇者は教会に所属する、例えアンタレスの領主であってもそれを覆す事はできない。

 そしてこの世界にはたった1度、どんな人々でも女神様に生きている事を祝福していただく日がある。

 それは10年に一回、グローリア教を国教と定めている国では必ずやらねばならない。

 その儀式の内容は女神の分身たる宝珠を使い、それを触った子供に対して宝珠が祝福を捧げる。

 あとは司祭からのありがたい言葉を延々と聞き続ける退屈な作業だが、そのときミリアムさんは宝珠から知らされたのだろう、勇者の一人であると。

 宝珠が勇者を見つけた時、眩い光を放つ。

 僕もかつて見たことがある、確かあの時はレティシアがそうだったか。

 僕はどうだったか……それが忌み子の意味だとだけ言っておこう。

 魔神も魔人も魔王も邪神だって女神の祝福が与えられたらしい、それなのに僕は……。

 やめよう、今はミリアムさんの話が先決だ。


「私は母に生まれてくる兄弟に世界の広さを見せたい」


 恐らく彼女が気にしていた自己中心的というのは、他人を含めない自分の家族の事しか考えていない考えに対してだろう。

 だが僕はそれを間違っているとは考えない。

 彼女の膝で組まれた手に左手を軽く乗せ。


「だから自己中心的か、でもいいじゃんその夢、素敵だよ」

「本当ですか!!」


 ミリアムさんは目を輝かせ、今までの掠れた声が嘘のように綺麗な声で僕の左手を握り上下に振る。

 腕を全力で使うほどの喜びように少々驚くが、初めて話したのだろう? 

 とにかくよかった、それにしても家族のためか、眩しくていい願いだと思う。

 

 あることが頭を過るが中々言い出せない。

 恥ずかしい内容ではない、ただ、その、あれほどボロクソに言っておきながら、今更それを言い出すのは少々恥ずかしかった。


「えっと、聖剣って……もしかし見れます?」

「はい、いいですけど」


 彼女は己の聖剣を取り出す為に、一度僕の手を離し長椅子の下から箱を取り出した。

 箱を膝に乗せ蓋を開けると、中には布に大事そうに巻かれた聖剣があった。

 ミリアムさんは織られた布を開き聖剣がついに姿を見せる。

 しかしその聖剣の姿は神々しさなど何一つない、傷だらけで神々しさの欠片もない。

 慈しむように聖剣をミリアムさんは撫でるが、次の言葉を現実逃避にも見えた。


「で、クラリスさんは協力してくれますか?」

「……難しいかな」


 ミリアムさんは表情を変えずにそういった。

 彼女の態度は答えはわかっている、そう述べているようだった。

 一番最初にミリアムさんが言った言葉、さらに迷ってしまった。

 クラリスさんの様子から考えて何度頼み込んでも無理だと、だが聖剣もまともに使えない自分はどうしたらいいか? ミリアムさんからしたら振り出しに戻ったようなものだ。

 だからこそ1度彼女を否定した。

 ミリアムさんもそれを望み、クラリスさんを仲間として連れて行く、それを諦め次に進もうとしている気がする。

 僕は腕を組み、少し大げさ気味に唸り声を上げながら呟く。


「そもそもクラリスさんは、疲れてしまった人だから難しいかなって」

「そうですよね」


 ミリアムさんは座り方を一度正し正面を向く。

 目は少し垂れ、綺麗な琥珀色の瞳がどこか揺れているような印象を受ける。

 一歩先には進んだ、だがその次は? 

 だが剣や武器のことなら僕が答えを持っている。


「ならさ、一つずつ整理しよう」

「整理?」

「そう、別にミリアムさんはクラリスさんの力に引かれたんですよね?」

「はい、一番は回復魔法が使えない暴の聖女となら互いに保管し合えると思って」

「暴の……別にクラリスさんである必要はそこまでないんだ」

「はい……多分ですけど、ダメですね。今考えたら私の事しか考えてないや」


 口を濁しミリアムさんは体を小さくしながらそう言った。

 

 ミリアムさんの剣の腕は悪くない。

 聖剣に選ばれているのならそのまま能力が使えるはず。

 それでも聖剣がまともに使えないのであればそれはもう聖剣側に問題があるわけだが……どうするか?

 先程の聖剣の状態からして特殊な手入れがが必要なのは事実、そしてその手入れの方法は僕は知っている。

 というか聖剣の中はともかく、外の作り方も知っている。

 だがこのまま間違った常識で剣を扱われるのも癪だし。


「今必要なのは聖剣の……剣との対話かな」

「剣との対話? いつも振ってますよ」

「いや、聖剣の手入れをしっかりしてる? そいつら他の剣より自我強いからね」

「……拭くくらいしか」

「正直でよろしい」


 でもそんな事して意味があるのか?

 右目のみで彼女は僕を捉え、鋭い息を吐く。

 人の言葉を鵜呑みにしないのは偉い、疑いの眼差しを持つのも正しい。

 だが君たちは大きな勘違いをし続けている。

 確かに聖剣は優れた自己修復能力を持つ剣なのだから手入れは必要ない、そう思い込んでいる人間はあまりに多すぎる。

 ま、これも剣の声が聞ければ疑念もろとも黙らせられる。


「風の聖剣ゼファー」


 その一言で彼女はぴくりと肩を震わせる。

 顔をこちらに勢いよく向け僕の話を聞く態度に熱がこもる。

 僕が言ったのはミリアムさんの聖剣の名前、当然僕はあの聖剣を始めて見たし名前も知らない。

 文字通り剣の声を聞いただけだ。

 

「でもそれを言っても信用してくれそうにないしね。例えばミリアムさんが最近過食気味でお腹を気にしているとか」

「どうして知っているんですか!!」


 ミリアムさんは顔を真っ赤にして僕の胸ぐらを掴み上下に振られる。

 これに関しては自業自得だ、殴られなかっただけでも幸運だろう、ただ苦しい。

 彼女の肩を数度叩き、敗北を告げると、はっとしたように僕の胸ぐらを掴む力が弱まる。

 それでも胸ぐらは以前掴まれているが。


「どうしてって剣に教えて貰ったんだよ」

「!!」

「聖剣に選ばれたのに聖剣が使えない、それは全く対話ができていない証拠、聞こえない? 今もミリアムさんに語りかけている剣の声が」


 ミリアムさんは僕の胸ぐらから手を離し、立ち上がる。

 聖剣を左手で掲げ純真な目で見つづける。

 そして聖剣に語りかけるように彼女は話し始める。


「剣をただ振り続けるだけじゃダメなんですね。私にも剣の声が聞こえるのでしょうか?」

「その聖剣の声だけなら聞こえると思うよ、その聖剣ミリアムさんの事大好きですしね」

「お願いです、私に剣との向き合い方を教えてください」

「いいよ、それも鍛冶師の義務だ」


 元々僕がクラリスさん側についた事が原因で悩ませていた所も僅かにだがある。 

 これくらいの責任を取るべきだ。

 

 剣の切れ味とかいらない属性魔法でエンチャントすればいいとか、魔力で切れ味上げるから魔力伝導率と耐久力が高い物をくれだとかふざけた風潮がおおい昨今の世情、珍しく真っ直ぐな剣士に会えて僕も嬉しいからサービスって所だ。

 本当の理由は聖剣の故障だろうけど……ま、こっそり直せばいいか。


「ではお願いします師匠」


 聖剣を布に巻き箱にしまった後、彼女は僕に頭を深く下げた。

 ミリアムさんの挨拶で罪悪感とはまた別の言葉が胸に刺さる。

 師匠? そう聞くと複雑だった自分と師匠の関係が脳裏に過る。

 目を細め、口を一の字にしながら。

 

「師匠はやめて」

「いいじゃないですか」


 僕の心底嫌そうな顔を見て師匠呼びを連呼するミリアムさんに僕のこめかみがピクつく。

 そちらがそのつもりならこちらも奥の手だ。


「いや〜〜魅了のできる勇者とか悪いこといっぱい出来そうで羨ましいな〜〜」


 カウンター気味の僕の反撃にミリアムさんは少し涙目になりながら、僕の胸ぐらを掴み今度は体が持ち上がる。

 足が浮き、事実上の首吊り状態。

 しかしミリアムさんは気付かない、ただ夢中で僕への抗議を続ける


「それだけは言うな〜〜」

「ギブギブ」


 宙に浮きながらも何度も肩を叩くが中々気付いては貰えなかった。


拙い文ですが読んで頂きありがとうございました。


また読みに来てくだされば大変うれしいです。


もしよければブックマークと評価の方をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ